たのしい睡眠 Vol.13
2020.05.19
HEALTH

「4時間以下」と「8時間以上」はどちらも“悪”。健康に良い睡眠の“量”とは?

たのしい睡眠

「たのしい睡眠」とは……

十分な睡眠時間が免疫力を高めることは医学的に明らかだ。と同時に、仕事の質を高めるうえでも非常に重要なのは言うまでもないだろう。理由はシンプルだ。心身が健全な状態でないと良い仕事はできない。

近年、心身を健康へと導くためには、「量より質」の睡眠法をとることが重要と言われているが、はたして「量」に重きを置く必要はないのだろうか? そこで今回は、「睡眠の量」にフォーカスしていく。

徹夜自慢をするヤツほど仕事ができない

前回、睡眠の質の重要性について解説したが、やはり量が足りなければ心身の疲れをとることは難しい。なぜなら、睡眠の前半は肉体疲労回復、後半は脳疲労回復と、1回の睡眠で役割が分担されているから。

眠りが深い時間帯と浅い時間帯のサイクルが一晩で平均4~5回繰り返されており、眠りが深い前半の2サイクルくらいが主に肉体疲労、残りのサイクルは脳疲労の回復が行われている。つまり、最低でも4~5サイクルが繰り返される「量」をとらないと、心身両面の回復は不十分となってしまう。

睡眠不足によって後半のサイクルが欠けてしまうと、「とっさの判断力」や「対応力」が低下する。その日に記憶したこと、学習したことに付箋をつける時間と言われているからだ。言い換えれば脳内を整理する時間ということ。寝不足の状態では、脳にいくら知識がストックされていても、必要なシチュエーションで、必要なアウトプットができずに無駄になってしまうのだ。

「徹夜をして仕事をこなした」「仕事が忙しくてあまり寝てない」なんてことを自慢する人がよくいるが、それはナンセンスであることがわかるだろう。そんな生活を続けていれば、脳内は雑然とした状態となり、判断力は鈍るわ、クリエイティブな発想もできなくなるわけで、長期的にみれば仕事の評価を上げるどころか、下げることになりかねない。もちろん、肉体疲労がとれないし、免疫力も低下するわけだから、体調管理も難しくなる。

特に40代、いわゆる「中年」になったら、徹夜仕事は避けるべき。一説によれば、加齢に伴い体内時計のリズムは徐々に朝型になってくるという。その結果、心身が夜型の生活に適応できなくなっていく。当然、徹夜で仕事をしたって能率は一向に上がらないだろう。

仕事が残っていても無理せずしっかり寝て、翌日の日中に集中してこなすほうがずっと効率的なのだ。また、安眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」も加齢とともに分泌量が減ることから睡眠自体が浅くなりがち。そこに睡眠不足が重なることでますます心身の疲れが蓄積してしまうことになる。

NEXT PAGE /

休日の“寝だめ”が絶対NGなワケ

たのしい睡眠

じゃあ寝れば寝るほどいいのか? それもまた否。ここまで睡眠不足の害悪について解説してきたが、実は睡眠時間が長すぎるほうが、健康に悪影響を及ぼすことがわかっている。実際、睡眠時間が8時間以上の人のがんの罹患率は、4時間以下の睡眠不足の人たちと同等、ということが医学的データによって示されている。過ぎたるは及ばざるがごとし。健康維持に適切な睡眠時間は、個人差はあるものの7~8時間と言われている。

「平日は睡眠時間が長くとれないから週末にたっぷり眠る」。そんな休日の寝だめを習慣化していないだろうか? これこそ、睡眠不足以上に健康を害する超NG行為だ。

睡眠は体内時計を調整する働きも持っているので、休日だけ睡眠時間を長くすると体内時計が乱れてしまう。「平日も休日も同じ時間に寝て同じ時間に起きる」という規則正しい生活が理想かつ重要だ。

しかし、どうしても就寝時間が不規則になってしまうという人は少なくないだろう。そんな人は、起床時間だけでもできるだけ同じ時間にすること。これで体内時計の乱れを軽減できる。

睡眠時間が短い状態が続くのも大問題。平日の睡眠時間が異常に短くなってしまったときには、「週末だけいつもより長めに寝る」という方法を試してみよう。真っ暗に近い状態の部屋で朝は2時間長く寝て、昼食を食べた後、15時までに90分程度の昼寝をする。夜ふかしはせずに、夜は通常通りに床に就く。これで睡眠不足を解消し、体内時計を整えることができ、体調万全な状態で翌週からの仕事に取り組めるはずだ。

NEXT PAGE /

睡眠不足の解消には20分程度の「昼寝」が効果的

たのしい睡眠

睡眠不足の翌日、日中に眠くなってしまう人は、昼寝をおすすめしたい。例えば昼食をとった後に15分程度、机の上で突っ伏したり、ソファに座ったまま寝てもOK。脳の疲れをとるうえで非常に有効だ。ただし、時間は最大でも20分程度にとどめること。また、15時以降の昼寝も避けてほしい。夜に眠れなくなると、かえって悪循環だ。

もうひとつ注意してほしいのが、夜に寝ている場所(ベッドや布団)と同じところで寝ないこと。脳が夜の眠りと昼寝とを区別ができなくなってしまうからだ。リモートワークなどをしていると、つい「ベッドで昼寝を」と思いがちだが、この行為は不眠や睡眠の質の低下に直結するので絶対に避けてほしい。

連載「たのしい睡眠」一覧へ

「たのしい睡眠」
日本生活習慣病予防協会によると、「慢性的な不眠」に悩まされているのは日本人の5人に1人。読者のなかにも「最近寝つきが悪くなった」「早朝に目が覚めてしまう」など、“睡眠”にまつわる悩みを抱えている人がいることでしょう。果たして睡眠の質を高めることはできるのでしょうか? さまざまな角度で検証していきます!上に戻る

篠原絵里佳=監修
管理栄養士/睡眠改善インストラクター/上級睡眠健康指導士。総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。長年の臨床経験と抗加齢医学の活動を通し、体の中から健康を作る食生活を見出し、最新情報を発信している。アスリートの栄養指導経験も豊富で、食事と睡眠の観点から健康にアプローチする「睡食健美」を提唱。

楠田圭子=取材・文

# たのしい睡眠# 寝だめ# 昼寝# 睡眠時間
更に読み込む