みんなの“欲しいモノ”を徹底特集! 「2020年、これ始めます」カタログ Vol.23
2020.02.12
LEISURE

キーマンは山下達郎!? 再ブーム到来のレコードは大人こそ楽しめる

音楽メディアの中心がCDからネット配信に変わりつつあるこの時代に、ローテクの極致たるレコードにまた注目が集まっている。それも、単なる懐古主義ではなく、新しいクールなトピックとして、というから面白い。

長年DJとして活躍している真柄尚武さんに聞いた、2020年、アナログレコードのススメ。

 

若年層でアナログ復権

真柄尚武さん(51歳)ヴィンテージウェアのバイヤーを経て、裏原全盛期にリアルマッドヘクティクの創設に携わる。
真柄尚武さん(51歳)ヴィンテージウェアのバイヤーを経て、裏原全盛期にリアルマッドヘクティクの創設に携わる。当時からDJとしても活動していて、レゲエのサウンドシステム、マスターピースサウンドの一員としても有名。現在は自身のブランド、M.V.P.のディレクションなど、多方面で活躍中。

──最近、「レコード人気、再燃」というような謳い文句が世に増えた気がするんですが、真柄さんにそういった実感はありますか?

真柄尚武さん(以下真柄) そうですね。アナログレコードをリアルタイムで経験していない、ネット配信に慣れた若い世代のミュージシャンがあえてアナログ盤をリリースしていたり、DJの現場でも意識的にアナログでプレイする人がまた目立つようになりましたね。

例えばこのワングラム(1〜3)というバンドはディスコレゲエのようなサウンドで世界的に注目されてきているんですが、ボーカルの女の子はまだ20代。だけど、積極的に7インチのレコードをリリースしていて。アナログに重きを置いているのが伝わってきますよね。

1_『Walking On Sunshine』、2_『Ooo La La La /Drama』、3_『CRAZY LOVE』ワングラム
1_『Walking On Sunshine』、2_『Ooo La La La /Drama』、3_『CRAZY LOVE』。すべてワングラムの7インチ。

キーワードは「山下達郎」

──なるほど。またレコードが注目されるようになったのには、何かきっかけがあったんですか?

真柄 理由はいろいろあると思うんですが、山下達郎さんの存在はひとつ、大きいと思います。彼は昔からレコード愛を公言していて、今の若い子で、センスのいい人たちがこぞって彼のラジオ番組を聴いてたりするんですよ。

日本だけじゃなく海外でも、タイラー・ザ・クリエイターがサンプリングしたりしてましたしね。例えばブックオフなんかに行って、山下達郎さんのレコードがあったら買っておいて損はしないと思います(笑)。『RIDE ON TIME』(4)みたいに当時から人気の曲は意外と見つかりやすいし、お手頃ですし。逆に、『Windy Lady』(6)なんかはかなり稀少で高騰しています。

4_『RIDE ON TIME』、5_『クリスマス・イブ』、6_『Windy Lady』、7_『踊ろよ、フィッシュ』、8_『LET'S DANCE BABY/BOMBER』すべて山下達郎
4_『RIDE ON TIME』、5_『クリスマス・イブ』、6_『Windy Lady』、7_『踊ろよ、フィッシュ』、8_『LET’S DANCE BABY/BOMBER』すべて山下達郎。

──人気曲のほうがリーズナブル?

真柄 人気曲は流通量が多いですからね。その点、『Windy Lady』の7インチはかなりレア。以前彼のライブで、「当時、(この曲を収録した)ファーストアルバムはまったく売れなくて不遇の時代だったから、国内外で評価されてるのはうれしいというか不思議な感じだ……」というようなことをご本人がおっしゃっていました。

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「シティポップ」リバイバル

──やっぱりレコード人気再燃の背景には、新しいジェネレーションの関心があったんですね。

真柄 そうだと思います。そのひとつにシティポップがまた盛り上がってることがあると思うんですが、一十三十一(ヒトミトイ)(9)は、その先駆けのひとりだと思います。あとは、王道のユーミン(10)。これは全部インストという珍しい1枚で、僕はレコード店で偶然見つけました。

