2019.12.02
FASHION

音楽、映画、ファッション。すべてが繋がっているワコマリアの服作り

ワコマリアの服にはルーディな感じと大人っぽさが同居している。そして、マーケティング優先で作られた服には決して出せない面白みがある。その秘密はどこにあるのか。代表の森敦彦に話を聞きたいと思った。

ワコマリアとは?
2005年に設立。常に音楽を根底に置き、上質でロマンティックな、色気を感じさせるスタイルを提案している。映画監督のジム・ジャームッシュ、コラージュ作品で知られる米アーティストのウィアード・デイヴなど、他ジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。現在、世界17カ国で商品を展開している。

「面白いか否か。それ以外の判断基準ってあります?」

代表 森 敦彦 氏 2005年にワコマリアを設立し、デザイナーとしてブランドを牽引する。幅広いジャンルのレコードコレクターであり音楽に造詣が深い。
代表 森 敦彦 氏 1972年、兵庫県生まれ。滝川第二高等学校卒業後、’91年に全日空横浜サッカークラブ(のちの横浜フリューゲルス)に入団。ポジションはゴールキーパー。’97年に現役引退。2005年にワコマリアを設立し、デザイナーとしてブランドを牽引する。幅広いジャンルのレコードコレクターであり音楽に造詣が深い。ヴィンテージのアンプやスピーカーにも精通。スカ、ロックステディ、ガレージ、ファンクなどを独自のアプローチで表現するサウンドクルー「キラー チューンズ ブロードキャスト」を主宰。

森 敦彦という人物が元Jリーガー、つまりプロサッカー選手だったことを知る人は多いはず。アグレッシブなスタイルのゴールキーパー。ドレッドヘアに反骨の魂を感じさせるプレーヤーだった。現役引退後、2005年にワコマリアを設立し、活躍のフィールドをファッションに移す。

「苦労といえば、ブランドを始めるときがいちばん大変でしたね。何せ服作りの経験がない素人でしたから(笑)」。

服飾業界の友人たちのアドバイスを受けながら、手探りでの服作りが始まる。最初期に作ったアイテムはTシャツ、シャツ、スラックス。スラックスというのが少し変わっている。それは森が愛する音楽と映画に理由がある。

「例えばロックステディやスカのミュージシャン、僕が好きな映画スターは、デニム一辺倒じゃない。カッコいい人はスラックスもはく。ならば一発目はスラックスから行ってやろうと。僕の場合、音楽と映画とファッションは完全につながっているんですよ」。

森は小学3年生の頃から洋楽を聴いている。1980年代当時、そんな子供は結構珍しかったはずだ。

「人と違うことをやりたいタイプなんですよね。関西圏で放送されていた『POPベティハウス』(※1)という番組を見ていました。アーハとかマドンナとか、当時のポップミュージックですね」。

程なく“貸しレコ屋”に通い出し、モトリー・クルー、ラット、ディープ・パープルなどのヘヴィメタルに出合う。テープにダビングして夢中で聴いた。

「そのなかに、長渕 剛と尾崎 豊は入ってきますけどね(笑)。高校の頃はレゲエに行きました。そこから遡ってロックステディ、スカにいたるという感じ。ヒップホップはネタを探ると、昔のソウル、ファンクに行き着くわけです」。

今はロカビリー、ガレージ、中南米やアフリカンミュージック、マイナーなファンクなどに凝っているが「カッコいい音楽は何でも好き」だという。

「服作りはまず、自分の好きな音楽に合うか、好きな映画のワンシーンに合うか、といったことを考えます。想像を膨らませながら作るのが好きですね」。

音楽を感じさせる、色気が漂う服。その個性はもちろん森のパーソナリティに起因する。しかしながら、ワンマンで服作りが進むことは決してない。

「スタッフと相談しながら作っています。僕がひとりで決めて、あとでスタッフがイヤだって言ったら、やっぱりイヤですもん(笑)。皆が気分良く、楽しく働けるようにしたい。でもそれは、僕がちゃんと人間的に成長しなければ成り立たないこと。当然モノ作りにもつながってきます。人間がダサかったら、作った服がカッコ良くなるわけがない。下手なサッカー選手が集まっても、弱いチームができるだけですから」。

’15年にオープンした旗艦店「パラダイス トウキョウ」。広いスペースに服がずらりと並ぶ。カウンターバーではコーヒーも酒も飲める。そして奥の棚にはレコードが並び、極上のサウンドシステムから音楽が流れる。その名のとおり、ここは森とスタッフにとってのパラダイスなのかもしれない。

「カルチャーも人も遊ぶ場所も、今の僕にとっては東京がいちばん面白い。何をやるにしても僕の判断基準は“面白いか、面白くないか”だけです。時には失敗もありますが、常に面白いほうを向いて進みたいですね」。

 

※1 『POPベティハウス』
神戸市の「サンテレビ」で、1983年にスタートした音楽番組。海外のミュージックビデオを外国人VJが紹介するスタイルで話題を呼んだ。

 

TAKU KASUYA=写真 加瀬友重=編集・文

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