街がランウェイになるスニーカー●世界のファッションショーを長年に渡り取材してきたファッションジャーナリストの増田海治郎。そんなランウェイの専門家であり中毒患者でもある増田が、トップメゾンの最旬スニーカーを多角的な視点で解説する短期連載。第7回はオフ-ホワイト。
ヴァージル・アブローは、ストリート、モード界を牽引する現代のスーパースター。その存在はヒップホップ・アーティストさながらで、個人的には21世紀のキング牧師、あるいはマイケル・ジャクソンだと思っている。アフリカ系アメリカ人の彼は、それくらい大きな尊敬と羨望を集めているし、2014年のデビューからわずか5年余りで、モード界でも確固たる地位を築いた。ファッションという意味だけではなく、歴史に名を刻む人物だと思う。
ファッションにデコンストラクション(脱構築)の概念を持ち込んだのはマルタン・マルジェラだが、スニーカーでその概念を発展させたのはヴァージルだ。
ナイキ(NIKE)の過去の名作を鮮やかに切り刻み、再構築した「THE TEN」シリーズが、大きなムーブメントを巻き起こしたのも記憶に新しい。オフ-ホワイトのスニーカーは、ナイキのような明確なベースはないけれど、ヴァージルのデザイン思想がよりピュアに詰まっていて、ナイキより人と被らない。
その最新作が「ODSY-1000」だ。
ハイキングシューズとトレイルランニングシューズを“調和”させたデザインは、ずんぐりむっくりした雰囲気で、存在自体がなんか可愛らしい。素材は半透明のメッシュ、ナイロン、レザーの組み合わせ。外側のアッパーには丸みを帯びた矢印の“アローロゴ”、ヒールタブにはインダストリアルベルトのデザイン、シュータンには“OFF”のロゴが配され、シューレースには“SHOELACES”の文字がプリントされている。
もちろんヴァージルのスニーカーを象徴する赤の“ZIPタイ”も標準装備。最近のヴァージルは、洋服ではこうしたアイコンを積極的に使っていないけれど、これは「かつや」のメニューに例えれば“全部のせカツ丼”的な豪華さだ。
カラーバリエーションも豊富に用意している。こちらはベージュのソール、ベージュ×ネイビー×ピンク×半透明のライトブルーの組み合わせが爽やかな一足。
定番の「オフ-コート」は、バスケットボールシューズ型。そこにユーズド加工を施して、履き古した雰囲気を表現している。
一箇所のみが縫い付けられたオレンジのタグは、片方だけ外して履いたりすると楽しそう!
[問い合わせ]eastland (イーストランド)03-6712-6777増田海治郎=文