Camp Gear Note Vol.79
2021.02.14
LEISURE

ネイティブアメリカンとともに150年以上の歴史を刻む「ペンドルトン」の魅力

ペンドルトン

「Camp Gear Note」とは……

突然ですが質問です。
さて次の特徴に当てはまるのは、なんというブランド?

①高品質なウールシャツが有名で、1960年代には西海岸サーフファッションの象徴になった。

②1970年代に入ると、カリスマスケーター的人気を誇ったジェイ・アダムスもクタクタになるまで着倒していた。

③1980年代には日本に上陸。その色鮮やかなブランケットは、いつかは手に入れたい憧れのキャンプギア的存在に。

勘の良い方は、もうお分かりだろう。

そう、正解はペンドルトン。

海やキャンプなど外遊びとの親和性が高いため、すっかりアウトドアブランドと思い込んでいる方も多いに違いない。しかし、その実態は生活用品やウェアなどウール製品を中心に扱う、西海岸発の歴史あるライフスタイルブランドである。

会社のスタートは、ウール製品を扱うメーカーだった

ペンドルトン
創業者のトーマスから数え、現在は6代目が社長を務める家族経営の企業である。

ペンドルトンの歴史は古く、その起源は今から150年以上前まで遡る。

創設者であり織物職人だった英国人トーマス・ケイが、現在も同社の拠点となっているオレゴン州に降り立ったのは1863年のこと。以来、主にウール製品を供給するメーカーとして、この地で工場を営むようになった。

ペンドルトンブランドが誕生したのは1909年。ケイの孫たちが中心となり、ネイティブアメリカンに向けて色鮮やかなパターンを施したブランケットを扱い出したのが始まりだ。

ペンドルトン
オレゴン州は羊の飼育とウールの生産に最適な条件を備えており、毛織物産業が盛んだった。

当時のウール製品はブロックデザインやプレードと呼ばれる織り方が主流で、複雑でカラフルなパターンを再現するのは難しかった。

しかし、ペンドルトンはより繊細なデザインを生地に織り込める最新技術、ジャガード織りを採用。高い耐久性と色鮮やかさ、そして細かいデザインを兼ね備えたウールブランケットを求めていたネイティブアメリカンに広く受け入れられた。

ブランド初期は、彼らが日々の生活や儀式で用いる大切な道具を手掛けるブランドとして、徐々に売り上げを伸ばしていった。

ペンドルトン
ペンドルトンが主催するロデオイベント「Round up」でのひとコマ。ペンドルトンで着飾った馬と人が街中を練り歩く晴れの舞台だ。
NEXT PAGE /

ネイティブアメリカンとの交流の歴史こそが、ペンドルトンの歴史でもある

ペンドルトン
1928年以降、ペンドルトンのアイコンとして使われてきたビジュアル、通称「フレンドリースコット」。

ペンドルトンといえば、なんと言っても独特のパターンデザインが印象的なブランドである。

この柄はネイティブアメリカンが伝統的に使ってきたパターンをベースに、川や山、土地をデザインしたもの。彼らの中に脈々と続く伝統や神話学がアイデアの起点となっている。

ネイティブアメリカンたちの嗜好するデザインや色使いへの理解を深めるため、創業当初はデザイナー自らがオレゴン北東部の部族とともに過ごしていたこともあったという。

ペンドルトン
森、川、動物、炎など、一つひとつのパターンの背景には、自然界のモチーフが隠されている。

こうして集められたアイデアは、伝統的な染色方法、紡績方法では再現できない鮮やかな配色や躍動的なデザインとして具現化された。深い理解を元に作られた高品質な生地は、当然ネイティブアメリカンたちに広く愛用された。

彼らの生活について書かれたある文献には、「子が生まれたときはペンドルトンのブランケットを贈り、結婚式では女性の身体にペンドルトンのショールを、男性にはローブを掛けて祈る」と記されている。

ちなみに現在は、創業当時から引き継がれるオリジナルの柄もあれば、新たにパターンアーティストと契約したり、オレゴンの風景がデザインソースになっているものまで、100種類以上のパターンが展開されている。

