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2021.04.14

F1由来の技術を搭載。元レースクイーン、現レーサーが開発した「GOGO!」の可能性

「Mobilityレボリューション」とは……
一見、昭和の時代に百貨店の屋上で乗れた乗り物みたいなノスタルジー感すら漂う。
思わず100円玉を入れる口を探したくなるが、実はこの乗り物、F1由来の技術が多く搭載された凄いヤツなのだ。
1回の充電で30km走行可能。オプションで60km走れるバッテリーも用意されている。
名前もレトロ感いっぱいの「GOGO!」。
ミニカー登録となる電動バイクで、原チャリとも電動キックボードとも違って、ヘルメットが不要。30km/hで公道を走れて、普通運転免許が必要になる。
標準モデルはパイプフレーム構造。そこにCFRPパネルが組み合わされている。
最大の特徴は、このダサカワイイボディに取り入れられた、数々の“カワイくない”技術。
まず前2輪・後1輪のうち、前2輪のサスペンションにダブルウィッシュボーン形式が採用されていることだ。
ダブルウィッシュボーンはF1マシンをはじめ高級スポーツカーや、高級車を中心に採用されているサスペンション形式で、路面を捉えるグリップ力が安定し、乗り心地が良くなる。
しかしコストが高く、軽自動車にはまず採用されない。そんな贅沢な足回りが採り入れられている。
カーボンフレームを採用したモデルはイスを取り外して、立った状態でもヘルメット不要で走行できる。
さらにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)など軽量素材が用いられ、標準モデルで重量は23〜25kg。力の弱い人でもボディの後ろを持ち上げて簡単に方向を変えることができる程度の重さだ。
ちなみにカーボンフレームが採用された上級モデルなら18.5kg。
イスを取り外せるカーボンフレームモデルは折り畳みも可能。車にも簡単に積める。
ダブルウィッシュボーンにCFRP、カーボンフレームとレース由来のスポーツカーみたいな技術が盛り込まれているのは、開発者が井原慶子さんだから。
井原さんは、レースクイーンからレーサーに転身し、国内で活躍後、イギリスF3や世界耐久選手権(WEC)に日本人女性で初めてフル参戦。2014年にはル・マン24時間耐久レースで日本人最高の総合14位で完走を果たした、今も現役で活躍するプロドライバーだ。
ダブルウィッシュボーン式サスペンションのおかげで、バイクのようにリーンしても安定して走行できる。
そんな彼女が、昨年のコロナ禍のGW中に、人出の絶えた地元(愛知県春日井市)の商店街の店主たちが「デリバリーしたいけど車を買うのはなぁ。バイク(二輪)は運転が不安だし」と悩んでいることを知り、GOGO!の構想を思いつく。
車庫証明が不要で、ヘルメットも被らなくてよく、誰でも気軽に乗れる乗り物。
バッテリーは取り外して家の中で充電できる。空の状態から満充電充まで約3時間。
この考えに共感した元日立製作所のエンジニアなど有志が集まり、思いつきから1年も経たずに実現したというわけだ。
さらに春日井市と提携した地域ECモール構築事業も既にスタートしている。商店街にある店舗のデリバリーや店舗予約をスマートフォンアプリで行えるほか、今後はGOGO!のシェアリングサービスや、地域通貨との融合も図ることを目指している。
つまり地域経済の活性化や、地域の移動の足となる可能性を秘めているってわけ。コロナ禍で、いやコロナ以前から、人口減少や高齢化などで悲鳴をあげている地方の商店街は数多いだけに、春日井市だけでなく日本各地に広まる可能性は十分あるのだ。
シート後ろにカゴを付けたタイプや、デリバリーバッグを備えたタイプがあるほか、カラーバリエーションも豊富。オリジナルラッピングにも対応している。価格は26万1800円〜。
この“ダサカワイイ”デザインに関しては、もともとコロナ禍対策だったため開発を急ぎ、しかも同時に春日井市ともプロジェクトを進めることになったため、プロダクトデザイナーを入れる暇がなかったとのこと。
だから今後のデザインや、ボディバリエーションに関しては伸びしろがまだ十分ある。GOGO!の描くビジョンに乗った!と手を挙げるデザイナーだって出てきそうだ。ダサカワちゃんの、そんな明るい未来に期待したい。
 
[問い合わせ]
フューチャー
www.futuremobility.fun
「Mobilityレボリューション」とは……
コロナ禍による新生活様式。「2030年までに新規発売の車をすべて電動に」という政府発表。2021年は移動手段に革命が起こる年かもしれない。ひとりで、複数人で、街乗りで、遊びで。さまざまなジャンルや場所で登場している“新たな選択肢”を紹介しよう。
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籠島康弘=文


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