──まさかシティポップがこの時代にお洒落なものとしてまた流行るとは、昔は思えませんでしたよね。

真柄 はい(笑)。お洒落という意味では、シティポップとはまた違うけれど、くるり(11)おかもとえみ(12)あたりはサブカルのアイコンですし、フェスなんかでも特に人気が高いですね。

9_『CITY DIVE』一十三十一、10_『松任谷由実(荒井由実)作品集/instrumental new music yumimatsutoya – yumi arai』CBS・ソニーグランドオーケストラ、11_『琥珀色の街、上海蟹の朝』くるり、12_『HIT NUMBER-EVISBEATSとPUNCH REMIX』おかもとえみ
9_『CITY DIVE』一十三十一、10_『松任谷由実(荒井由実)作品集/instrumental new music yumimatsutoya – yumi arai』CBS・ソニーグランドオーケストラ、11_『琥珀色の街、上海蟹の朝』くるり、12_『HIT NUMBER-EVISBEATSとPUNCH REMIX』おかもとえみ

オーシャンズ読者世代にはどストレートな感じだと思うんですが、配信やCDと違ってアナログは市場での流通量が多くはありません。だからこそ、見つけたときの喜びは一入でしょう。

「レコードストアデイ」を狙え!

──とはいえ、情報を常に追っていない人たちにとってはどこから手をつけてどこで探したらいいのか、ちょっと迷ってしまいそうですね。

真柄 であれば、レコードストアデイ(RSD)がオススメですよ。毎年春と秋、年に2回開催されるレコードの世界的なイベントなんですが、それに合わせてリリースするアーティストや作品がすごく多くて、限定版なんかも出ます。僕が今日持ってきた中だと、テイ・トウワさんの『ON AIR EP』(13)モンド・グロッソの『ラビリンス』(14)は、それぞれRSDに合わせて発売されていて、『ラビリンス』は2017年のRSDの限定品でした。

13_『ON AIR EP』テイ・トウワ、14_『ラビリンス』モンド・グロッソ
13_『ON AIR EP』テイ・トウワ、14_『ラビリンス』モンド・グロッソ [右下]レコードストアデイの対象商品は、このステッカーが目印。この日に、RSDに参加しているレコードショップを覗けば、掘り出し物に出会える可能性が高い。

──普段、真柄さんはどこでレコードを探すことが多いんですか?

真柄 頻度でいえば、一番はディスクユニオンかもしれません。新宿か渋谷、あと御茶ノ水ですね。情報量が安定して多くて、店舗ごとに品揃えが違うんです。あとは地方にも、行ったら覗くお店がありますね。大阪だったら難波のナカレコ2号店っていう和モノに強いお店。そこで“ゆうせん盤”やサンプル盤が偶然見つかることもあります。

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出会ったらラッキー!?「サンプル盤」と「ブート盤」

──ゆうせん盤、サンプル盤とは?

真柄 昔、ラジオで掛けたりするためにレコード会社がメディアに渡していた非売品のレコードです。単に貴重なだけではなくて、この『星のラブレター』(16)みたいに一般にはレコード化されていない曲があったりするので面白いんですよ。変わったところだとB.B.クイーンズの『おどるポンポコリン』(18)なんかも持ってます。あんまり掛ける機会はないんですけど(笑)。

15_『遠い街角/夏をあきらめて』桑田佳祐/サザンオールスターズ、16_『星のラブレター/ROMANCING STORY』THE BOOM/杉真理、17_『デイドリームビリーバー』ザ・タイマーズ、18_『おどるポンポコリン』B.B.クイーンズ
15_『遠い街角/夏をあきらめて』桑田佳祐/サザンオールスターズ、16_『星のラブレター/ROMANCING STORY』THE BOOM/杉真理、17_『デイドリームビリーバー』ザ・タイマーズ、18_『おどるポンポコリン』B.B.クイーンズ

──これは珍しいですね! 出回ってる理由も気になりますが。

真柄 (笑)。そういう珍しさでいえば、ブート盤が近いかもしれないですね。ブートレグとは言え、中身は面白いものが多くて、ヒップホップの人気曲とその元ネタを一緒の盤に収めてたり、このマーク・ロンソンの『Oor Wee』なんかはそもそもレコードカットされていないはずです。勝手にブランドロゴを使ったものとか、もうやりたい放題ですよね(笑)。

[左]真柄さん所有のブート盤。無許可で製作されたものながら、妙にコンセプチュアルなものも多い。 [右]真柄さんのレコードバッグは7インチ用のザ・ノース・フェイス!

