コンピューターが織りなす「CFCL」のニットの従来品とは違う価値
突然だが、ニットにどのようなイメージを持っているだろうか。実はこれから紹介するアイテムはどれも全部、ニットである。
手掛けたのは学生時代に新人デザイナーの登竜門である「装苑賞」に輝き、20代からモードの世界で辣腕を振るってる高橋悠介さんだ。
![]() | デザイナー 高橋悠介さん イッセイ ミヤケ メンのデザイナーを経て、独立。ブランド名のCFCLとは「Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)」、の頭文字からとったもの。 ©Yosuke Szuki |
「BFGU(文化ファッション大学院大学)の修了制作には15体の作品を作らないといけないのですが、それをイチから全部縫い上げるのはかなりの骨折り。そこで思いついたのがコンピューター・ニッティングという手法。ミシンや縫製糸を使わずプログラミングだけで服ができるので、合理的だなって(笑)。
優しげな印象のニットは、一見モードとは距離があるところも面白さだと思いました」。
いざ独立して自身のブランド「CFCL」をということきに、再びこのコンピューターニットを選ぶことに。

「ニットってもともとルームウェアなんですよね。カジュアルでリラックスした、ベーシックなもの。伸縮性があって、動きやすい。縫製されたフォーマルな服は基本的に立ち姿に合わせてパターンされますが、編み物のニットならリラックスしたときのフォルムに寄り添います。
かたやこの10年でコンピューターニットも技術革新が進み、時代もスポーツカジュアルな方向に振れてニットの活躍するシーンがかなり広がっています。自分の興味と時代と、マーケットが一致しそうだなと感じました」。

ニットできちんとした見映えのものを作れば、もはや着る場所を選ばない。
「シャツも昔はアンダーウェアだったので、その上にベストを羽織らないと外には出られませんでした。でも、いまやシャツはおろかTシャツでもOKです。となると、必要なのはキレイめなTシャツです。
プログラミングして編んだCFCLのTシャツは特殊なガーター組織で、適度な肉感のカジュアルすぎない雰囲気に。よくあるハイゲージのニットと違って肌が透けることもありません。
縫い目の生じないホールガーメントなので着心地が良く、一方で脇や袖にはクリースを入れてきちんと感をプラスしました」。

機能糸のソロテックスや再生ポリエステルをニットにしているため、洗濯機で洗えてシワになりにくいイージーケアも魅力。これなら家でも、ZOOM会議でも、何でもござれだ。

「奇をてらわない、普通に着たいものを作る。そのうえでほかにはないものを。衣食住という表現があるくらいで、服はその人の生活をサポートする人生のパートナーですから」。
鈴木泰之=写真 来田拓也=スタイリング 髙村将司、安部 毅、増山直樹、磯村慎介(100miler)=文