「Running Up-Date」とは……2020年は多くの人にとって大きな変化を余儀なくされた一年だった。
自社ブランドをはじめ、国内外で人気のカバン・皮革製品を扱う老舗メーカー「林五」のCMO(チーフマーケティングオフィサー)を務める宮林誠之さんは、2020年の2月、仕事はもちろん、プライベートでもちょっとした「見直し」を迫られていた。
「ふとしたきっかけで、妻から加入している保険関係を見直そうと言われまして。その保険商品はタバコを吸っていると不利になる内容のものだったんですよね。以前から、いつかは禁煙しなきゃなと思っていたので、『じゃあこれをきっかけにやめよう!』と決意するに至りました」。
ランナーたちならではの健康的な親密さがうらやましい!
自身の健康のために、おトクな保険のために、そして何より愛する家族のためにも禁煙を誓い、「子供にお願いして、加熱式タバコの機器を割ってもらいました」。
一般的に禁煙すると口寂しさから間食が増え、体重が増えてしまうケースがある。「タバコをやめると太る」は、厚生労働省も注意喚起している禁煙時の懸案事項だ。
「周りの友人からもその“禁煙あるある”を聞いていて、そこにいわゆる自粛期間のタイミングも重なり、走ることにしたんです。学生時代から野球をしていて、社会人になってからも出勤前に集まったりして続けていたんですけど、各々が結婚するなどして自然とその機会が少なくなっていて。ずばり、運動不足だったんですよね」。
もうひとつ大きかったのが、その前年に新規事業として浅草橋にある自社ビルのリノベーションを手掛けていたことだ。
インバウンドを見込んでホテルを開業し、隅田川が近いという場所柄、ランニングイベントの会場として使用されることが何度かあった。飲食のできるスペースがあって集いやすいことと、荷物預かりと着替え、シャワーが使用できる「ランニングステーション」としての機能を見込まれたのだ。
「僕もいくつかのイベントに実際に参加してみたのですが、そのときはまだ、すぐ息が上がってしまっていました。でも、ランニングってなんだか楽しそう、というのはすぐ気が付いたんですよね。走り終わったあと、ランナーたちがお酒を飲みながら共通の話題で盛り上がっている雰囲気も魅力的でした」。
コロナもひとつのきっかけだが、走るための環境は外堀から埋まっていたのだ。
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