Running Up-date Vol.37
2020.09.05
LEISURE

商社勤務の100マイラーがコロナ禍で見つけたモチベーションアップ術

running up date

「Running Up-Date」とは……

UTMBというトレイルランニングレースを知っているだろうか。

ヨーロッパアルプス最高峰のモンブラン山塊を周遊して行われる世界最大の超・長距離トレイルランニングレースで、吹田 郁さんは2018年にこの大会を完走した猛者だ。

といってもプロのアスリートではなく、普段は総合商社に勤め、サステナビリティ推進室にてSDGs(エスディージーズ)と呼ばれる持続可能な開発目標やパリ協定など、グローバルな社会変化を念頭に置いた経営の企画に携わっている。競技志向やや強めの、一介の市民ランナーだ。

世界最高峰のウルトラトレイルを完走

「トレイルランニングの魅力は、普段は決して体験できない非現実的な世界を味わえるところ。第一に、走るフィールドからして壮大で非日常的な山道がコースです。ロード・オブ・ザ・リングのような世界を、実際に自分の足で駆け抜けることができます。

それだけでなく、UTMBでは170km、制限時間46時間という超長丁場を通じて体力やメンタル面においても浮き沈みを経験することになるんですよ。そういった経験を全部ひっくるめて、非日常感がスゴい」。

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のっけからパンチの効いた話だが、それまでとくにランニングの経験はなく、学生時代はテニスコートでひたすらボールを追いかけていたという。

それが6年ほど前、学生時代の友人が走っていたUTMBの写真を見て「ロード・オブ・ザ・リングのような世界を走れるなんて!」と、トレイルランニングにのめりこんだ。

「競技としてレースでより良い成績を狙う場はトレイルランニングですが、そのためのトレーニングの過程は一般的なロードランニングが中心になります。

球技は相手とやり合うスポーツですが、ランニングは対自分のスポーツ。走るという動作はシンプルなのですが、いざやってみると奥が深く、自分のことをよく知るきっかけになります。例えば数年前までは自覚のなかった食品アレルギーがあるのですが、レースで肉体を酷使したときにそのアレルギー反応が如実に出たことをきっかけに、意識できるようになりました」。

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UTMBの舞台であるフランス・シャモニーの街から望んだモンブラン(吹田 郁=撮影)。

当面の目標だったUTMBは2018年に完走を果たし、一時期バーンアウトのようになったが、2019年の後半から再び上を目指すための心身が復活。

長距離トレイルレースでより納得感を得られるリザルトを収めるため、まずは「未達成だったフルマラソンのサブ3を達成したい」と、先の冬場はいい感じでトレーニングを積めていたという。

「タラ・レバになりますけど、練習のタイムなどからサブスリーはまず堅いだろうと手ごたえを得ていました。でも、新型コロナウイルス感染症の影響で大会が軒並み中止になってしまって……」。

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ストラバのセグメント1位を目指して疾走!

サブスリーに向けての練習場所は、自宅からすぐアクセスできる上野恩賜公園だ。

「お気に入りのコースなのですが、自粛期間は花見シーズンと重なったこともあり、いわゆる密な状況でした。そこで考えたのが、ストラバ上に設定された上野公園周辺のローカル区間で1位を狙うことです」。

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数カ月前にこの連載でもご紹介したストラバは、世界中で高い人気を誇るランニングSNSサービスで、さまざまなランニングアプリと連携できるのがポイント。

好評を得ている機能のひとつに、どこかの誰かが任意で決めたランニングコースにおける区間記録をランキング形式で表示してくれるサービスがある。例えば誰かが皇居一周を区間として設定したとする。その区間を含む走行データのログ(記録)をアップロードすると、今まで皇居一周の区間を走った人の中で、自分が何番目のタイムだったかが表示されるのだ。

「当面はレースの予定がないため、まずはスピードを磨こうと考えました。実際にレースが開催される状況になったときに結果を出すため、身近なフィールドで実践できる最も有効なトレーニングといえば短い距離のスピードを磨くことだなと。東京国立博物館をぐるりと回る1.5kmのコースなど、短めの区間でランキング上位を狙ってチャレンジしました」。

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国際子ども図書館の前を駆け抜ける1.5kmのセグメントにて、9月頭現在、区間1位の記録を保持!

最近はお世話になっているアウトドアブランドのスタッフさんの厚意で、高校生のトレーニングに帯同させてもらっているという。

「その方が高校生のコーチングをしていらっしゃるので、週末に陸上競技場で行われる記録会に参加させていただいたりしています。先日の1000m走では高校生に交じってオッサンの僕ひとりだけが3分2秒と、3分を切れませんでした。

ちなみにフルマラソンのベストも3時間2分なんですよね。まずはこの1000m走の記録会での“サブスリー(3分切り)”を達成することが直近のモチベーションです」。

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多少キツくてもスカッと駆け抜けるのがレース代わりの刺激になる

「スピード練習はキツいけれど、レースがないぶん、いい刺激になっていると思います。始めたばかりのころはやると決めた本数をこなせなかったりしたのですが、徐々に達成できるようになってハマりました。走力がアップする実感もあって、週一くらいで実践しています」。

メニューは陸上トラックを一周する400mのインターバルや、ヤッソ800と呼ばれる800mインターバルが中心とのこと。

「仲間と一緒に走ることもありますが、それだけでなく、SNS上で『今日は400mインターバルをやる』と友人に宣言してしまうんです。そうするとイヤでもやることになります (笑)。同じ場所で一緒に走るのとは違うけれど、感覚としては仲間内みんなでやっているのに近いモチベーションが保てます」。

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昨今の社会情勢下ではワークスタイルにも変化があり、走る時間帯にも明確な変化があった。

「週末でも早朝や夜に走るようになりましたね。それまでは日中の都合に合わせていたのですが、テレワークの割合が増えて、週末も平日も同じような生活サイクルになっているんです。どんどん早起きになって、自然と毎朝走れるようになりました。

今では週5ペースでコンスタントに走れています。通勤ランをしないこともないけれど、ダラダラとジョグをするのはあまり好きじゃないんです」。

と、やはりアスリート気質をのぞかせる吹田さん。スパッと追い込む、適度な負荷と爽快感が約束されたランニングが日々の活力だ。でも、ここまでランニングにハマったのはチャレンジングなレースがあるからだけではない。

「トレイルランやランニングではさまざまな世代や職種の人と知り合えるところがいいですね。同じキツいことをしている者同士、意気投合するのも早いんですよ。海外で行われるレースに参加したことで、外国人の友人もたくさんできました。一応の競争相手はいるのですが、直接やり合うのではないこのスポーツだからこそ、ランナー同士の距離感はすぐ縮まるような気がします。そこも大きな魅力です」。

後編では自粛ムードのなかネットサーフィンで見つけたという、まだあまり知られていないランニングギアについて話を聞こう。

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RUNNER’S FILE 17
氏名:吹田 郁 
年齢:36歳(1984年生まれ)
仕事:商社勤務
走る頻度:週5日程度
記録:フルマラソン3時間2分(2018年、彩湖マラソン大会)

「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

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礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# UTMB# ストラバ# トレイルランニング# ランニング
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