NEXT PAGE /

ファッションとして火がついたのは、戦後の女性向けモデルから

ペンドルトン
20世紀初頭は毛織物以外にスーツ生地なども生産していたそう。

ネイティブアメリカンへの製品供給と並行して、早くからファッショントレンドに着目していたことも、ペンドルトンならではの特徴と言えよう。

すでに1924年には、現在も流通しているような高品質なバージンウールを用いたカラフルなシャツを手掛けていたのだから驚きである。

ペンドルトン
戦後に女性の就業率が上昇する中、「エリート男性と結婚して郊外の住宅地で専業主婦になる」ことは理想の選択肢だった。

ペンドルトンにとっての大きな転機は、大戦後の1949年。レディースラインのひとつとしてリリースされた「49erジャケット」の大ヒットが、ペンドルトンの名を世間に大きく広げるきっかけとなった。

シンプルでカジアルなスタイリング。製品としての本質的に高いクオリティ。当時のアメリカで始まった郊外でのライフスタイルに憧れる女性の需要に、この製品が完全にマッチしたのである。

当時はオレゴン州にシャツだけで3つの工場を構え、ウールシャツをはじめとするペンドルトン製品は、文字通り飛ぶように売れたそうだ。

NEXT PAGE /

60年代はサーフファッションの象徴として海にも進出

ペンドルトン
爽やかにブルーのウールシャツを着こなすメンバーだが、じつはサーファーは1名だけだったらしい。

1960年代に入ると、アメリカの若者を中心にペンドルトンのシャツが一大ブームを巻き起こす。

その発端となったのは、皆さんご存知のTHE BEACH BOYS(以下、ビーチボーイズ)。1963年にリリースした「SURFER GIRL」のジャケットでは、当時のサーフファッションを象徴するスタイルとして、ペンドルトンのチェック柄のウールシャツをメンバー全員が身につけている。

ペンドルトン
件のシャツは「ボードシャツ」の名で現在も展開が続くロングセラー商品。

同年の国民的ヒット曲「WHITE LEVI’S」で、リッキー・ペイジは「ボーイフレンドは、いつも白いリーバイスとテニスシューズとサーフハットと大きなチェック柄のペンドルトンシャツ」と歌っており、いかにペンドルトンが流行っていたのかがよくわかる。

ちなみに、結成当初のビーチボーイズは異なるバンド名で活動していたことをご存知だろうか。

その名も「The PENDLETONS」。

のちにビーチボーイズとバンド名を変え、彼らはポップシーンを代表する存在へと成長していったのである。

NEXT PAGE /

安くはないが、一度手に入れてしまえば一生もの

ペンドルトン
ヘリノックスとのチェアなど、コラボレーションにも積極的。

日本での流通開始は、アメリカから上陸したキャンプブームもひと段落した1980年代も半ばになってから。

日本ではファッションブランドというよりも、ブランドの基盤であるブランケットやタオルなどの生活用品を中心に展開がスタートした。

ペンドルトン
ブランケットは全4サイズ展開。写真は一番大きい203×163cmサイズ。

そして近年は、バッグやマスクなどの小物から、ヨガマットや愛犬用品まで幅広いジャンルの製品を手掛けている。

小物類の展開も増えたが、やはりいちばん手に入れたいペンドルトン製品といえば大判サイズのブランケットだろう。

一見カラフルで幾何学的な模様に見えるが、不思議とキャンプサイトでもリビングでも場所を選ばず馴染む。きっと、自然がデザインのモチーフになっているからに違いない。

決して安い買いものではないが、一度手に入れてしまえば一生もの。なぜ150年以上もの長きに渡って愛され続けてきたのか、その理由が感じられるはずだ。

ペンドルトン

[問い合わせ]
エイアンドエフ
03-3209-7575
pendleton.aandf.co.jp

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真

# Camp Gear Note# キャンプ# ブランケット# ペンドルトン
更に読み込む
一覧を見る