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2019.05.17

ファッション

ついにベールを脱ぐ、お騒がせモデル「蟹太郎」の正体と全身コーディネイト

「部長びんびん“着回し”裏話」●俳優の平山祐介さんが商社勤務の“ユースケ部長”に扮し、ドラマチックなファッションストーリーを展開する「部長びんびん“着回し”物語」。ここでは、本誌では描かれなかった3つの裏話をお届け。ラストは、Season3のハッピーエンド(?)の舞台裏。
(これまでのあらすじ)今季より亞藤忠がマスターライセンスを獲得したイタリアブランドのブランディング全権を託されたユースケ。日本での本格ローンチに向け、その一環としてイメージビジュアルの制作を行うことになったのだが、モデルとして起用した俳優・越中島☆蟹太郎が撮影直前に海外で失踪。一時は撮影中止の危機に陥ったが、前々日にようやく本人と連絡がつき、何とか撮影に漕ぎ着けたのだが……。
スタジオに姿を現した蟹太郎は、サングラスを掛けたまま、「ウィ~ッス☆」という挨拶だけをして、何事もなかったかのように楽屋へ入って行った。その姿を見たユースケ部長は、内心ムッとする。『グラサンくらい外さんかい! これでいい加減な仕事しやがったら、タダじゃおかねえぞ!』と心の中でつぶやき、拳を握り締めた。
「チャ~ッス」。ヘアメイクと着替えを終えた蟹太郎は気だるそうに楽屋から出てきた。『何がチャ~スだ! コンニャロ!』。ユースケは血が滲むほど拳を握り締めた。

しかし、その怒りは撮影が始まると雲散霧消した。スタジオの照明が消えた瞬間、蟹太郎の全身に稲妻がほとばしったかのように見えた。その存在感たるや、まるで『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタさながら。キレッキレのポーズを次々と披露する。
「蟹太郎、サイコーだね!」。カメラマンも興奮してシャッターを切り続ける。
「コ、コイツ、やはり本物だ!」。ユースケも舌を巻く。
シャツ2万9000円/マリオ ムスカリエッロ(インテレプレ 03-6804-3861)、パンツ3万5000円/エンジニアド ガーメンツ×ビームス プラス(ビームス プラス 原宿 03-3746-5851)、靴10万円/ジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店 03-6805-1691)、サングラス3万8000円/ネイティブサンズ(コンティニュエ 03-3792-8978)
なかでもユースケの心を惹きつけたのが、この一枚だ。ファンキーなポーズもさることながら、コーディネイトもまた秀逸。トップスは黒のリネンシャツ。プルオーバーが今の気分にしっくりくる。
そしてパンツはカーキの軍パン。アメリカ軍のベイカーズパンツをベースにしながらも、かすかにテーパードしたスリムなシルエットや微光沢のあるコットン生地が大人の品を薫らせる。足元はスニーカーではなく、あえてのローファーで。それもボリューム感のあるトラッドなローファーを合わせることで、全体の印象が引き締まり、シックな印象にまとまっている。
撮影が終わり、モニターで写真をチェックしてみると、スタッフ全員が笑顔を浮かべるほどの最高の出来栄え。撮影中、ヘアメイクさんから失踪の理由(スマホの設定を機内モードにしたまま観光巡りをしていただけ)を聞いて再びイラっとしたユースケも、写真を見て思わずガッツポーズ。

蟹太郎もモニターを覗き込んで、「どれどれ? うーん、イイね!」とひと言。が、その後、「ん? ただ、照明が暗くない? 大丈夫?」と怪訝な表情を浮かべる。
「……そりゃお前がずっとグラサン掛けてるからやないか~い!」とユースケは思わずツッコんだ。
 
武内雅英=スタイリング MASAYUKI(The VOICE)=ヘアメイク 押条良太(押条事務所)=文


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