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2019.01.19

ファッション

「ヒマラヤンパーカ」で知る、ザ・ノース・フェイスが最高“峰”たる由縁

アウトドアウェアの中で名品と呼ばれるアウターは少なくないし、人気ブランドからもさまざまな高性能アウターがリリースされている。でも、我々大人がホントに欲しいのは、その背景もマチガイのない、本当に価値ある1着。
傑作と呼ばれるアイテムの真価を知ったとき、きっとそのアウターは心地良さだけでなく、高揚感も与えてくれるのだ。

ザ・ノース・フェイスの
「ヒマラヤンパーカ」

酸素は海抜ゼロ地点の約3分の1で、揚力を得るために必要な空気が少なくなるためヘリも飛べない。瞬間最大風速は300m/s以上になり、気温は最低でマイナス73℃を記録し、そこでかつて命を落とした300名以上の亡骸は回収されることも腐ることすらも叶わず放置され続けているという、想像を絶する地上の異空間。

ヒマラヤ登頂を目指す人々が通らねばならない標高8000m以上という世界が、デスゾーンと呼ばれる所以だ。そこに3度登頂を果たした日本人が登山家の三浦雄一郎さんで、そんな彼のヒマラヤ登頂を支えるという、大きな使命を負ったのがザ・ノース・フェイスの「ヒマラヤンパーカ」だ。
「ヒマラヤンパーカ」 8万2000円/ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン 0120-307-560)
「ヒマラヤンパーカ」 8万2000円/ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン 0120-307-560)
この超ヘビーデューティな背景を持ったジャケットを、ザ・ノース・フェイスPRの鰐渕航さんはこう話す。
「ありがたいことに、最近ではタウンユースでザ・ノース・フェイスのジャケットを着用されている方々が多くなりましたが、一方で僕たちをファッションブランド と捉えている方が増えたような気がしています。ですが、ザ・ノース・フェイス はアウトドアブランドであり、アルパインブランドです。
8000m峰やマイナス40℃の極地に挑戦する人たちの活動をサポートするため、常に画期的で先端的なテクノロジーを駆使したエクスペディションウェアを追求し、展開してきました。ヒマラヤンパーカはその中でも、コアで最新のテクノロジーを結集させている代表作なんです」。(鰐渕さん、※以下カッコ内はすべて。)
三浦雄一郎さん、3回目のエベレスト登頂時。80歳のときの一枚。 写真提供:ミウラ・ドルフィンズ
三浦雄一郎さん、3回目のエベレスト登頂時。80歳のときの一枚。 ※写真提供:ミウラ・ドルフィンズ
吹きすさぶ強風から身を守るために先日紹介したゴア ウィンドストッパーを採用し、動きやすさと丈夫さを兼ね備えた30&40デニールの生地を組み合わせたナイロンシェル。
そして、ふんだんにパッキングされたのは人体から出る遠赤外線の輻射熱によって保温力を高めてくれる、撥水加工された900フィルパワーの光電子ダウン。
重いザックを背負うためのショルダー部分の切り替えや、三浦さんをはじめとするアスリートの実際の体験に基づきながら、改良を重ねた数々のディテールは、結果としてトレンドのストリートライクなスタイルにマッチするデザインへと結びついている。
そのため街中での愛用者が増えるのも無理はないが、このアイテムの産まれは確実に平地ではないのだ。
「アイテム自体は継続してリリースされていて、もちろん一般の方もお買い求めいただけるんですが、私の周りではあまりタウンユースしている人はいないですかね。仕様も、三浦さんの『低酸素状態の高所極地では細かい仕様や複雑な作り込みはかえって使いにくく、操作しにくい』という意見を受けて、この秋冬からポケット位置やフロントジップなどがよりシンプルにアップテートされるなど、プロ目線の機能を追求しています」。
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止水ジップを採用した、胸のフロントポケット。ロゴ下に見えるホールは、トランシーバーのアンテナを出すためのもの。胸にしまう理由は、極寒の環境下では機械の温度が下がりすぎると機能しなくなるためだという。
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前立てはフラップが4重に積層する構造。風の侵入による体温の低下を防ぐためのディテールだ。全体にもゴア ウインドストッパーを採用して防風性を高めているが、防水仕様ではない。これは、高い標高では、雨はほぼ雪に変わってしまうため。
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袖口はインナーやグローブに合わせて隙間を作らないよう調節できるベルクロ仕様というだけでなく、内側の手首部分にギャザーが入っており、風や雪の侵入をしっかり防いでくれる。
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「最大の目的である、“身体を冷やさない”ということには徹底してこだわっています。900フィルパワーで水濡れにも強い光電子ダウンを使っており、中のダウンを封入する構造も綿寄りを防ぐ構造になっていて、コールドスポットをつくらないための工夫がいくつもなされています。こうしたこだわりがやっぱりザ・ノース・フェイスらしさじゃないかと、僕は思うんです」。
もちろん、その圧倒的な機能性と、機能を背景に持ったデザイン性を日常生活で享受するのも楽しみ方のひとつ。
だけど忘れないでほしい。この「ヒマラヤンパーカ」が、最高峰を目指すチャレンジ精神から、生まれていることを。
 
[取材協力]
ゴールドウイン
0120-307-560
 
岡部東京=写真(静物) 今野 壘=編集・文


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