されど、Tシャツ。 Vol.2
2019.08.01
FASHION

「Tシャツは着る想い出」本を出すほどTシャツが好きな男のマイベスト

されど、Tシャツ。●これまで何枚着てきたか、Tシャツ。服としては何よりシンプルなつくり、Tシャツ。理想の一枚に出会ったと思ってもすぐに次が欲しくなる、Tシャツ。されどで探す、今年いちばんの、Tシャツ。

Tシャツが好きすぎてTシャツの本を出してしまう人たちのマイベストTは、我々のTシャツ選びにおける羅針盤になり得るはず。

今回話を聞いたのは、稀少なTシャツばかりを収録した書籍『the T’s』を発刊した大阪アメリカ村のヴィンテージショップ「ピグスティ」でバイヤーを務める内田隼一さん。「最近、体がワガママになってきた」という36歳の彼が選ぶマイベストTシャツとは?

内田準一さん●大阪の人気古着店「ピグスティ」幹部。人生で初めて買った古着はチャンピオンのフットボールTシャツ。
内田隼一さん●大阪の人気古着店「ピグスティ」幹部。人生で初めて買った古着はチャンピオンのフットボールTシャツ。気になる手前の招き猫Tの正体は後半で!

Tシャツ本を出した店の男が、この日着ていたTシャツは?

ー『The T’s』に載っているヴィンテージTシャツはどうやって集めたんですか?

内田 稀少なTシャツを“売っておしまい”にしてはもったいないから、10年くらい前から「ピグスティ」ではアーカイブ化してるんです。始まりは、社長が「これは貴重やからもう売らへん!」って1930年代のアンダーウェアのTシャツを店頭から引いた一枚なんですけど、それ以来Tシャツのアーカイブ化が続いていて、気付いたらえらい数になってました。

『The T’s』は「ピグスティ」による初の書籍。
『The T’s』5800円/常時1000点をストックする大阪・アメ村の古着店「ピグスティ」による初の書籍。ジャンルにとらわれることなくTシャツの歴史を俯瞰で見た貴重な一冊。眺めているだけで楽しくなる。

ー今、どのくらいあるんですか?

内田 400枚くらいですかね。このまま保管しておけば資料としての価値は当然上がっていくんですが、数が増えると同時にみんなに見てもらえるようにしてもいいのでは? という声も出始めて。店のオープン20周年という節目に書籍化しました。

ーそれがこの『The T’s』。載せるTシャツを決めるの大変そう……。

内田 そりゃ、もう……みんな思い入れもありますしね。同時に、時系列で並べるか、カテゴリーで固めていくかといった編集も悩みました。資料としては時系列、でも、見て楽しいのはカテゴリー。どうする? みたいな。

ー最終的には?

内田 カテゴリーでまとめる方向で落ち着きました。スポーツ系とか音楽系、映画など、スタッフもそれぞれ得意分野があるので意見を出し合いながら作ったんですが、みんな言いたい放題やったな……。

ーちなみに内田さんもTシャツは好きなんですよね?

内田 もちろん! ヴィンテージばかり100枚くらい持ってます。

ーひゃ、ひゃくまい!

内田 それでも減ったんですけどね。後輩に譲ったりして。

—どんなTシャツが好みなんですか?

内田 昔は70年代のテロッとしたボディのをジャストで着るのが好きでしたが、今は体がワガママになっちゃって……少しゆったり着られるものを選んでます。

ーデザインの好みは?

内田 アート系が好きですね。

ーたとえば?

内田 有名な写真家のプリントものも好きですけど、個人的にはアーティストが有名とか無名とかはあまり関係なくて。なんて言うんやろ、無名でもグッとくるっていうか、第六感に響くっていうか……。

ー今日着ているのはハーブ・リッツ。

内田 はい。ポートレイトで有名なカリフォルニアの大物写真家です。これは彼のBACK FLIPという作品をバックプリントにしたもの。90年代のTシャツですね。これも第六感にビビッときて愛用中。

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Tシャツを何万枚と見てきた男のベスト5

ーここにヴィンテージTシャツ山盛りありますが、これぞ! な一枚は?

