NEWS Vol.417
2019.08.31
FASHION

ザ・ノース・フェイスが50着限定ダウンに込めた偉大なる愛の正体

「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大なる一歩である」。

白黒のテレビ画面を通じて、月から届けられたニール・アームストロングの言葉だ。アポロ11号の月面着陸からちょうど50年が経ち、今度はあの「ザ・ノース・フェイス」が偉大なる一歩を踏み出そうとしている。

ザ・ノース・フェイスがお披露目した、微生物が生み出すタンパク質素材で作られた「ムーンパーカ」。15万円/ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン 0120-307-560)

その“一歩”の結晶が、ザ・ノース・フェイスが12月12日(木)に発売する「MOON PARKA(ムーンパーカ)」だ。最大の特徴は、生地に使われている構造タンパク質素材。石油などの化石資源に頼らず、微生物による発酵プロセスで生まれるタンパク質を使った“究極のサステイナブル素材”として注目を集めている。

新素材はバイオベンチャー企業「スパイバー」との共同開発で、2015年からプロジェクトをスタートさせていたが、試行錯誤を繰り返してようやく実用化に至った。

 

「新素材の研究開発は、地球平和のための活動です」

2019年8月29日、東京・表参道でムーンパーカの発売記者会見が行われた。

開発は困難を極めた。もとは天然の構造タンパク質である「クモの糸」を人工的に再現し、アパレル製品への応用を目指してスタートした。しかしクモの糸は水に濡れると数十%も縮小する“スーパーコントラクション”という特性があり、これが衣類に用いるには致命的だった。

スパイバーの代表、関山和秀氏は言う。

「製品化までは時間がかかりました。基礎研究からやり直して、たくさんの種類のクモの遺伝子を解析し、そのメカニズムを解明しました。仮説を立て、アミノ酸配列の並び変えて、アウトドアジャケットに必要な機能を残しつつスーパーコントラクションの特性を取り除く……その実験の繰り返しでした」。

スパイバーの代表執行役、関山和秀氏。

数々のトライアンドエラーを繰り返し、ついにスーパーコントラクションの90%削減に成功。その後も分子レベルで進化に磨きをかけ、アウトドアジャケットに応用できる素材を開発した。それが今回のムーンパーカで用いられた「ブリュード・プロテイン」である。

それは微生物を介して人工的に生み出す構造タンパク質で、化石資源と違って枯渇することがない。環境に限りなく優しい、まったく新しいサステイナブル素材の誕生だ。

「地球の環境問題は、人間社会の平和に直結する問題です。気候変動や温暖化が進めば、農地が劣化して食べ物が作れなくなり、人が住める場所も減っていく。これが紛争やテロに繋がる。この製品の研究開発は、地球平和のための活動なんです」(関山氏)。

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その品質はハイエンドラインに匹敵するハイクオリティ

ゴールドウインの副社長、渡辺貴生氏。

ザ・ノース・フェイスを展開する「ゴールドウイン」は、このプロジェクトに30億円を投資した。そこには「社会や自然への負担を限りなくゼロにしたい」という想いがある。もちろん、機能面にも抜かりはない。同社の副社長、渡辺貴生氏はそのクオリティに胸を張る。

「完全防水で防水透湿性も高い。強度もあらゆるゴールドウインの厳しい基準をクリアしていて、ザ・ノース・フェイスのハイエンドライン『SUMMIT SERIES(サミットシリーズ)』と比較しても遜色ない機能を有しています」。

クリーム色の生地は無染色で、構造タンパク質の美しさをそのまま採用した。肌触りはナイロンに近く、中わたには最上級の900フィルパワーのダウンを使用。ダウンジャケットとして文句なしのスペックを備えた。

現在は量産が難しく、50着限定という縛りがある。しかし現在、スパイバーは構造タンパク質素材の生産拠点となる施設をタイに建設中で、2021年にはこうしたネックも解消できる見込みだ。

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ザ・ノース・フェイスが踏み出す“一歩”の持つ意味

タグはゴールドウインとスパイバー社のダブルネーム。

ムーンパーカというネーミングは、「困難だが、実現すれば巨大なインパクトをもたらす壮大な挑戦」という意味の「Moonshot(ムーンショット)」に由来する。そして関山氏自身、今回の挑戦を「アポロ計画」に重ねている。

「月は人類の到達した最極地であり、もっとも過酷な場所です。でも今、人類が置かれている厳しい地球環境は、まさにその極地と同じだと思うんです。今回踏み出した一歩は小さな一歩かもしれませんが、人類がよりよい社会に踏み出すための大事な一歩にしたいと思っています」。

環境問題の深刻さは年々増していて、例えば化石資源で作られるプラスチックゴミは毎年800万トン以上が海に流れ込み、2050年には地球にいるすべての魚の総量を上回るとも予測されている。いろんな企業が環境問題に取り組み始めているが、「ブリュード・プロテイン」の開発もまた、環境汚染に歯止めをかける大きな一歩となるに違いない。

ムーンパーカの裏地にデザインされた地球の写真は、実際にアポロ11号から撮影されたものだ。

ムーンパーカは現在、特設ページで販売申し込みを受付中。厳しい抽選が予想されるが、ジャケットは受付期間中、東京、札幌、仙台、福岡、大阪にあるザ・ノース・フェイスのショップを巡回して展示される。

一見の価値はあるだろう。新たなサステイナブル素材に包まれた青い地球を前に、きっと想うものもあるはずだ。

 

[問い合わせ]
ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
0120-307-560

# ザ・ノース・フェイス# サスティナブル# ダウン# ムーンパーカ
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