正しいメンテと賢い収納術【冬服編】●4月に雪が降る異常事態を終え、そろそろアウターをクローゼットにしまい込んでも良さそう。でもその前に、ちゃんとメンテした? 次の冬も仲良くするための適切なケアと保管方法についてプロに聞いてきた。
チェスターフィールドもステンカラーも、寒い時季はON・OFF兼用で活躍したウールコート。
そのポテンシャルが来季も約束されているかといえば、そうではない。
活躍したぶん、疲れは溜まっている。それを癒やすテクニックを、洗濯のプロに尋ねた。
ウールコートの最大の敵は虫である
「ウールでいちばん厄介なのは虫食いです。これは高級な柔らかいウール生地に限ったことじゃありません。ヴィンテージのピーコートですらヤツらは食いますから」。
こう話すのは、中目黒のヴィンテージショップ・ハレル代表の加瀬さん。高級ブランドの上質なものからミリタリー系の屈強なものまで、あらゆるウールコートひと通り見てきたから言える言葉である。
加瀬善隆さん●「ハレル」代表。10代で古着にハマり、ヴィンテージショップで働き始める。その後、渋カジ世代にもお馴染みのセレクトショップで買い付けなどに携わったのちに独立。2014年、中目黒の路地裏で「ハレル」を開店する。造詣の深さには業界からの信頼も厚い。
ほかにも加瀬さんがバイイングの際にチェックするウールコートのウィークポイントはこんなところ。
「首元や袖口、裾です。磨耗してウールが薄くなっていることがよくあるんですよ。天然繊維では絶対に気にするポイントですけど、ウールは特にダメージが現れやすい。なので、ケアもそこを重点的に行うといいでしょう」。
意外とカンタン、ウールコートの汚れ落とし
そこで、ウールコートのケア方法を聞くべく、ファッションのプロが頼るクリーニングの牙城・レジュイールの門をくぐる。
【1】1にブラシ、2にブラシ、3・4がなくて、5にブラシ
「まず、普段からのブラッシングがすごく大切です。たかがブラッシングと思われるかもしれませんが、ウールは目に見えてなくても細かいホコリや汚れがたくさんついているんです」。
こう話し始めたのは、レジュイールの榎本裕介さん。さっそく持ち込んだコートをブラッシングしてくれる。
「ブラシをかけることによってホコリや汚れが落ちて生地が呼吸できるようになるし、毛並みも整います。衣替えの収納前と言わず、常にやっておくと長く着られますよ」。
なんとなく形式的な手入れに見えてしまいがちなブラッシングにも、そんな大きな効果があったんですね。
【2】ゴシゴシではなくポンポン拭く
では、加瀬さんが言っていた襟や袖口はどのようにケアすればいいのだろう?
「濡らしたタオルを固く絞って拭いてください。ポイントは、ポンポン叩くイメージで拭くことです」。
そう、ゴシゴシではなくポンポン。こすってはイケナイ。こするとウールの風合いが変わって質感の良さが損なわれてしまうことがある。
「裏地も同じように濡れ拭きをオススメします。特に脇などは汗をすごく吸っているのでしっかりケアしてください」。
脱いだ服を半年間ほったらかしにしておいたらどうなるか……と考えたら、こうしたメンテナンスがいかに大切かわかるだろう。
【3】防虫剤は上に置け! の意味
そこまでメンテナンスしてしっかり乾かしたら、あとは次のシーズンに備えてクローゼットで眠らせてあげよう。チェスターにダッフル、ステンカラー……どんなウールコートもつくりは立体的なので、すべて保管はラックに吊るすのが良いとのこと。
「使うハンガーは、セットインスリーブのコートならジャストな肩幅
のものを選んでください。あまり狭くても広くても、肩のバランスが崩れやすくなってしまうので」。
そして、忘れちゃいけない虫食い対策。
「防虫剤はもちろん必須です。が、置くタイプではなく、ハンガーに掛けて使うタイプの方がコートのような長モノには向いています。注意してほしいのが、吊り下げるタイプの防虫剤の効果は上から下に降りていくようになっているので、下に置くとほとんど効果が期待できないという点。これ、意外と知らない人が多いので気を付けてくださいね。穴が開いてからじゃ遅いので」。
これで、ウールコートの安眠準備は完成。来年も颯爽と羽織れることを考えれば、このくらいの手間、惜しくないでしょ?
Rejouir(レジュイール)●約35年の歴史を持ち、現在では世界的メゾンからのクリーニング依頼も途絶えない南麻布の高級クリーニング店。熟練した職人たちがアイテムごとに最適な処理を見極めて、1点1点に膨大な手間をかけながらケアしてくれる。値段は決して安くはないが、それ以上の満足感と結果が得られるはず。
東京都港区南麻布1-5-18 FRビル 03-5730-7888 営業:9:00〜18:00 日・月曜、祝日休み