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2019.09.19

ファッション

シューツリーを入れて休ませたくなるスニーカー「YOAK」とは?【後編】

海外からのオファーもひっきりなしのスニーカーブランド「YOAK(ヨーク)」とはどのような存在なのか。デザイナーの廣本敦に聞いた。
前編を読む。
廣本敦●2015年に独立し、「ヨーク」をローンチ。げんざいはオンラインストアのほか、イセタンメンズ をはじめとする国内外30店舗ほどの店にも並んでいる。
廣本敦(ひろもと・あつし)●1979年生まれ。グラフィックの専門学校卒業後、大手スポーツメーカー、商社でキャリアを積む。2016年に独立し、「ヨーク」をローンチ。現在はオンラインストアのほか、イセタンメンズ をはじめとする国内外30店舗ほどの店にも並んでいる。

「ヨーク」がこだわるオパンケ製法とは?

ビジネスシーンで履けるという前提をクリアしたかった── そう語る廣本は革靴をつくる工場での生産にこだわった。そうして底付けに選んだ製法は「オパンケ」だった。
「オパンケ」 は甲の立ち上がりをぐるりと一周縫うコンストラクションが特徴で、サイドマッケイと呼ばれることもある。革靴のみならず、スニーカーの世界でもクラシックなタイプにみられる製法である。
ステッチをしっかり打ち込む「ヨーク」 のスニーカーは、それだけでドレスの見栄えが生まれる。
オパンケの長所はそれだけではない。オールソールも可能なのだ。 一般的なマッケイ製法同様、2〜3回は交換できるという。
北千住の工場経営者は少し前にオパンケの機械を購入した。実はそれまで、そのプロセスは外に出していた。
門外漢には少々ややこしい話だが、中小企業の集合体である靴産業において革の裁断からフィニッシュまで自社で賄うことのできる工場は稀であり、いわゆる“父ちゃん母ちゃん経営”の工房の存在があってはじめて靴は完成する。よって工場の力量はどのような生産ネットワークを築いているかも含めて評価される。社長が内製にシフトしたのは、つまりは廣本との付き合いに本腰を入れた証なのだった。

シューツリーを入れたくなるスニーカー

素材は、アッパーが国産のステアで、ライニングがピッグスキン。靴好きならご存じのとおり、ピッグスキンは日本が唯一自給自足できる革だ。

通気性に優れ、足あたりはすこぶるしなやか。フルライニングで、カップインソールもピッグスキンで覆われている。インソールの芯材にこそ低反発のメモリーフォームを使っているものの、ベースとなる素材、つくりはなるほど、古き良き革靴のそれだ。
ドレスシューズのように扱いたくなるスニーカー、それが「ヨーク」だ。
「うれしかったのはシューツリーを入れて休ませているカスタマーがいたことです。純正のツリーはつくらないんですか、というリクエストもありました」。
ドレスシューズのように扱いたくなるスニーカー、それが「ヨーク」だ。
シューレースはコットンの平紐を選んだ。それ以外に考えられなかったというのはもっともだろう。


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