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2018.02.09

からだ

「臭く感じる見た目」がある!? 嗅覚が果たす3つの役割

大人も知らないニオイの世界 Vol.2
「スメルハラスメント」が問題となるなか、自分のニオイが気になる人も多いはず。一方で、ニオイの感じ方は人それぞれで、人によっては「むしろ好き」という人がいるから不思議。身近なだけに意外に知らない“ニオイ”の奥深い世界を、一緒に深掘ってみませんか?

風邪を引くと多くの人が悩まされるのが“鼻詰まり”。ニオイを感じないどころか、料理の味まで分からなくなってしまった……という経験、ありませんか? ニオイを感じる“嗅覚”がどうして味覚にも影響するのでしょうか。嗅覚とその他の感覚の関係について、臭気判定士で、「におい刑事(デカ)」としても活躍されている松林宏治さんに聞きました。
見た目磨きも立派な“ニオイ対策” 嗅覚と視覚の不思議な関係
「嗅覚には主に(1)危険予知 (2)味覚の補助 (3)異性探知 という役割があると言われています。風邪で鼻が詰まっていると味を感じないのは(2)の役割が十分に機能していないからだと考えられます」。(松林さん、以下同)
果汁ジュースなどの原料を見ると「香料」が含まれていることがありますが、それは、味をより強く感じさせるよう、香料を使って嗅覚を刺激するためのようです。さらに、「嗅覚自体も他の感覚の影響を受けることが大きい」と松林さん。
「特に人は見た目を重視しているため、嗅覚はそれにつられやすい傾向があります。ですから、見た目がオヤジくさい人は、ニオイがほとんどない場合でも、何となく匂うと感じられることがある。つまり、ニオイ対策だけでなく、身なりを清潔に保つことも大切なんです」。
ほかの感覚に影響されやすいという嗅覚ですが、一方で単体でしっかり働くこともあるといいます。
「それは(1)危険予知 という役割を果たすとき。火事のニオイやガス漏れのニオイは、視覚的に見ることはできなくても、本能的に危険を感じることができる。それは嗅覚によるところが大きいです。余談ですが、嗅覚の感度は男性よりも女性のほうが高いとされています。これは母体となりえる女性は、いざという時に子供と自分を守らなければいけない、という防衛本能が働くからだそうです」。
嗅覚には、異性の“DNA”を感じる能力がある!?
危険から身を守ったり、食事を楽しんだりするために活躍してくれる嗅覚ですが、松林さんいわく「異性を選ぶ時にも非常に重要な役割がある」とのこと。
「たとえば、人間は本能的に近親と結ばれると子孫繁栄につながらないということから、DNAが近い人は選ばないといわれています。DNA自体にニオイがあるわけではないと思うのですが、自分と近いDNAを持っている異性のニオイを本能的に嗅ぎ分けて、その異性は選ばない、という研究結果もあるようです。ですから、いくら見た目が良くて気の合う異性でも、付き合うとなると“生理的に無理”と感じる場合は、もしかしたら嗅覚で判断しているのかもしれません」。
なるほど。“恋愛”においても嗅覚は無視できない存在のようです。ところで、昔雑誌の広告で「モテる香水」を謳う商品がありましたが、“生理的に無理”と判断するニオイがあれば、逆に“惹かれるニオイ”もあるのでしょうか?
「“惹かれるニオイ”というのは人それぞれ。もし女性を複数集めて、その人たちの好きなニオイ要素を集めれば、その人たちにウケる“モテ臭”を作ることはできますが、一方でそのニオイを受け付けない人もいると思います」。
つまり、“万人にモテる”ニオイを見つけるのは難しいようです。ちょっと残念な気もしますが、逆手に取れば、“特定の個人”に好まれるニオイはあるということ。ニオイの世界って、奥が深いですねえ。
【取材協力】
臭気判定士・松林宏治さん
1976年、愛知県名古屋市出身。1999年、南山大学経済学部卒業後、一般企業を経て2003年、消臭専門会社である共生エアテクノを設立。脱臭装置の設置、悪臭調査と対策提案・設計などを行っている。「クサイに挑むプロフェッショナル」として、“におい刑事(デカ)”の異名で、数々のメディアでも活躍中。2016年、電子書籍『臭気判定士・におい刑事(デカ)が教える!ニオイで女性に嫌われない方法』を上梓。
・共生エアテクノ
・臭気判定士/におい刑事(デカ) におい110番~深呼吸空間を創造します~
取材・文=周東淑子(やじろべえ)
 
連載「大人も知らないニオイの世界」過去記事一覧
第1回 香りの好みは4歳までに決まる!? 知られざるニオイのメカニズム


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