2020.08.08
LEISURE

「サーフィンとランニングは似ている」フリーランスデザイナーが走り続けるワケ

running up date 
「Running Up-Date」とは……

「サーファーには走ることを薦めたいし、特にトレイルランニングとサーフィンは、そもそも親和性が高いと思っているんです」。そう語ってくれたのは、鎌倉生まれ鎌倉育ちの井口 創さん。

地元の先輩の影響で高校生の頃からサーフィンを始め、手取り足取り教わるうちにすっかり没頭。やがては「波があるときに自由に乗りにいける生活」を手に入れるためにデザイン関係の仕事を選択するまでに。

つまるところ、波乗りを日常生活における最優先順位に位置づける、生粋のサーファーだ。

作業の節目に走ることで、机の上も頭の中もスッキリ整う

若い頃はニュージーランドへ1年間のサーフトリップに出かけたり、バックパッカーとして世界を一周したこともある井口さん。サーフィンも好きだが、旅すること自体にも魅了された。

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「サーフィンを続けていくために、働く時間を自身で調整できる仕事に就きたいと考えました。ちょうどエディトリアルデザインに興味があったので、この道を突き詰めればいいのでは? と、東京にあるデザイン事務所の門を叩きました」。

10年ほど研鑽を積み、晴れて独立。いい波を求めて自由にサーフィンできる時間ができた一方、部屋にこもって作業する時間も増えることに。ま、当然といえば当然だ。

「毎日波があればそれに越したことはないのですが、そうもいかないので、何かほかの息抜きを探していました。同時期に東日本大震災を経験し、ふと思い立って数kmほど走ってみたんです。学生時代、陸上部に所属していたことも背中を押したのかもしれません。当時は長距離走はしていなかったんですけどね」。

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そして、いざ走ってみると……。

「すげー気持ちがいい! と、一気にのめり込みました。シンプルに体を動かす気持ち良さがありますし、頭がスッキリするのも良いですよね。これは仕事にも好影響で、モヤモヤ試行錯誤していたことが整うんです。机の前に張りついてずっと作業し続けていると、デザインの方向性も混迷してくるんですよ。

そこで一旦、小休止してランニングすると、走っているうちに考えが整理されるんですよね。それに気が付いてからは意図的にランニングを活用するようになりました。デザインが出来上がってからすぐ納品するのでなく、走ることで一度フレッシュな状態に戻して、俯瞰してから納品するんです。サーフィンでもいいのですが、そのときに波があるとは限らないので(笑)」。

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自粛期間中に唯一、一緒に走ることが許された相手は……

やがてマラソンだけでなくトレイルランニングもはじめ、トレイルランナーの憧れである100マイル(160km)レースも完走。

トレランだけでなくロードランも両方好きで、それぞれ別の魅力があり、どちらも長く続けていきたいのだそう。

「レースはレースで楽しかったけれど、とくにトレイルの長距離レースは走ったあとに残る体への負担が大きい。特に丸一日トレイルを走ると4、5日は体調が崩れるので、波乗りに影響が出てしまうんです。だから今は走りたいときに適度に走って、疲労は残さないと決めています」。

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新型コロナウイルス感染症による自粛期間もランニングをアップデートさせるちょっとしたきっかけとなった。

「長時間走ってしまうと、その直後は免疫力が落ちてしまうと考えたので、短い距離を定期的に走るようになりました。すると休日のドカ走りがをしなくなった反面、月間での走行距離は伸びるという。

今振り返ると、自粛期間中のネガティブなニュースから遠ざかるために走っていたところがあったのかもしれません。自粛期間中は誰かと一緒に走ることもはばかられていたと思うのですが、そのとき唯一、一緒に走れたのが家族、つまり子供です。長女が小学2年生で、下の子は4歳なので自転車に乗って、5kmほど一緒に走ったり。楽しかったですね」。

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サーフィンとランニングはやっぱり似ている?

レースも軒並み中止となり、現在のところランニングでこれといった大きな目標はないけれど、そのぶん楽しく気持ち良く走り続けていくためにはどうしたらいいのかと思いを巡らせている。

「僕は生涯、波乗りを続けたいし、コンディションの良い日にちゃんと乗れるよう常に整えておきたいから、その基礎体力をキープするためだけに走るとしても価値があります」。

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サーフィンの魅力はとにかく気持ちがいいところ。テイクオフするときだけでなく、波待ちする時間や、海上がりにも気持ち良さの余韻が続く。

「その点でもサーフィンとランニングって似ていると思うんですよね。とくにトレランでは、上りはツラくて下りが気持ちいい。サーフィンでもパドルアウトするまではキツいけど、波に乗っている瞬間は格別の気持ち良さ。相手は自然であり、そのときどきでシチュエーションも異なります。スムーズに山を下れたときの快感は、上手く波を乗りこなせたときの快感に似ているんです」。

気持ちいいことへの嗅覚が鋭敏なサーファーだからこそ、長距離を適度なペースで走ることの気持ち良さにも出会えた。そのうえ波がないときにも走ることはできる。サーフィンとランニング、この2つのアクティビティを用意していることがライフスタイルを支えている。

地面と一体になって気持ち良く走るため、身ひとつに近いシンプルなギア選びをしているという点もサーファーならではなのだが、それは後編でお伝えしよう。

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井口さんがランニングにのめり込むきっかけとなった一冊『ボーン・トゥ・ラン』[右]と、自身が装丁を手掛けた日本人トレイルランナーの書籍[左]。フリーのアートディレクターとしてアウトドアスポーツ系のカタログ等も数多く手掛けている。https://soiguchidesign.tumblr.com/
RUNNER’S FILE 15
氏名:井口 創 
年齢:41歳(1978年生まれ)
仕事:デザイナー/アートディレクター https://soiguchidesign.tumblr.com/
走る頻度:週3〜4日、8~15km程度
記録:トレイルラン100マイルレース完走

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# サーフィン# トレイルランニング# ランニング# 井口創
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