Camp Gear Note Vol.44
2020.05.24
LEISURE

アウトドア業界の下町ロケット。町工場発の「SOTO」の炎が世界に認められるワケ

soto

「Camp Gear Note」とは……

最近、過去の名作映画やドラマをまとめて見返している方も多いだろう。「まあ、こんな話はドラマの世界だけのことだよなあ」なんて思っていないだろうか。

実はアウトドア業界にも、ドラマのような話は山ほどある。『下町ロケット』よろしく、町工場からスタートして世界規模まで成長したブランドは少なくないのだ。

アウトドア用の燃焼器具や調理道具を扱う「SOTO」は、その代表格。キャンプでお世話になっている方も多いであろう彼らの製品、じつは今も昔も変わらず、愛知県の工業用地の一角で作られ続けていることはあまり知られていない。

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アウトドアとはまったく縁のない会社としてスタート

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30数年前、当時本社工場にて商品の配送に追われるスタッフ。

「SOTO」の母体である「新富士バーナー」の設立は、1978年まで遡る。

会社を立ち上げたのは、営業マンとして30年近くバーナー業界を飛び回っていた現会長の山本 始。初めは工業用バーナーの製造会社として、愛知県蒲郡市で産声を上げた。

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左は配管工事に使うガソリントーチランプ。草焼きバーナーを背負うカタログ用の写真はゴーストバスターズのよう。

設立当初は、配管工事用のガソリントーチランプや雑草処理に使う草焼灯油バーナー、道路舗装工事などで目にするプロパンバーナーが主力商品だった。

当時の主な顧客は一般層ではなく、工場や工事業者。つまり、そこに現在我々が手にしているようなアウトドア用の小型バーナーや調理道具は、影も形もなかった。

しかし、あるひとつの商品が会社の未来を大きく変えていくことになる。

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後ろに写る人の背中には「砥石」の文字。ゴリゴリの工業製品の展示会での1枚。
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口コミの力から、アウトドアブランド「SOTO」が生まれた

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欧米の「アウトドア」に対し、日本の「外」に合った製品作りを目指すことからブランド名が付けられた。

アウトドア製品を手掛けたのは、1990年に小型耐風バーナー「ポケトーチ」を開発したことに端を発している。

この製品は、そもそもハンダ付けや配線コードを束ねるチューブの加熱加工用に開発された。しかし、耐風性の高さを生かし、焚き火の火種や線香の着火に使うキャンパーがじわじわと増加。予想もしていなかったが、彼らの口コミにより、ポケトーチはキャンプ道具として認知を広めていった。

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100円ライターを燃料にする手のひらサイズのポケトーチに続き、ランタンやストーブなどを展開する「G’zシリーズ」もヒット。

思わぬ形でのポケトーチのヒットから2年。新富士バーナーは新ブランド「SOTO」を設立し、満を辞してアウトドア業界への参入を果たした。

自らの目指すべき方向性として意識したのは、欧米ブランドとの差別化と徹底した実用性の追求だった。MADE IN JAPANの強み、そして燃焼器具専門メーカーとして培った知識と技術を活かしたもの作りだ。

ロングセラー商品「レギュレーターST-310」を例にとると、SOTOの製品への取り組みが分かりやすいだろう。

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2008年の登場以来、現在も売れ続けるロングセラー「レギュレーターST-310」。

まず、燃料は日本中で手に入り、経済的なカセットガス(CB缶)を採用した。しかし、CB缶は外気温が低い環境ではボンベ内の圧力が低下し、火力が落ちやすい。

この弱点を克服するために、「レギュレーター」なる機構を組み込むことにした。これは、ボンベ内の圧力変化に左右されることなく、常に一定のガス量を出力できる調整圧機である。

しかし、従来のものでは大きなものになってしまう。アウトドアでの使用を考慮すると、堅牢性に加えて、コンパクト性も必要不可欠。そこでレギュレーターを小型化してバーナー本体へと組み込むための研究が繰り返された。

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工場がある場所は、海沿いの工業用地の一角。実際に足を運ぶと「え? ここで?」という意外な場所で製品が作られている。

このような積み重ねの結果、燃料が手に入りやすく、寒さに強い、しかも軽量かつコンパクトに収納できるストーブが生まれたのである。

同様に、着想から開発、製品化に至るまで、どの新製品も数年単位で根気強くトライ&エラーが繰り返されているというのだから頭が下がる。

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青い炎と日本で作ることへのこだわり

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美しい青い炎にこそ、バーナーブランドとしてのプライドが詰まっている。

SOTOは燃焼器具を扱うブランドとして、“炎の色”にも徹底的にこだわる。

炎といえば赤やオレンジ、を想像しがちだが、完全燃焼した高温の炎は美しい青い色になる。つまり、赤みがない青い炎こそが、高品質なバーナーの証なのだ。

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現在も、製品は豊川市内の自社工場で手作業で組み上げられている。

また、自社工場で製品を作ることにもこだわりをみせる。

ほとんどの部品は自社工場内で作られ、組み立ては1台1台を手作業で進められる。しかも抜き取りではなく、すべての製品の検査も丁寧に行っているのだ。

これは、1万台にひとつの不良品も絶対に出してはいけないという、SOTOの製品に対する妥協を許さない姿勢の現れなのだ。

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バーナーは完成品はもちろん、組み立て途中にも1台ずつガス漏れがないかなど、さまざまな検査を行ってから出荷される。
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エベレストからファミリーキャンプまで、良い道具は使う場所を選ばない

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エクスペディションなチャレンジを繰り返す、世界中の著名な登山家たちもユーザーのひとり。

徹底した品質管理の元で製造されるSOTO製品は、現在、世界中の冒険家や登山隊、クライマーたちにも愛用されている。彼らにとって、ストーブはまさに命綱。故障は即、命の危機に直結する。そのような環境下で選ばれ続けていることは、信頼度の高さの何よりの証だ。

フィールドでの口コミからSOTOの名は徐々に広がり、現在は約30カ国で販売されている。アメリカやヨーロッパで世界的な賞を多く受賞するまでになった。

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プロ専用の道具ではなく、万人向きな取り扱いやすさを備えることも良い道具の条件である。

SOTO製品の実力は、エクストリームな環境でのみ発揮されるわけではない。日常的なファミリーキャンプでも、エベレストのベースキャンプでも同じように活躍してくれる。

使うシーンやユーザーは選ばない。町工場で丁寧に作られる最高のバーナーは、どんなレベルの挑戦も完全燃焼させてくれるのである。

[問い合わせ]
新富士バーナー
0533-75-5000
www.shinfuji.co.jp

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「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真

# Camp Gear Note# SOTO# キャンプ# バーナー
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