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2020.10.02

ファッション

インスタポンプフューリーの軌跡と四半世紀を経て日の目をみた幻のキャラ

発売から25年が経った今でもその斬新さは色褪せることがない。発売されたのは1994年じゃなくて、2044年なんじゃないかとさえ思うよ。こいつはきっと未来からの贈り物なんだ──。
スニーカーシーンをリードするオーストラリア発スニーカーマガジン『スニーカーフリーカー』の編集長、サイモン・ウッディ・ウッドが手放しで褒めちぎったインスタポンプフューリー。その物語を知ろうと思えば、時計の針を1979年まで巻き戻す必要がある。
 

「イノベーションを成しとげよ」

1994年に発売されたインスタポンプフューリー。
リーボックはアメリカの実業家、ポール・ファイヤマンが北米におけるリーボックの権利を獲得した1979年を分岐点として、右肩上がりの時代を迎えた。
1982年にリリースしたエアロビクスシューズ、フリースタイルで世界的な成功を収めると、ファイヤマンはこれを原資にリーボックを破竹の勢いで成長させた。1985年に上場を果たし、1989年には18億ドルもの売り上げを叩き出した。
余勢を駆って発足されたのが「Advanced Technologies Group」(ATG)だ。ハイテクスニーカーブームの前夜、イノベーションを成しとげよ──というファイヤマンの号令一下、商品開発、化学、スポーツ科学のスペシャリストが集められた。メンバーはポール・リッチフィールド、エド・ルシエ、ピーター・フォレイ、ブライアン・イゴーの4人である。
彼らが手始めに開発したのがデュポン社の合成樹脂ハイトレルをチューブ状に成型したミッドソールだ。エナジー・リターン・システム(ERS)と名づけられたそのミッドソールは、着地時の衝撃を反発力に変換するテクノロジーだった。
のちのインスタポンプフューリーにつながるザ・ポンプ。
これを搭載したバスケットボールシューズがザ・ポンプ。そしてERS以上に耳目を集めたのが、コンプレッサーによる手動のポンピングで空気を注入し、フィット感を高めるポンプ・テクノロジーだった。発売から1カ月でおよそ40万足を売り上げた。
このチームに新たに加わったのがスティーブン・スミス。ニューバランス、ナイキを渡り歩き、そして直近ではアディダスのイージー ブーストを手掛けた成功請負人である。
スミスを仲間に迎え入れたATGは、さっそく次なる新たなテクノロジーを完成させた。ハニカムに着想を得たクッショニングシステム、ヘキサライトがそれである。のちにインスタポンプフューリーにも搭載されるテクノロジーだ。
ATGは1991年にRAC へ改称した。RACは「Reebok Advanced Concepts」の略だ。彼らはランニングシューズのポートフォリオにミニマリズムの要素を加えることを使命とし、あらゆるコンポーネントの軽量化に没頭した。


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