2021.04.27
CAR

車中泊に特化したモデルが好調、差別化が課題。普通な見た目のキャンピングカーが人気の理由

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

いわゆる車中泊仕様と呼ばれる、普通の見た目が特徴のキャンピングカーに注目(筆者撮影)

一般的なキャンピングカーといえば、テーブルやキッチン、ソファやベッドなどが装備され、車体のキャビン部が大きく、背が高いクルマをイメージする人も多いだろう。だが、最近人気なのは、一見して外観がノーマルと変わらないタイプだ。

例えば、ベース車両がハイエースなどの場合、見た目は普通のワンボックスカーで、ノーマルと同じ4ナンバー車のボディサイズを維持する。そのぶん、装備は本格的なキャンピングカーほど豪華ではなく、荷台部分にベッド用マットを載せただけというタイプも多い。だが、実際にこういったお手軽なモデルが売れているのだ。

近年、需要が伸びているキャンピングカーの中でも、なぜ一見「普通」のタイプに人気が集まっているのだろうか。ジャパンキャンピングカーショー2021(4月2~4日・幕張メッセ)に出展されたモデルを例に、その理由を検証してみる。

日産自動車はセレナ・キャラバン・バネットを展示

日産自動車「セレナ」の車中泊仕様(筆者撮影)

日産自動車は、ミニバンの「セレナ」、商用車の「NV350キャラバン」や「NV200バネット」といった3モデルをベースにした「マルチベッド」と呼ばれる仕様をブース展示した。

いずれも車体や外装はノーマルのままとし、荷台スペースにベッドマットを装備することで、アウトドアで橫になったり、就寝したりすることに特化した、いわゆる「車中泊仕様」だ。

セレナのマルチベッドの内装(筆者撮影)

セレナやキャラバンには、3列シート仕様もあるが、あえて2列シート仕様とし、荷台部分の使い勝手を重視している。取り外し可能なベッドマットは、3モデルともに2列目シートをリクライニングさせて取り付ける。ベッドが不要な場合には、キャンプ道具はもちろん、釣りやカヌーなどのアウトドアスポーツ用品など、さまざまなアイテムを積載することも可能だ。

就寝人数はいずれも大人2名だが、キャラバンやセレナでは、夫婦2名の間に小さな子供1名も橫になれる余裕があり、ファミリー層を意識したスペース設定となっている。

NV350キャラバン マルチベッドの内外装(筆者撮影)

これら仕様のユーザーについて、日産自動車の担当者は「アウトドア初心者の方が多いですね」という。本格的なキャンピングカーまでは必要ないけれど、キャンプや車中泊を始めたいというユーザーが大半を占めているようだ。近年のアウトドアブームにより、車中泊仕様車の需要が増えたことが、3モデルのリリースを後押しした。

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NV200バネット マルチベッドの内外装(筆者撮影)

購入者の多くは、東京など都市部の在住者がメインだ。同担当者によると、「ご自宅周辺に大型のキャンピングカーが停められる広さの駐車場がないとか、周辺の道路が狭いといった理由で、ご購入いただくケースも多いですね」という。

また、こういった標準サイズのボディであれば車高が2m以内に収まるため、高さ制限があるショッピングセンターの屋内駐車場に駐車することも可能だ。「お買い物や通勤、お仕事など、日常の足として使えることも、ご好評をいただいている理由です」(日産担当者談)という。

ちなみに、女性でも運転しやすいセレナの車中泊仕様は、ファミリー層に人気だ。平日に主婦が小さい子供を送迎したり、近所のスーパーへ出かけたりといった使い方もできるからだ。また、キャラバンは仕事にも使えるということで自営業者、バネットは最近話題のソロキャンプを楽しむ若い世代にもユーザーが多いという。

専門メーカー「ダイレクトカーズ」も車中泊仕様に参入

キャンピングカーの製造・販売を手掛けるダイレクトカーズの車中泊仕様車「アウトギア」(筆者撮影)

外観がノーマルと変わらない車中泊仕様車に参入するのは、自動車メーカーだけではない。例えば、三重県でキャンピングカーの製造・販売を手掛けるダイレクトカーズも荷台スペースにベッドマットを配置した新作「アウトギア」を出展。

同社は、トラックやマイクロバスなどをベースに、車体の運転席部分のみを残し、ほとんどの箇所にオリジナルのキャビンを架装する「キャブコン(キャブコンバージョンの略)」と呼ばれる本格仕様車も手掛ける老舗メーカーだ。

また、ワンボックスカーやミニバンをベースに、リビングやキッチン、ベッドなどを架装する「バンコン(バンコンバージョンの略)」と呼ばれる仕様にも定評がある。

ハイエースの標準ボディをベースにした新作は、外装サイズはそのままに、2列シート仕様とし、ベッドの台座と大人2名が橫になれるフラットなベッドマットを装備する。

荷室のベッドマットはアレンジが可能で、左側に跳ね上げて固定すれば大きな荷物が積載できるカーゴモード、2分割にして後部部分のみ跳ね上げればリビング的に使える1/2モードなど、好みや使う状況に応じて変更ができる。

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アウトギアの内装(筆者撮影)

同社製キャンピングカーにおけるアウトギアの位置付けについて、ダイレクトカーズの担当者は「エントリーモデル」だという。

メインターゲットは、日産自動車と同様に、ブームに乗ってキャンプや車中泊などを始めたキャンピングカー初心者だ。新規顧客を増やすことで、将来的にそれらユーザーがステップアップすれば、同社が長年製作してきた本格的キャンピングカーの需要増にも繫がるといった目算もある。

