ファッションとは、移ろうもの。そのあり様は、寄せては返す波のごとし。
見るからにソールが薄くペタンコ、言ってみれば“薄ペタ”なスニーカーだが、これをリリースしたのが、いわゆるダッドスニーカーの先駆け「トリプル S」で世を牽引したバレンシアガなのだから、冒頭の思いは禁じ得ない。
実際、この年初に催されたパリのファッションウイークにおいて、この“薄ペタ”が、複数登場したのを編集部取材班は確認している。つまりは、花盛りとなると予想される2020AWより一歩早い’20SSにおいて、バレンシアガは嚆矢を放ってきたというわけだ。その名も「ゼン」。
デザインについては、マーシャルアーツやフットボールシューズに着想を得たというシャープな顔立ちで、キルテッド素材のアッパーによる流麗なシェイプはさすがだ。ブランドとしてもしっかりと「厚みを増すソールとアスレチック・テックからの脱却」と謳い、カウンターであることを高らかに宣言している。
これは想像だが、「禅」にも通じるその名前から、雑念を削ぎ落としたようなミニマリズムを体現しているかのよう。いち早く、この「移ろい」に身をまかせるならば、試してみたい一足となることは間違いない。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 髙村将司=文