いつの時代もその音楽と同じくらい、ヒップホップアーティストたちの服装は衆目を集めてきた。
昨今ではその影響がストリートにとどまらず、ハイエンドなモードの世界にまで及んでいることはもはや疑いようがない。
彼らは時として、あえて違和感のあるアイテムをチョイスしたり、着こなし方をしたりすることで個性を主張するが、冬場のダウンジャケットはその筆頭。都会とは不釣り合いに思える本格的スペックのダウンで街を歩く彼らの姿に憧れを抱いた経験がある人も少なくないはずだ。
スケートボードやアートなど世界中のカルチャーとリンクした、さまざまな出版物や企画展示を手掛けるスタックス ブックストアを主宰する山下丸郎さんもそのひとり。1990年代に青春を過ごし、ヒップホップにどっぷりハマッていたそうだ。
「当時の日本では圧倒的にNYのヒップホップがメインストリームで、自分も中学生の頃にはすっかりどハマりしていました。ナズにウータン・クラン、モブ・ディープ……。なかでもダウンジャケットと言われて真っ先に思い浮かぶのがビギーです。マーモットやファーストダウンなど、とにかく分厚いダウンのイメージです」。
ビギーことザ・ノトーリアス・B.I.G.が愛用していたマーモットの「マンモスパーカ」は、そのまま“ビギー”と呼ばれるほどに人気を博し、カラバリを揃えるために強奪事件まで起きている。
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