Running Up-date Vol.48
2020.11.28
LEISURE

「結果にこだわらずに楽しめるのがランニング」サーファーランナーの気付き

郡山総平 

「Running Up-Date」とは……

鎌倉からひと山こえた場所にある逗子市は、鎌倉やその西側の湘南エリアと比べると、どこかとなくのんびりとした空気が漂っている。海にも山にも近く、マイペースでアウトドアスポーツを楽しむ人たちが多い。

そんな街の駅前で、ヘルシーかつ食べ応えのあるメニューで地元のランナーから愛されるデリがある。その名もエイドキッチン。マラソン大会の給水所にあたる「エイドステーション」が名前の由来だ。

トレイルランの下りは、まるでサーフィンのような疾走感!

エイドキッチンでオーナーシェフを務める郡山総平 さんは、自分の店にこんな名前をつけるくらいなので、もちろんランナーだ。

しかも、ウルトラマラソンやトレイルランを走ってしまうラン歴10年超のベテランで、休日になれば夫婦でいい波を求めて出かけるサーファーでもある。

郡山総平 

「走り始めたきっかけは、葉山の海のそばにあるアウトドアフィットネスクラブ『BEACH葉山』を見つけたこと。海をのぞむ芝生の上でヨガをしている写真が目にとまって、ビビッときちゃったんです。当時はまだ東京で会社員をしていたのですが、週末になるたび逗子・葉山界隈まで通っていました」。

BEACH葉山ではヨガなどのスタジオプログラムのほかに、マリンスポーツやマウンテンスポーツプログラムも提供していた。

「そのうちのひとつにトレイルランがあって『何だこれは』と。今でも覚えているのですが、ビギナ―向けのプログラムとして鎌倉のトレイルを10kmほど走ったんですね。それまでの人生の最長走行距離が、学校のマラソン大会で走った3kmだったのに。

ところがいざ走ってみたら、あれよあれよと走れてしまったんです。トレイルの下りの凹凸にあわせて走るのはサーフィンのような疾走感があって、目的地に辿り着いたときの達成感たるや。もちろんラン後の疲労は尋常じゃなかったんですけど、一発でトレイルランにハマりました」。

郡山総平 

トレイルランは舗装路を走るマラソンと違って、上り坂で歩くのはごく当たり前のことだし、ペースが速くなくても十二分に楽しめる。郡山さんも初めての鎌倉ランの1カ月後には、富士山の20kmランのプログラムに参加し、3カ月後には仲間と50kmのレースに挑戦するまでに。

「振り返ってみると、ずいぶんとムチャなことしたよなと感じますが、福島県の安達太良山で行われたアップダウンの激しいコースだったんですよね。もちろんコテンパにされました(笑)。でも、それでなおさら火がつきましたね」。

走力アップのためにマラソン的なトレーニングにも取り組むようになり、ますます走ることハマっていった。そしてある日、ランニングには180度振れ幅の違う2種類の楽しみ方があることに気づく。

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マジになっても、ユルくても楽しめる奥深さ

「ひとつは結果にこだわること。例えばフルマラソンで3時間30分切りを目指すなど、チームスポーツと違って分かりやすく客観的なモノサシの目標が立てられます。その目標に向かって切磋琢磨し、トレーニングを積み重ねていくという面白さがあります。

それともうひとつ、これはレースである程度結果を残せるようになってから自覚したのですが、何も考えずに心身をリセットするための手段にもなることです。仕事の疲れを取るために、少し早起きして時計もせず、自由気ままに走るといった向き合い方もできます。そのことに気がついたとき、ランニングは今後の人生においてライフスタイルのキーになるだろうな、と直感しました」。

郡山総平 

もうひとつの趣味であるサーフィンは、郡山さんにとってはどちらかというと後者の役目で、自然に身をゆだねてリラックスできるアクティビティだ。一方、ランニングでは結果や成長を追求するという楽しみ方もでき、そのときのダイナミズムは仕事など他方面にも波及効果があって、張り合いをもたらしてくれる。

「ランニングは何かしらの目標を持って取り組んでいる人が多いので、ランナー同士で同じ価値観を共有しやすいんですよね。ダイエットが目的でも、レースでタイムを狙うでも、共通言語で話がしやすい。サーフィンの場合は、あの日あのときの波が……となるので、そのへんがちょっと違うところでしょうか。

そんなランニングカルチャーや、ランナー同士のコミュニティが肌に合うんです。だからエイドキッチンでもお店を拠点としてランニング関係のイベントを開催したりしているんですよ。こういったつながりを通じて、今まで知らなかった人とも知り合えますし」。

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ランナーならではのコミュニティが心地よい

そもそもランニングをしていなかったら、東京で満員電車に揺られていたまま、飲食業を目指すこともなかったはずです、と郡山とさんは笑う。

「さっきも言いましたけど、走ってなかったら普通のサラリーマン職じゃない人と知り合う機会もごく限られていたでしょうし、自分のお店を持つなんてことにはならなかったと思います」。

郡山総平 

エイドキッチンは先日3周年を迎え、ランニングやヨガと食を絡めたイベントを朝・昼・晩と行ったばかり。人生が180度変わって、おまけに心身ともにヘルシーになれるなんて、画に描いたようなウマい話だ。いいことづくめのランニングだけど、どう向き合えば長く続けられるのだろうか。

「よき友人と出会うこと、でしょうか。ランナーって走っているときは基本的に孤独なんですけど、共有できることが多いんですよね。走って汗をかいた後のビールはどんなビールよりもウマい! とか。ランナー同士ならすぐ意気投合できる関係性が醍醐味だと思っているので、一緒に走ったり、あーだこーだ言い合える仲間はとても重要です。

まだまだ仕事が忙しくって起業前ほど走る時間が取れていませんが、毎週水曜日の夜にランニングチームの仲間と強度の高いトレーニングに取り組んでいます。友人がいて、一緒に何かを目指すことが楽しいから走れるんです」。

ランナーならではのコミュニティは、多くの先輩ランナーにとって走るモチベーションであり、むしろこのコミュニティ自体が走ることの魅力にもなる。仕事抜きの人間関係に出会いたかったら、そしてあなたが走ることに興味があるならば、エイドキッチンのようなコミュニティのハブになる場を探してみるといいのかも。

郡山総平 
JR逗子駅から徒歩数分の、惣菜テイクアウト&イートインのお店「エイドキッチン」。無添加にこだわり、完全手作りでおいしいものを提供している。走った後や海に入った後に寄れば、ヘルシーかつボリューミーな食事で空腹を満たすという贅沢が味わえるのだ。
RUNNER’S FILE 23
氏名:郡山総平 
年齢:43歳(1977年生まれ)
仕事:エイドキッチン オーナーシェフ/アスリートフードマイスター
走る頻度:週2回、1〜1.5時間
記録:フルマラソン3時間17分、100マイルレース完走など

「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

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礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# エイドキッチン# トレイルランニング# ランニング# 郡山総平
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