Camp Gear Note Vol.33
2020.03.01
LEISURE

「GSI OUTDOORS」がキャンプにもたらす“美味しい”イノベーション

連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

GSI

アウトドアギアに限った話ではないが、世の中の道具に革新が起きるタイミングには、たいてい大きく2つの背景がある。

まずは、高性能な新素材が開発されること。同時に、道具自体の能力も劇的に高まる革新が起きる。もうひとつは、エジソンが電気を使った数々の機器を生み出したように、今まで誰も見たことのないような発明による革新だ。

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今回紹介する「GSI OUTDOORS(ジーエスアイ アウトドアーズ ※以下、GSI)」は、実はどちらの革新も追い求めていない我が道をゆくタイプのブランドである。

モノを作る会社ならば、常に画期的なイノベーションを追い求めるのが普通じゃないの? と思われるかもしれないが、一概にそうともいえないのがモノ作りの面白いところ。事実、彼らが手掛ける道具はどれをとっても実にユニークで、オリジナリティに溢れている。

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創業当時から現在まで、エナメル製品はGSIの主力商品である。

GSIは、カナダからカリフォルニア・サンディエゴへと移住した兄弟によって1985年にスタートした。創業当初は、イタリアからエスプレッソメーカー、メキシコからエナメル食器の輸入をしていた。エナメルは耐久性があり、錆びにくいため、アウトドアにぴったりの素材で、現在も同社の主力ラインのひとつとなっている。

しかし、アウトドア好きの創業者兄弟の探究心は、エナメル製品の販売だけでは満たされなかった。彼らは持ち前の遊び心と創造性を製品開発へと向け始め、徐々に革新的な製品を生み出していったのだ。

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ありそうでなかったギミックこそGSIらしさ

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アウトドアグルメに必要なすべてを、ひとつに集約した画期的なデザイン。

GSIらしさが詰まった代表作のひとつが、「バガブーシリーズ」。アウトドアでのクッキングに必要となる調理道具や食器類一式が、すべて鍋に収められる仕組みになっている。

入れ子式の収納法は、今でこそ多くのアウトドアブランドが当たり前のように採用している。しかし、この画期的なアイデアを初めて形にしたのは、GSIと言われるのだ。

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鍋の中にすべてがぴったり収まる姿は美しさすら感じる。

彼らが着眼したのは、他社が“できない”、あるいは“時間を費やすに値しない”と考えるディテールや仕組みに取り組むことだった。

各製品の細かい機能性については後編で触れるが、鍋のフタに湯切り用の穴が設けられていたり、収納袋自体がバケツにもなる防水性があったり。細かいところに、「なるほど、その手があったか」と思わされるギミックが盛り込まれている。

カラフルな食器類の色ひとつにも理由がある。従来、同じ色で食器は統一されがちだったが、異なる色を使えば、誰が使っているものかが一目瞭然。このように創業者や仲間が実際にフィールドで感じたアイデアから生まれるギアも多い。

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美味しい食事やコーヒーもアウトドアの一部なのだ

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テフロン加工はよく耳にするが、実は基準を満たしたサインが貼られているのはごく一部の製品だけ。

GSIが作り出す製品の根底には、アウトドアはアクティビティだけでなく、食事やコーヒーの時間も楽しんで欲しいという想いが込められている。

軽さや収納面だけを考えれば、数字上ではより優れた製品を作るブランドは存在する。しかし、彼らの土俵はそこではない。外でも美味しいご飯をしっかり作ったり、本格的なコーヒーを淹れるために必要な仕組みや加工、機能面の開発に並々ならぬ力を注いできたのである。

フライパンに施された加工ひとつとっても違いは歴然。アウトドアブランドのクッカー類で、デュポン社の定める基準を満たした証「Teflon®」のサインを付けられるのは、GSIだけだ。

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創業者がコーヒー好きなため、コーヒー関連のギアも充実している。
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こちらのドリッパーは、収納時にはガス缶の底の窪みに収まり、デッドスペースを活用できるアイデア商品。
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他社が手をつけないところにこそ、小さな革新が潜んでいる

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パッと見は、一般的なワイングラス。でも、じつは……。

もう少々、GSIらしい理念と遊び心が溢れた製品を紹介してみよう。

例えば、このグラス。一見、通常のワイングラスに見えるが、じつはポリエステル製なので落としても割れない。しかも、足を外して収納することもできてしまう。

食事の美味しさは、調理器具だけでなく、カトラリーによって左右されることはご存知の通り。キャンプでだって、ワインを飲むなら紙コップよりもグラスで飲んだ方が美味しいに決まっている。アイデア次第で、キャンプだからと食事や食器を妥協する必要はないのだ。

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普段は箸とスポーク(スプーン×フォーク)として使う。
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いざというときに、トランスフォーム!

さらに、このカトラリーもらしさの滲み出た製品だろう。

なんの変哲もない箸とスプーンなのだが、スプーンのグリップに箸を差し込むと細長いスプーンにトランスフォーム。フリーズドライ食品のパックやポットの奥から最後の美味しいひとかけらまですくい取れる。遊び心と実用性を兼ね備えたデザインだ。

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アウトアドアで美味しい食事を作るには、数字上の機能よりも大切なものがある。

アウトドア活動を大きく快適にしてくれる、世紀の大発明が生まれるのはもちろんウェルカム。希少な新素材を使った革新的な道具が生まれたら、それはそれは便利なことだろう。

でも、私たちがアウトドアをより快適に美味しく楽しむには、案外、ささやかな革新があれば十分なんじゃないだろうか。GSIの製品には、そんな小さなイノベーションが詰まっている。

[問い合わせ]
エイアンドエフ
03-3209-7575
https://gsioutdoors.jp

池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真

# Camp Gear Note# GSI# キャンプ# キャンプ飯
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