What’s AIR JORDAN Vol.4
2021.01.10
FASHION

ダメージすら格好いい「エア ジョーダン 1」。解体して、リペアして気付いた魅力

「What’s AIR JORDAN」とは……

スニーカーのカスタマイズで火が点いた話題のスニーカー修理専門店「リクチュール」。オーナーの廣瀬瞬さんのもとを尋ねると、手にはボロボロになった「エア ジョーダン 1」が。

これ、一体どういうこと?

試行錯誤の末に生まれたスニーカーの再構築

できることなら愛用のスニーカーは長く履き続けたい。これは、すべてのスニーカー好きの共通の想いだろう。

廣瀬 瞬●1986年生まれ、東京都出身。大学在学中に靴修理のフランチャイズ店で経験を積む。2013年に地元・国分寺で靴修理店を立ち上げる。その後、店名を「リクチュール」に改め、2019年に青山へ移店する。

「3~4年ほど前、カスタムしたナイキの『コルテッツ』をインスタへ投稿したら、思っていた以上に反響があって。これをきっかけに、スニーカーのリペアやカスタムを受注する現在の『リクチュール』の業態が生まれました」。

ナイキ「コルテッツ」をカスタムした私物。

長年、革靴の修理に携わってきた廣瀬さんは、スニーカーの修理に対して難しさを感じることがよくある。

「スニーカーは、修理を前提に作られていないんです。だから、リペアにしろ、カスタムにしろ、ひと筋縄にはいかない。その反面、よく履き込まれたスニーカーが修理に持ち込まれると、愛着を持って履き続けたいと思う気持ちもよくわかります。デニムみたいなものですね」。

いまや海外からも注文が殺到するリクチュールの提案は、日々の試行錯誤の賜物なのだ。

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修理をきっかけに再確認した「エア ジョーダン 1」の魅力

これまで修理を手掛けてきたスニーカーのなかで心に残った一足がある。

「少し前に、古い『エア ジョーダン 1』のリペアの依頼を受けたんです。オーナーはプロダンサーで、靴はすでにボロボロ。ですが、言葉にできない風合いを持っていて、修理しながら引き込まれていくような魅力がありました。

実際にダンスで使っていたという“履歴”がそう感じさせたのかもしれません。実際にリペアして、その出来栄えにも納得。とても感慨深い仕事でした」。

それから、自分でも「エア ジョーダン 1」を履いてみたいという気持ちが湧いた廣瀬さんは、修理することを前提にオールドジョーダンを数足ストックした。

オリジナルカラーから選んだ廣瀬さんの「エア ジョーダン 1」。

「実はスニーカーを頻繁に履くようになったのは最近なんです。シンプルなデザインのローテクが基本で、ナイキなら『コルテッツ』ばかり(笑)。

プロダクトとしては凄く好きだけど、自分では履かないかなと思うモデルもたくさんあって『エア ジョーダン 1』もソレでした。ただ、改めて手に取ると、木型もきれいだし、やっぱり特別だと感じて」。

仕事を通じて出合い、中身を知って気付いた「エア ジョーダン 1」の魅力とは?

「“シカゴ”がわかりやすい例ですが、配色だけで“ジョーダン 1”だとわかる。ここまで認知されている靴は稀だと思うし、万国共通のコミュニケーションツールとして親しまれている感じがしますね」。

シカゴ・ブルズのチームカラーを配した「エア ジョーダン 1」の象徴的なカラーリング。

多くの人が特別な感情を抱く愛すべきデザインは、廣瀬さんの心にも訴えかけるものがあるようだ。

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デニム感覚でリペアするオールドスニーカー

古いスニーカーは、外見がきれいだとしても、ソールや内部の劣化が激しいことがざら。実際に履けるかどうかは、蓋を開けてみなければわからない。

アウトソールを剥がした状態。内部の劣化したスポンジを取り除く前。

「たとえばヴィンテージの『エア ジョーダン 1』なら、解体しなければならないケースがほとんどで、“これならイチから作ったほうが早いのでは?”と思うことさえあります(笑)」。

廣瀬さんの店なら、写真程度の状態だとざっくり6万円くらいだとか。

ソールを剥がしたあと、粉々に砕けているスポンジを丁寧に取り除く。

「塗装に関しては好みが分かれるところです。再塗装すればきれいにはなるんですが、それが不自然に見えて、全体のバランスが崩れてしまうことも。

これからリペアに着手する僕のスニーカーは、普段履きできる状態まで機能を回復させつつ、それこそヴィンテージデニムの修復のように、なるべく元の状態に近づける方向で仕上げる予定です」。

かなり激しく塗装が剥げている状態だが、ここから手直しを加えることも可能。

相当なダメージを抱えていることは明らかだが、廣瀬さんの手腕でスニーカーはどのような姿に蘇るのか。

取材から数日後、生まれ変わった「エア ジョーダン 1」の写真が廣瀬さんから届いた。

張り替えたソールは黄ばんでいて、やれたアッパーと自然に調和している。まさにダメージデニムのような魅力を放っている。

ダメージをも魅力へと変換する、「エア ジョーダン 1」のプロダクトとしての力。そんな側面からも、スニーカー界において“ジョーダン”が唯一無二の存在だと気付かされるのだ。
 

What’s AIR JORDAN●オークションではマイケル・ジョーダン本人が着用していた「エア ジョーダン 1」が61万5000ドル(約6600万円)で落札。彼が現役引退してからも派生モデルは増殖し、比例するように熱狂的マニアも後を断たず。エア ジョーダンって一体、なんなんだ?上に戻る

鳥居健次郎=写真 戸叶庸之=編集・文

# ナイキ# エアジョーダン# スニーカー# リクチュール
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