「感動の服」特集 Vol.41
2021.09.18
FASHION

「初心を思い出させてくれる」。2人の40代が語る“グッチ・ホースビット”青春譚

カジュアル靴の頂点であり、ブランドを象徴する1足であるグッチの「ホースビット ローファー」。オーシャンズ世代にとっては、若かりし頃に思い描いた大人の象徴的存在だったのではなかろうか。

ここで紹介するのも、青春時代にこの靴に憧れを抱いた2人による“ホースビット”ストーリー。あの頃と今、変化した自分と変わらぬ想いを語ってもらった。

大人の象徴的シューズ。オーシャンズ世代の男2人が語る“グッチのホースビット”青春譚
キメの細かいキッドレザーを使い、すらりと伸びたノーズで端正に仕上げた人気の定番シューズ。形はオリジナルをしっかり踏襲しつつ、フォルムはモダナイズされている。12万1000円/グッチ(グッチ ジャパン 0120-99-2177)

「ファッション通信」プロデューサー
神保 誠さん Age44
ラグジュアリーブランドから楽天ファッションウィーク東京などの記録画像なども手掛けている。今気になるアイテムは斜めがけバッグ。

僕にとって、グッチの「ホースビット シューズ」はひと言で表現するならば“青春”そのものです。

高校生がメインの雑誌「東京ストリートニュース」が大流行し、周りにはその巻頭や誌面に登場する同級生がゴロゴロいて、原宿や渋谷のクラブでパーティを開いていたりしました。また、学校が私服OKだったこともあって、コム デ ギャルソンなどのモード系から、ワーク、古着、サーファー、スケーターなど多種多様な格好をした友人がいました。

そんな環境も相まってファッション好きになるのですが、まだまだ自分自身のスタイルは迷走中……。ただそんな中でも靴にはこだわりを持っていました。流行りのスニーカーはもちろんですが、クラークスやティンバーランド、レッド・ウィングなどの革靴が大好きでした。

でも密かにいちばん憧れていたのはグッチの「ホースビット シューズ」。キムタクに似ていて格好いいと言われていた同級生のO君が、当時高校生ながらテレビに出て、足元を彩っていたのもグッチの「ホースビット ローファー」でした。うーん、僕も履きたいし、何より羨ましい!

そしてついにそのチャンスが訪れたのは、1995年の高校卒業間近の冬休み。僕は両親と香港旅行に訪れていました。その時期の香港は、街全体がセールで活気づいていますが、僕のテンションも最高潮です。

ケンタッキーフライドチキン練馬駅前店でバイトして貯めたお金を握りしめ、いざグッチの店へ!そこでお買い得にゲットしたのは、黒レザーに金のホースビットを配した靴。あえてミッドカットをチョイスしました。

冬休み明けには、黒の詰襟制服にこの靴を合わせ、誇らしげに登校した自分を今でもよく覚えています。

長年履き込まれ、すっかりレザーも柔らかくなった神保さんの私物。個性的なミッドカットですら、今見てもまったく古くささを感じない完成されたデザインとバックグラウンドが永世定番たる由縁。

そして、購入して26年の月日が経った、今年2021年の7月。グッチ100周年を記念した京都でのイベントに、久しぶりにこの靴を履いて出かけました。僕なりにグッチのルーツを重ね合わせたつもりです。

実はオーシャンズの江部編集長が、この靴を見てすぐに昔のモデルだと気付いてくれたことが、とてもうれしかったエピソードにもなっています。

現在はファッション番組を制作していますが、この靴を見るとなんだか甘酸っぱくて、あのキラキラしていた時代や憧れを想起させます。「初心忘れるべからず」。この靴は純粋にファッションを追っかけていた自分に戻してくれるタイムマシンみたいなアイテムです。

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オーシャンズ 編集長
江部寿貴 Age44
少年時代に服に目覚める。アヴァンギャルドな服よりも、ベーシックを愛する。嗜好は雑食ながら、最近は「トラッドをどうストリートに、またはセクシーに着こなすか」がお洒落のテーマ。

16歳の夏、身分不相応にもこれを手に入れた。ミッドカットでビブラムソール、スエードアッパーのものだった。当時、つるんでいた“オシャレな仲間”が得意げに履いてきたことに影響されたのだ。

校則でがんじがらめだった中学生のときに指定された貧相なローファーとは何もかもが違いキラキラして見えて、 これこそが本物のオシャレでオトナの逸品であり、そして直感的にモテる靴だと信じた。

16歳少年がこれを履いた顛末はさておき、四半世紀の時間がいたずらに経過した2019年、僕が編集長になった記念にと某人が「ホースビット ローファー」をプレゼントしてくれた。

16歳の頃よりは身の丈に合うようになったとは思うけれど、ファッションに対する気持ちや楽しさといった「初心」を思い出させてくれる大きなきっかけとなった。極めて私的だが、グッチの「ホースビット ローファー」が特別な靴である理由だ。“服好きの仲間”が神保さんの同級生だったという不思議な巡り合わせがあったことも記しておこう。

数年後、自分の長男は僕が初めて「ホースビット ローファー」を履いた年齢になる。ちょっと気取って友達と繁華街へ出かけたり女の子とデートしたりするとき用に一足プレゼントしようかな。ずいぶんと贅沢だけれどね。

 

清水健吾=写真 梶 雄太、来田拓也、星 光彦、野上翔太=スタイリング 増山直樹、早渕智之、長谷川茂雄、いくら直幸、髙村将司、大西陽子、森上 洋、中田 潤、今野 壘、オオサワ系、大木武康=文

# グッチ# ホースビット# ローファー#
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