ほかにもパジャマが印象に残っている作品はあるという。やはり映画史に残る青春映画の名前が挙がってきた。
「『トレインスポッティング』かな。ユアン・マクレガーが着てた、オレンジのストライプのものです」。
確かそれは、主人公のマーク・レントンが薬物断ちをするためベッドに潜り込んで幻覚と闘う、劇中屈指のシリアスなシーンだったはず。
「はい。一瞬でしたが、シーツにくるまってもがいてる姿が目に焼き付いてるんですよね」。
そうして徐々に、パジャマ=寝間着という先入観が消えてゆき、昼夜を問わない、平野さんの定番ワードローブとなった。とはいえ上下揃いで出かけることはあまりなく、シャツの上にスウェットを着たり、逆にパンツを残してTシャツと合わせたりと、外出時には単体で使うことが多いそうだ。
「単純に服装を考える時間があったらスケボーしたいんですよね(笑)。そんな格好で出掛けて、ひとしきり滑ったら友達の家に行き、疲れたらそのまま寝たりするので、やっぱりラクですよ。素材がシルクなので、コケたら一発で穴が開いてしまうので、そこだけ気を使いますけどね」。
いろいろ試してみた結果、無地よりも柄モノのパジャマのほうが街との兼用には向いている、という結論にいたったそう。
「無地だと、『お前、それパジャマじゃね?』ってなってしまう(笑)。ただ、柄の中でもストライプだけは“パジャマっぽさ”が、逆に街着としてアリだったりもするから難しい」。
固定観念にとらわれず、自分らしくて何より自由。何ともスケートボード好きのユースらしい選択だ。
「そういえば、『時計じかけのオレンジ』にもありました。車椅子の作家役の老人が着ているセットアップ、あれも多分寝巻きなんじゃないかな? でも色はオレンジだし、スカーフを巻いてるしで、本当に洒落てる。僕もいつか、あんなおじいちゃんになりたいです(笑)」。
平沼久幸=イラスト 今野 壘=文