されど、Tシャツ。●これまで何枚着てきたか、Tシャツ。服としては何よりシンプルなつくり、Tシャツ。理想の一枚に出会ったと思ってもすぐに次が欲しくなる、Tシャツ。されどで探す、今年いちばんの、Tシャツ。
肌へ直接触れるものだから、Tシャツは気持ちいい素材に限る。うん、異論なし。でも、パリッとした感触やコシの強さに魅力を感じるという意見もある。それももちろん間違いじゃない。
じゃ、正解はなんだ? 答えを教えてもらいに行ったのは、1シーズンで6〜7種の生地のTシャツを発表するブランド、エイトン。業界屈指の生地ヲタクと言われるディレクターの久﨑康晴さんを突撃した。
久﨑康晴さん●某アパレル会社でテキスタイルの開発に携わること約20年。その間、世界中の生地屋や加工工場を回って見聞を広める。以降、さまざまなアパレルブランドのディレクションを手掛けたのち、2016年に自身のブランド、エイトンを設立。 すべてを変える、手摘みの“人”手間
—Tシャツの基本といったら、やっぱり白Tですよね。久﨑 はい。ただ、白Tといってもいろいろありますよね、素材、形、縫製……。
—実際のところ、それらでどのくらい差が出るものなんでしょう?久﨑 こちらをご覧ください。
Tシャツはエイトンの原点というべきアイテム。こちらはすべてコットン100%で作られているが、見た目の雰囲気や触感がそれぞれ異なる。—こちらは?久﨑 うち(エイトン)が出している定番の白Tです。
—3枚とも雰囲気が違いますね。ハリがあるものからトロッとしたものまで。久﨑 これら3枚はどれも綿100%。でも、糸の撚り方、編み方、仕上げを変えることでこれだけ違いが出るんです。
インド南部のタミル・ナードゥー地区の山岳部で育てられる最高級コットンの「スヴィンコットン」。こちらはその綿花。50メートル四方の小さな畑をひとつの家族が手掛けており、すべて手摘みされている。—コットンの産地も同じですか?久﨑 はい。どれもインド産のコットンを使っています。この間も現地へ行ってきましたよ。インドには最新の機械が入っていますからね、生地ヲタクにはタマリマセン(笑)。
—インドに最新が揃うとは、ちょっと意外。久﨑 日本の技術者たちが、インドの気候、インド原綿の特性を含めて考え抜いた最新の機械が揃っているんです。ここで作る綿糸はおそらく、世界でいちばん優れていると思います。
上の「スヴィンコットン」をコーミングしたもの。久﨑さんは、これらをすべてファイリングしている。—確かに、綿糸の状態でもう、ツヤツヤすべすべ。久﨑 すべて手摘みしているからでしょうね。機械だと大量に安く刈り取れますが、金属ブラシをローリングさせるのでコットンが痛んでしまうんです。そのダメージはコーティングで隠すのが一般的なんですけど、着ていくうちにやはり、それが表に出てくる。例えば黒Tだと、何度も洗ううちに部分的に白っぽくなりませんか? あれはコーティングが剥がれているからなんです。
「スヴィンコットン」を日本国内で製糸。傷ひとつないきれいな繊維へと仕上げる。無傷のため薬剤などの化学的な加工を加えなくてもご覧のように美しい光沢を放つ。—つまり、人手間(ひとてま)が大切だということですね。久﨑 そう! 何にもコーティングしてなくても、これだけのツヤが出るんです。それをうちのTシャツは、日本の職人さんに編んでもらっています。
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