デニムが労働着からファッションに昇格したのは、第2次世界大戦後のこと。それ以来、世界中のスター、若者たちが、デニムを魅力的にはきこなしてきた。その伝説のデニムスタイルには、今見ても格好良くなるヒントがいっぱいだ!
1960年代と’80年代の日本のスター歌手に学ぶ
ヴィンテージ×オーバーサイズミックス
岡村靖幸が’80年代に生み落とした音楽は、不思議と古くならない。その圧倒的に個性的な音とダンスとファッションは、今改めて再評価されていて、ミレニアルズの間でも人気が高まっている。
数ある名作のなかから今回ピックアップするのは、アニメ「シティーハンター2」のエンディングテーマソングに採用された「スーパーガール」のミュージックビデオ。このときの岡村ちゃんのデニムのセットアップが、最高に“ダサカッコいい”のだ。
「TEXAS」の文字とウエスタンなイラストが描かれたビッグサイズのGジャンは、新興宗教の教祖でデザイナーとしても活動した鬼才、トニー・アラモが手掛けたもの。
さまざまな都市の風景をエアブラシとスパンコールで描いたこのGジャンは、時のアメリカのセレブがこぞって着用し、現在も古着市場で高い人気を誇る。この伝説のGジャンを真似するのは難度が高いが、リアルエイティーズなオーバーサイズのGジャンの着こなしは、まさに今の気分。
それより遡ること約20年前の’66年、ザ・ビートルズは日本武道館で来日公演を行った。その前座を担ったのが、内田裕也、ザ・ドリフターズらジャパンロックの黎明期を作った猛者たち。多くのメンバーがザ・ビートルズっぽいイギリス的なスーツでステージに上がるなかで、ひと際異彩を放っていたのが尾藤イサオ。
彼が着ていたのは、リーバイスのセカンドのGジャンとデニム(おそらくダブルエックス)のセットアップ。おそらく、ヴィンテージデニムでステージに上がった最初の日本人だろう。「あしたのジョー」で「るるるるー♪」と歌う前の尾藤さんは、音も装いも最高にロック!そんなヴィンテージデニムの“粋”も取り入れたい。
時代を超えたデニムのセットアップ
上はホワイトのビッグシルエットカバーオールで、下はテーパードの効いたブラックデニムという洗練された色合わせのデニム・オン・デニム。
上下ともにウエストオーバーオールズのものを採用したのは、ヴィンテージのディテールを現代的にアレンジさせたら天下一品の日本ブランドだから。’80年代の岡村ちゃんのオーバーサイズと、’60年代の尾藤さんのヴィンテージのこなしにインスパイアされたユニークなデニムセットアップだ。
今をときめくダブレットがトニー・アラモにオマージュ!?岡村ちゃんが着ていたトニー・アラモのGジャンは、テキサス以外にもニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、サントロペなどのバージョンが存在する。なかでも名作といわれているのが、パープルを基調としたニューヨーク。
2018年度のLVMHプライズを受賞し、世界的に注目されているダブレットのライダーズは、この“トニー・ニューヨーク”を再現し、フリンジを付けてアレンジした。
鈴木泰之=写真 柴山陽平=スタイリング 境 陽子=イラスト 増田海治郎=文