ウン十年付き合ってきたブランドとの現在進行形は「キメずにキマる」
「お洒落であるより、格好良くありたい」と言う種市 暁さんのスタイルに本誌が注目し、“種カジ”と勝手に命名して早数年。いつもパッと見の印象は無造作なのに、なぜか格好いいから不思議。そんな彼の装いの“タネ”をムリヤリ解説してもらう企画。
ーーアレ、もう短パンじゃない!

「シックなのもいいでしょ?」
ーーもしかして読者ウケ、狙ってます?
「人を、打算で生きているかのように言わないの。読者の皆さんは厳しい目を持っているから、常に皆さんの参考となるスタイルを提案していきますよ」
ーー本当ですか?
「この格好をよく見て。“キメずにキマる”の初心に帰った感じでしょ」
ーー……悔しいけど、格好いいです。
「秋気分をいち早く取り入れたいけど、まだ暑さも残るから快適に過ごしたいという気分なんですよ」
ーーなるほど。ゆったりしたパイルトップスとドレープの利いた極太パンツが秋風になびきつつ、スエードの“チューリッヒ”もマッチしてますね。
「フットベッドまでスエードというミニマル感に惚れ込みました。パンツは、N.ハリウッドのグラミチ別注。デザイナー尾花大輔くんとは同世代というだけあって、スラックス調の生地が、僕の気分にフィット。しかも、ユルいシルエットなのに、モノトーンだから引き締まる」
ーーこれぞ種カジの神髄。しかも我々世代にとっては、若き日に洗礼を受けたアメカジアイテムばかりだ。
「そのとおり! グラミチもビルケンシュトックも、ビームス 渋谷に配属された社会人1年生の頃からの付き合い。だから、どこかに新鮮さを加えて、新味を楽しむのが極意」
ーーなるほど。トップスもスウェットシャツへのオマージュというわけか。
「もちろん計算ずくですとも」
ーー恐れ入ります。さすが種さん、ますます磨きがかかりますね!
「それ、磨きというより、プレッシャーがかかるわ(笑)」
「グラミチは、日本参入の初期からビームスの扱いがあった“古株”。このシルエットは、ブランド本来のもっさり感と今の気分が融合していて、後ろ姿も含めいい感じ」と、お気に入りだ。
種さんの友人でもある俳優、大森南朋さんが参画するブランド、サラバの薄色サングラス。「夏は日差しが強いので濃い色のレンズでしたが、秋になったら薄色で」と、衣替え。
先日、欧州旅行で訪れたルルドの泉の水。「万病に効くといわれる、世界的に有名な霊験あらたかな水です。日常をリセットすべく今夏赴いたフランスでの思い出を手元に」。
通常はコルクが見えるフットベッドの脇までスエードをあしらったオールグレーのチューリッヒ。「20年前に愛用していた頃と違う大人びた趣から、ビームスの企画担当者を大絶賛!」
PROFILE
たねいちあきら●1972年生まれの46歳、東京下町出身。サーフィンを愛する海男。長年勤めたビームスを退社し、現在はフリーランスとしてブランドのコンサルティングやプロダクトのディレクションなどを手掛ける。種カジのこぼれネタがポストされるインスタグラム(@taneichiakira)もチェック!
山本 大=写真 髙村将司=文