2021.02.06
LEISURE

アパレルメーカー勤務の週末ランナー「売り上げアップの秘訣は“走ること”」

「Running Up-Date」とは……

「グッドオン」というカットソーブランドがある。世界随一の耐久性で知られる米国産のUSAコットンを妥協なしに縫製し、着こむほどに味わいが増してゆくタフなベーシックウェアで、その魅力はトレンドを軽々と超越している。

「良くも悪くも」トレンドが関係しない類のアイテムであるはずなのだが、ここ数年は人気がうなぎ上り。セールスは絶好調だという。その立役者のひとりが、入社以来20年以上グッドオンの担当一筋、業界では「ミスターグッドオン」と慕われている広沢 秦さんだ。

「実は、走ることが習慣になってから売れ始めたんですよね」。

えーと、どういうこと?

ラジオ体操発、お散歩経由・ランナー行き

ミスターグッドオンこと広沢さんは、週末だけランナーになる。

「いつも同じ3人で走るんですよ。みんな荒川の近くに住んでいるので、冬場であれば7時に、まず荒川大橋に集合。そして日の出を眺めながら土手沿いを走ります。

10kmを1時間ほどかける、本当にリラックスしたペースで。走り続けてはいますが、上達してはいないと思いますし、『パフォーマンスを上げていこうぜ』というのも特にないので、正直言ってランナーと呼んでいただいていいものなのか分からないんですけど」。

広沢秦

とはいえ、走ることを習慣化してから、かれこれ7年目になる。ここまで続けば立派で偉大な、いっぱしのランナーだろう。

「きっかけは娘の付き添いで行ったラジオ体操でした。朝に早起きして外に出て、ラジオ体操でエクササイズをしてみると、自分でも意外なほど体が軽くなって、その日がとてもいい1日になると気が付いたんです。そこで生活のリズムを見直して、早寝早起きにシフトすることにしました」。

住まいは埼玉県の川口市。前述の通り、荒川の土手が近い。

「早起きして何をしたかというと、まずは散歩ですね(笑)。だって、朝の土手ってめちゃくちゃ気持ちが良いんですよ。土手に上がれさえぎるものがない。

だから空が開けていて、その開放感は何とも言えません。そこからの朝日がまた凄くって、いまだに毎回感動モノです」。

広沢秦

ただ、歩いて移動するとそれなりに時間がかかる。周りを見渡すと走っている人が多かった。だから広沢さんも走りはじめた。単純なことなのだ。

「最初は2kmほどで、そこから3km、4kmと距離を伸ばして、今は10km走るのがルーティンになっています。単に朝が気持ち良いから続けられたんですよね」。

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日の出を浴びながらのランで、早起きは三文の徳を実感

冬は空気が澄んでおり、晴天率も高く、この時期の日の出はとびきり美しい。とはいえ、さえぎるものがないぶん激寒だ。

夏は夏で、蒸し風呂のように暑い。大げさに言えば走り出すにはちょっとした戦い、心のせめぎあいがあって、自分との対話がある。そこで大事にしているのが、ルーティンを守るということだ。

広沢秦

「走るのは基本的に週末だけです。家族がまだ寝ているうちに家を出て、河川敷のいつものコースをジョギングします。今ならスカイツリーや富士山まで見渡せるんですよ。

最後に川口神社にお参りして解散する、というのが定番です。日によってはそのまま日帰り入浴施設に直行することもありますけど」。

午前中のまだ早い時間に自宅へと戻り、もうひとつの趣味であるガーデニングに精を出したあとは、家族のために朝ご飯を作る。昼は仲良く外出して、夕方からビール片手に料理をして、9時には床につく。まさに早起きは三文の徳なのだ。

広沢秦

「だから『みんな走ればいいのに』って思いますよ。自分の場合は走るようになってから仕事のパフォーマンスがメキメキと上がりました。何が違うか、ですか? 一番変わったのは時間の使い方です。1日をどう有効に使うかを、しっかり考えるようになりました。

サラリーマンって家を出た瞬間から会社員としての時間になると思うのですが、走っている時間というのは完全に自分のためだけの時間です。この自分のためだけの時間を確保するには、仕事をこうしてああして……と、自然にメリハリをつけられるようになりました」。

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ランナー的思考を身に付けて仕事のクオリティもアップ

「ひとりで走るときは主に仕事のことを考えていますが、これがまた机で考えごとをするのとは大違いなんです。走っているときのほうが、視野が広がると言いますか、俯瞰した視点からの企画が思い浮かびます。

日の出からパワーをもらえるので、それがまた良い発想の源になっていて、前向きなアイデアが浮かびますよね。だから冗談抜きに、走り始めてからビジネスの数字も好調で、『10年以上関わってきたグッドオンもようやく売れてくれた!』と良いことづくめ(笑)」。

継続は力なり。「土日とも雨が降りそうなときは、金曜日の夜に途中下車して帰宅ランをすることもあります。走らないと何だか気持ち悪いですから」というから、広沢さんはやっぱり生粋のランナーだ。

広沢秦
[左]ランニングの合間のスマホでもこのレベルの写真が撮れる。この景色のためなら早起きはちっとも苦にならない。[右]車で20〜30分の距離にある彩湖まで出かけて、湖畔を周回ランすることも。走り終わったら机とイスを出して、外メシで朝ご飯を済ませるのがお決まり。
「土手って自転車で流している人も多いんですが、あれも気持ち良さそうですよね。体を動かすことは楽しいんですよ。だから『歳をとったら体が思うように動かなくなっちゃった』というのはナシにしたいですね。

そのためにも自分なりに走り続けて動ける体をキープし続けていたいです。走るようになってからが、人生でいちばん楽しい。こんな素敵なことが待っていたのかって。これから10年、20年とたってもまだまだ色んなことができるなと、前がパーッと開けた感じです」。

広沢秦

レースに出る、タイムを縮めるだけがランナーじゃない。

むしろ走ることのメリットはその外側にこそある。仕事でも結果を出し続ける広沢さんの言葉に耳を傾けると、まんまと騙されて(!?) 走ってみたくなるから、不思議だ。

RUNNER’S FILE 28
氏名:広沢 秦 
年齢:43歳(1977年生まれ)
仕事:アパレルメーカー 営業
走る頻度:土日どちらかの朝。約10kmを1時間ほど
記録:レースへの参加はなし

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# グッドオン# ランニング# 広沢秦
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