「サンプリング」という視点

真柄 元ネタという意味では、ヒップホップの曲をサンプリングソースと一緒に揃えたりするのも楽しいと思いますよ。例えば、この佐東由梨の『ロンリー・ガール』(19)。日本のラップが好きな人にはお馴染みだと思いますが、ECDとKダブシャインの『ECDのロンリーガール』(20)の元ネタですね。ECDさんは知る人ぞ知る、歌謡曲の“掘り師”なんですよね。

あとは、ヒップホップの名曲、ビギーの『JUICY』(21)のネタがこの『ジューシー・フルーツ』(22)です。日本版だと、曲のイメージとあんまり関係のないジャケットになってたりするのが面白いですよね(笑)。この『スプリング・レイン』(23)は電気グルーヴの『Shangri-La』の元ネタになってます。

19_『ロンリー・ガール』佐東由梨、20_『ECDのロンリーガール feat.K DUB SHINE』ECD、21_『JUICY』ノトーリアス・B.I.G.、22_『ジューシー・フルーツ』エムトゥーメイ、23_『スプリング・レイン』シルベッティ
19_『ロンリー・ガール』佐東由梨、20_『ECDのロンリーガール feat.K DUB SHINE』ECD、21_『JUICY』ノトーリアス・B.I.G.、22_『ジューシー・フルーツ』エムトゥーメイ、23_『スプリング・レイン』シルベッティ
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もちろん、私的フェイバリットも大切に

──そうしたルーツは、レコードで掘り下げると余計にしっくりきますね。

真柄 やっぱりディグすることがアナログレコードの醍醐味ではありますよね。個人的なお気に入りや、思い入れの強いものができるともっと楽しいですよ。この『日本解放最前線』(24)なんかは、あまり多くは語れないですが(笑)、匿名のクレジットで活動中のパンクのバンドなんです。僕はすごく好きで。スケーターでもあるアーティストのesowさんっていう方がジャケットを手掛けています。

あと、なかの綾(25)もすごくレコード映えするアーティスト。昭和歌謡をラテンアレンジしてたりするんですけど、すごく面白い。T字路s(26)も結構なムーブメントになってきている男女のブルースユニットで、サブカルというか癖になる感じで、個人的にも好きなんです。

24_『日本解放最前線』チャッカーズ、25_『ホテル』なかの綾、26_『Tの賛歌』T字路s
24_『日本解放最前線』チャッカーズ、25_『ホテル』なかの綾、26_『Tの賛歌』T字路s

──こうして見ると、いわゆるクラブプレイやDJ以外にもレコードの入り口はたくさんあるんですね。

真柄 そうです。生音とかジャズとか、音質を特に重んじるジャンルが好きな人たちは12インチにこだわったりもしますけど、最近はより扱いやすい7インチで再発されているものも多いので、探していくと楽しいですよ。

昔はみんな最初、「ベストヒットUSA」みたいな番組で、少しずつ曲を知っていったりしたじゃないですか? 今は情報源もあの頃よりずっと多いし、大人も重い腰を上げて、ぜひアナログレコードを“ディグ”してみてほしいです。

 

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テクニクス「SL-1200MK7」

テクニクス「SL-1200MK7」
9万円[メーカー希望小売価格]/パナソニック 0120-878-982

クラブやDJの現場でもトップクラスのシェアを誇る、ターンテーブルの名作シリーズの最新作。大音量でも安定感を失わない、高いハウリング耐性と、音質劣化の少なさが魅力的な1台。高音質設計なので普段のレコード再生にも十分満足できる1台だ。

 

高橋絵里奈=写真 今野 壘=編集・文

# DJ# レコード# 真柄尚武
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