キャンピングカーの出荷台数

会場には、これら以外にもさまざまな標準ボディサイズのキャンピングカーが展示され、見た目は「普通」の仕様に対する需要がいかに高まっているかがわかる。これについては、タイプ別キャンピングカー出荷台数のデータを見ても、その人気ぶりは明らかだ。

キャピングカーの業界団体「日本RV協会」が2020年7月に発表した「キャンピングカー白書2020」によると、2019年に同協会に所属するキャンピングカーメーカーが生産したキャンピングカーの出荷台数は合計6445台だった。ちなみに、この台数は前年度比114.3%の増加で、販売総額は526億2577万円にものぼる。

次に、総出荷台数の内訳を見てみると、1位「8ナンバー以外」(2400台)、2位「バンコン」(2069台)、3位「キャブコン」(1819台)、4位「バスコン」(85台)、5位「キャンピングトレーラー」(46台)、6位「そのほか」(26台)となっている。

ここでいう「8ナンバー以外」というのが、見た目が普通のキャンピングカーを指す。例えばワンボックスカーをベースに、ボディサイズは純正のままで乗車シートの配列なども大きく変更していなければ、構造変更届が不要となり8ナンバーにはならない。

対して、バンコンやキャブコン、マイクロバスなどをベースとするバスコンといったタイプは、車体にキャビンを架装し、全幅や全高を変えたり、シートの数や配列を変更したりするため、ほとんどの場合が8ナンバー登録となる。

つまり、「8ナンバー以外」が1位ということは、外装サイズを変更せず、車内にベッドだけを設置しただけの車中泊仕様が、最も多く出荷されたことを意味する。

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NV350キャラバンの内装。アレンジを変えればリビングにもなる(筆者撮影)

見た目が普通のキャンピングカーは、比較的リーズナブルに購入できる点も魅力だ。例えば、日産自動車のNV350キャラバン マルチベッドは、価格(税込)が340万3400円~432万3000円。専門メーカーであるダイレクトカーズが製作した前述のアウトギアでも、展示車両の場合で価格(税込)449万1400円だ。

対して、同クラスのバンコンで常設ベッドやリビング、キッチンといった豪華装備が付くと、なかには700万円や800万円以上するモデルもある。とにかく「寝るだけでいい」と割り切れば、車中泊仕様は断然安く購入できるのだ。

ほかにも例えば、8ナンバー車は、特殊用途自動車に分類されるため、任意保険を取り扱う会社が少なく加入しづらい。また、保険料が割高なケースが多いなど、保険の面では課題も多い。その点、3ナンバーや4ナンバーのままで乗ることができる車中泊仕様であれば、任意保険で困ることはほとんどない。

以上のような要素も、アウトドアブームで新規参入した「キャンピングカー初心者」にとってはハードルが低く、購入しやすい理由なのだろう。最近では、ミニバンやワンボックスカーだけでなく、軽自動車をベースとしたいわゆる「軽キャンピングカー」でも、見た目が「普通」のモデルが増えるなど、当ジャンルへ参入するメーカーは多い。

岡モータースが出展していた軽自動車のキャンピングカー仕様(筆者撮影)

今後の車中泊仕様は差別化が課題

日産ピーズフィールドクラフトが製作した「セレナP-SV」(筆者撮影)

ただし、複数の業者が他社モデルとの「差別化」に課題を抱えているようだ。外装がほぼノーマルのため、独自性が出しにくいのだ。そのため、例えば、日産ピーズフィールドクラフトが製作した「セレナP-SV」のように、ルーフが上がり就寝スペースを増やすポップアップルーフを採用するモデルも増えている。

セレナをベースにしたこのモデルは、3列シート仕様のままで、車内に大人2名が橫になれるベッドを装備(オプション)。加えて、停車時に上げることができるルーフを設け、その空間もベッドスペースにすることで合計4名の就寝が可能となる。日産自動車のマルチベッドよりも、より大人数での旅を楽しめるのだ。

しかも、全長や全幅はベースグレード「ハイウェイスターV(2WDガソリン車)」のノーマルとまったく同じ。ルーフを閉じた際の全高のみ1980mmと純正より115mm高いが、その程度の車高であれば普段使いでも十分に使える。なお、税込価格は展示車の仕様で524万4800円だ。

キャンピングカー業界は、元々の市場はさほど大きくなかったものの、前述のとおり、2019年に販売総額が500億円を突破した。2017年の424億6975万円に対し、2年で100億円以上の増加だ。

こうした躍進の背景には、アウトドアブームに加え、今回紹介したような車中泊に特化したモデルの売れ行きが好調であることも要因だろう。差別化などの課題もあるが、逆にそういった競争が、さらなる品質の向上に繫がることに期待したい。

車中泊仕様のキャンピングカーをチェック!(筆者撮影)

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日産自動車「セレナ マルチベッド」
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日産自動車「セレナ マルチベッド」
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日産自動車「セレナ マルチベッド」
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日産自動車「セレナ マルチベッド」
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日産自動車「セレナ マルチベッド」
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日産自動車「NV350キャラバン マルチベッド」
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日産自動車「NV350キャラバン マルチベッド」
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日産自動車「NV350キャラバン マルチベッド」
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ダイレクトカーズ「アウトギア」
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日産ピーズフィールドクラフト「セレナP-SV」
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日産ピーズフィールドクラフト「セレナP-SV」
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岡モータース「ミニチュアクルーズ」
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岡モータース「ミニチュアクルーズ」
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平塚直樹:ライター&エディター
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記事提供:東洋経済ONLINE

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