FUN! the TOKYO 2020 Vol.40
2020.01.30
LEISURE

話題のヴェイパーフライとTOKYO2020。注目は“出走前”のスパートだ!

FUN! the TOKYO 2020
いよいよ今年開催される東京オリンピック・パラリンピック。何かと “遊びざかり”な37.5歳は、 この一大イベントを思い切り楽しむべき。 競技を観るのもするのも、主な拠点となる東京を遊ぶのも、 存分に。2020年の東京を……Let’s have FUN!

MGC、箱根駅伝などで好記録が続出した要因のひとつとして注目される一方、あまりの機能性の高さに規制、禁止の報道も出ているナイキの厚底ランニングシューズ「ヴェイパーフライ」。

2016年のリオ五輪あたりからプロトタイプを使用する選手が好記録を出し、一般発売された2017年からは世界各国の大会で使用する選手の上位進出が相次いだ。日本でも2018年の箱根駅伝で往路を制した東洋大の選手たちが履いていたことで話題となり、今では多くのランナーたちが使用している。

多くの選手がナイキの「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」で臨んだMGC。写真のピンクのシューズは、長距離レースですっかりお馴染みになった。 写真:日刊現代/アフロ

そして2019年10月、ヴェイパーフライの進化型と思われるプロトタイプを履くリオ五輪のマラソン金メダリスト、エウリド・キプチョゲ(ケニア)が、非公認記録ながらマラソンで世界初の2時間切りを達成した。

ヴェイパーフライの構造は、反発力に優れたカーボンファイバープレートを、航空宇宙産業で使用されるクッション性と軽さを兼備する特殊素材で包む。その結果、クッション性・反発性・軽さのいずれも犠牲にしないシューズとなり得た。高い推進力がありながら、脚への負担も少ないというわけである。

非公認記録ながらマラソンで2時間を切ったキプチョゲ。シューズは新たなヴェイパーフライのプロトタイプと予想される「ネクスト% フューチャー エディション」だった。 写真:ロイター/アフロ

ただ、あまりの好結果に、ほかのメーカーのシューズを履く選手からは不公平という声も出始める。2019年の秋には、国際陸上連盟(IAAF)が調査に乗り出すというニュースも報じられた。「シューズというよりも、もはや一種のバネではないか?」と疑問の声を上げる元選手もいる。

もちろん、ヴェイパーフライは現状の規則をクリアしているシューズだ。ただ、陸上競技規則のシューズにまつわる部分には「競技者に不正な付加的助力を与えるものであってはならない」といった、ある意味、曖昧な一文もある。それはジャッジする側、つまり国際陸連(IAAF)の判断次第ともいえるのだ。

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元箱根ランナーに聞いた。「ヴェイパーはどうなる?」

そして先日、海外メディアからヴェイパーフライが規制される見込みというニュースが流れた。しかし、直後には別メディアからは規制が入る可能性は低いという報道も出るなど、事態はいまだ不透明なまま。

規制されるとなれば、間近に迫った東京オリンピック・パラリンピックの陸上競技へも影響が予想されるが……。

「規制される可能性は低いと考えています。理由は、まず一般のランナーも含めて多くの人が入手可能であること。次に不公平な補助という点ですが、ニューヨーク・タイムズの調査によると、記録の優位性は一般的なシューズと比較すると4%前後。カーボンファイバープレートを用いた同じ仕組みのシューズはほかのメーカーでも採用されていますし、問題視するほどの不公平さではないと思います」と語るのは、自身が元箱根駅伝のランナーであるスポーツライターの酒井政人さんだ(※以下カッコ内はすべて酒井さん)。

かつて北京オリンピック前、当時好記録を連発していた高速水着「レーザー・レーサー」が禁止になったが、その理由のひとつはレーザー・レーサーが高額で製造に時間がかかることだった。入手に、選手間で不公平が生じるというわけである。その点、今や市民ランナーも使用者が増えているヴェイパーフライは、金額的にも生産量にしても入手ハードルはそれほど高くない。

優位性についても、以前、国際陸上連盟は義足のランナーであるオスカー・ピストリウスのカーボン繊維製義足が競技規定に抵触すると使用禁止にするも、スポーツ仲裁裁判所から覆された過去がある。その際に実証されたカーボン繊維製義足の優位性は25%。調査対象や細かな内容は異なるものの、優位性という点ではヴェイパーフライの4%前後と比較すると差は大きい。こうした歴史も踏まえて、国際陸連がヴェイパーフライに対して、どのようなジャッジをするのかは、東京オリンピック・パラリンピックまで注目したいポイントである。

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シューズもレースも、ラストスパートに注目!

ただ、むしろこれから期待したいのは、ナイキ以外のメーカーの逆襲ともいえる。

「フランスのホカ オネオネや日本のアシックスは、既に厚底のシューズを発売しています。ただ、まだ重さなどでヴェイパーフライとは差があるようです。ただ、アディダスもカーボンプレート入りのシューズを試作していましたし、正月の箱根駅伝では真っ白なミズノのプロトタイプのシューズを履いた選手が区間新記録をマークしました」。

さらには、ナイキ自体も当然、ヴェイパーフライの進化に取り組んでいるはず。ヴェイパーフライのプロトタイプが登場したのは、前回リオ五輪。規制が入らなければ、当然、東京オリンピック・パラリンピックで、さらなる進化モデルを投入してくることは十分考えられる。逆に規制が入った場合は、前出のようなナイキを追いかけるメーカーのモデルの存在の重要性が増すだろう。もちろん、ナイキも規制範囲内での改良に取り組むはずである。

マラソン日本記録保持者の大迫 傑もヴェイパーフライの愛用者である。 写真:毎日新聞社/アフロ

「このまま規制が入らなければ、東京オリンピックのマラソンやパラリンピックのトライアスロンなどの長距離種目は、ヴェイパーフライを履く選手がほとんどという状態になるでしょう。東京オリンピック・パラリンピックの開催は夏。時期的には3月から4月のメジャーレースでナイキを含めた各社の開発状況がわかるシューズが見られるかもしれません」。

東京オリンピック・パラリンピックは、こうしたシューズを巡る戦いも興味深い。

「ヴェイパーフライを履くマラソンの選手は、脚へのダメージを軽減させる特長のおかげで、レース後半、勝負どころでのスパート力が上がっているように感じます。東京オリンピックのマラソンでは、そんなゴール直前での激しいスパート争いが見どころのひとつになるでしょう」。

ヴェイパーフライに規制が入らなければ後半のスパート勝負に、規制が入れば他社のこれからの開発スパートと選手たちのシューズ選びに。いずれにせよヴェイパーフライを巡る動きの結末は、東京オリンピックのマラソンに注目すべきポイントを与えてくれるようである。

 

田澤健一郎=文

# TOKYO2020# ヴェイパーフライ# マラソン# ランニングシューズ
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