内田 う〜ん…悩みますね(取材はビームスでのポップアップイベントの前に実施。そこで販売する大量のヴィンテージTを前にしながら悩む)。う〜〜ん……。

ピグスティとビームスのポップアップに出されたTシャツ
ビームスのイベントのために大阪から持ち込まれたストックのほんの一部。気になるのがズラズラ。

ー選べない、という答えはナシです。

内田 はい(笑)。じゃあ、まずコレ! イエス。

ーイギリスのプログレ・バンドの。

内田 イエス! 彼らのアルバムジャケットはロジャー・ディーンがデザインの多くを手掛けていて、そのイメージが強いですよね。でも、これは違うんです。ほんまに「YES」と頷いている仕草を表現したアートワークが素晴らしい。「(c)1987 YES」ってコピーライトが入ってるんでオフィシャルなんかな。

ー確かに。バンドTなのにアート的要素も感じます。

内田 昔は「好きなバンド」ってだけで着てたかもしれませんが、大人になったら「いいデザイン」でないとなかなか着れないですからね。

ーつづいては?

内田 ニール・ジョーダン監督の映画『クライング・ゲーム』の一枚も気に入っています。彼の映画はとにかく素晴らしいんです。序盤は伏線の連続で「どういうこと?」ってなるんですけど、エンディングに向けてそれがどんどん繋がっていって最後に「こういうことやったんか!」ってもう大興奮で……

ー話が止まらないくらい好きなんですね。

内田 (笑)。もともとニール・ジョーダンの映画『ギャンブル・プレイ』を観て、「この人の映画はおもろい!」とファンになりました。

ー映画への興味がTシャツ選びにも影響を。

内田 そうです。これが入荷したとき「ヤバい!」と思ってすぐに自分用で買いましたもん(笑)。アートワークも素晴らしいですし、なかなかお目にかかれるシロモノではありませんよ。4〜5万円くらいの価値はあると思います。

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ーなるほど。ほかには?

内田 スケートTも熱狂者なファンが多くて面白いですよね。これはゾーラックのマルチプリントで、スラッシャーのロゴをパロってたりするんです。試し刷りしたものかもしれないんですが、こういう一点モノ感のあるTシャツも大好物。

ースゴい! プリントも重なったり脇に食い込んだり、自由ですね。

内田 でも、ちゃんと作品としても成立してる。唯一無二っすよね。

ー確かに。ちなみに『The T’s』の表紙はソニック・ユースですね。

内田 これも大人気ですよね。マイク・ケリーのぬいぐるみアート。表紙とは色違いのグリーンも好きなんですよね。ビームスでのポップアップにはこちらを投入しました!

ーちなみに……その隣にある“招き猫”はなんですか?

内田 あ、コレ? これは「ピグスティ」の“おまもり”で、アメ村店に飾ってるやつです。

ーへぇ。

内田 いろんな人に「譲って!」と言われるんですが、おまもりですから「譲れません!」(※ビームスでのポップアップでストックの1枚を販売した)。でも、Tシャツってそういう個人的な想いもたっぷり込められてますよね。マイ・ベストを選んでと言われたら、結局は想い出の強さが指標になるのかもしれません。

ー話を聞いていると、どんどんTシャツが欲しくなっちゃいますね。

内田 情報が溢れている世の中で、誰々が着てるとか、どこどこのブランドだからというのだけが良し悪しの判断材料になっちゃったら悲しいですよね。そういうのにとらわれず「好きやから!」という理由だけで誰もが選べるのがTシャツだと思います。

 

もういい年だからと周りを気にしながら服を選ぶことも増えてきたオーシャンズ世代。だからこそ、最後の内田さんの言葉が身に沁みる。されどで選ぶTシャツならば、自分本位で選ぶのもいいかもね。

 

【問い合わせ】
ピグスティ アメ村店
06-6251-0289

www.pigsty1999.com

 

菊地 亮=取材・文

# Tシャツ# ヴィンテージ
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