夏まで待てない……「Tシャツ」大特集! Vol.41
2020.07.16
FASHION

今こそ外出可能なルームウェアが必要だ! Z世代の「寝間着活用論」

「遅れました! ホントすみません!」。インタビューの待ち合わせは14時で、到着時間は15時前。駆けつけたのはシブヤソーシャルウェーブ スタッフの平野 塁さんだ。

聞けば、寝坊して約束の時間直前のメールで起きたそう。必死に謝る感じが若気のいたりらしくて微笑ましい。と言うより、その時間に起きたにしては意外と到着が早い。

平野 塁●2001年生まれの新世代。日本のクラブシーンの隆盛に大きく貢献した伝説的なDJ、HEYTAこと平野雅裕さんを父に持ち、自身はストリーミングも可能なDJブースを持つ異色のショップ、SSW(シブヤソーシャルウェーブ)のスタッフとして活動している。

「僕、いつも起きてからは早いんですよ。ニット帽だけ被れば、大体すぐ出られる格好なんです。今日は取材ということで、人に会うので着替えてきましたが」。

起きてそのまま外出できる格好。普段、平野さんはどんな格好で寝ているのかをたずねると、「パジャマです!」と即答。スケボーで破れたワークパンツにパーカのフードを被り、脇にデッキを抱えた男が、行儀良くパジャマに着替えて寝ているというのがちょっと意外だ。

「ずっとバスケ部だったので、元は“バスパン”をはいて寝ていたんですよ。だけど、知り合いがやってるボットというブランドのパジャマを買ってから、ハマってしまったんです」。

そのとき選んだのはシルク製の正統派ながら、映画『スカーフェイス』のシーンがコラージュされたトガったデザインで、あくまで街着として買ったそう。しかし、着ていくうちにその心地良さに気付き、就寝用にもなったと話す。

『フォレスト・ガンプ/一期一会』人より知能指数は劣れど、純真な心を持った主人公が困難や人の優しさに触れながら成長していく様を描いた不朽の傑作。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』人より知能指数は劣れど、純真な心を持った主人公が困難や人の優しさに触れながら成長していく様を描いた不朽の傑作。寝るときはしっかりとパジャマに着替える、普段着もシャツをキチッとタックインする、行儀がいいの印象的。

「小学校六年生の頃に初めて観た洋画が『フォレスト・ガンプ』だったんです。それまでは映画に興味がなかったのですが、親にすすめられたのがきっかけで。そのときは観ても特に何も感じなかったけれど、高校三年生になってから偶然観返したらとても面白かった。

ストーリーだけでなく、ナイキのコルテッツが印象的に映ってたりとか、ファッションにもグッときました。トム・ハンクスがベッドで眠るシーンでストライプ柄のパジャマを着てるんですよね。それで、『パジャマっていいなぁ』と」。

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『トレインスポッティング』若者のリアルと、彼らにつきまとうドラッグをはじめとする危険や葛藤を描いた、1996年公開のイギリス映画。
『トレインスポッティング』若者のリアルと、彼らにつきまとうドラッグをはじめとする危険や葛藤を描いた、1996年公開のイギリス映画。そのスキャンダラスなストーリーや描写ゆえ、作品はR-15に指定された。今でも熱心なファンが途絶えない青春映画。

ほかにもパジャマが印象に残っている作品はあるという。やはり映画史に残る青春映画の名前が挙がってきた。

「『トレインスポッティング』かな。ユアン・マクレガーが着てた、オレンジのストライプのものです」。

確かそれは、主人公のマーク・レントンが薬物断ちをするためベッドに潜り込んで幻覚と闘う、劇中屈指のシリアスなシーンだったはず。

「はい。一瞬でしたが、シーツにくるまってもがいてる姿が目に焼き付いてるんですよね」。

そうして徐々に、パジャマ=寝間着という先入観が消えてゆき、昼夜を問わない、平野さんの定番ワードローブとなった。とはいえ上下揃いで出かけることはあまりなく、シャツの上にスウェットを着たり、逆にパンツを残してTシャツと合わせたりと、外出時には単体で使うことが多いそうだ。

「単純に服装を考える時間があったらスケボーしたいんですよね(笑)。そんな格好で出掛けて、ひとしきり滑ったら友達の家に行き、疲れたらそのまま寝たりするので、やっぱりラクですよ。素材がシルクなので、コケたら一発で穴が開いてしまうので、そこだけ気を使いますけどね」。

いろいろ試してみた結果、無地よりも柄モノのパジャマのほうが街との兼用には向いている、という結論にいたったそう。

「無地だと、『お前、それパジャマじゃね?』ってなってしまう(笑)。ただ、柄の中でもストライプだけは“パジャマっぽさ”が、逆に街着としてアリだったりもするから難しい」。

固定観念にとらわれず、自分らしくて何より自由。何ともスケートボード好きのユースらしい選択だ。

「そういえば、『時計じかけのオレンジ』にもありました。車椅子の作家役の老人が着ているセットアップ、あれも多分寝巻きなんじゃないかな? でも色はオレンジだし、スカーフを巻いてるしで、本当に洒落てる。僕もいつか、あんなおじいちゃんになりたいです(笑)」。

『時計じかけのオレンジ』’71年公開のスタンリー・キューブリックの代表作にして、映画史に残るカルトムービー。
『時計じかけのオレンジ』’71年公開のスタンリー・キューブリックの代表作にして、映画史に残るカルトムービー。内容もファッションもクレイジーな世界観の衝撃は凄まじく、同作の影響が殺人事件にまで波及し、英国では26年間もの間、劇場公開が禁止されていた。

 

平沼久幸=イラスト 今野 壘=文

# パジャマ# 映画
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