今や欧州メーカーのどこもかしこも主力車種はSUVである。と、SUVの話をするたびに思わず同じようなことから書き始めてしまうほど、SUVは世界的に市民権を得ている。 とうとう、先日公開されたX7によって、さらに選択の幅を広げたXシリーズだが、各国の排ガス規制などによってガソリン車が造りづらい世の中になってきている。 他方で、BMWは’13年に、電気自動車の「iシリーズ」をほかの主要メーカーに先駆けて市場に投下している。 レンジローバーの件然り、先見の明に感心せざるを得ない。次にBMWが推し進めていくのは、「Xシリーズ」と「iシリーズ」のクロスオーバーに当たる「iXシリーズ」であることは、ほぼ間違いないだろう。 BMW iX3 北京モーターショー2018で公開された、EV版SAVのコンセプトモデル。満充電時での最大航続距離は400kmと予想されており、コミューターとして使うくらいであれば十二分の数値だろう。市販車について、まだ明らかになっていないことは多いが、発売は2020年の予定と公表されている。iX3の充電ポートはフロント左タイヤのフェンダーアーチ脇に設置される。BMWは2025年までに25車種の電動車両を市場投入する計画を立てており、そのうち12車種がEV、13車種がPHVやHVになると見込んでいる。iX3が街を颯爽と走る姿を、近い将来で見られることを期待しつつ、最新のXシリーズを紹介したい。
バリエーション豊富な「Xシリーズ」全ラインナップ
BMW X1 エントリーモデルと思って侮ってはならない。インテリジェント4WDシステムのxDriveを標準装備しているため、あらゆる路面状況にしっかりと対応できる。420万円〜。 BMW X2 2018年に発売され、アグレッシブなデザインが話題を集めた1台。オプションのMスポーツ・サスペンションを装備すれば、より精度が高いハンドリングが実現する。436万円〜。 BMW X3 リアスポイラーやフロントエプロンのエアカーテンなど、細部にわたって空力性能を追求。SUVらしいベーシックなフォルムながら、空力性能を示すCd値は0.29を記録。654万円〜。 BMW X4 2018年9月に発売されたばかりの2代目X4。ボディが大型化した一方で徹底した軽量化が行われ、先代比較で約50kg軽くなっている。最もパワフルなエンジンを積んだM40iは977万円〜。ほかにも、2L 直4ターボエンジンを搭載するX4「xDrive 30i」と「xDrive 30i Mスポーツ」がラインナップされている。 BMW X5 Xシリーズを象徴するモデルの3代目。低燃費に貢献しながら、モーター駆動も楽しめるeDriveシステムを採用したPHEVもラインナップされている。920万円〜。 BMW X6 「SUV+クーペ」のボディが特徴。現在、他社も積極的に取り組んでいるデザインだが、源流はこのX6である。直6に加え、V8エンジンを積むグレードも用意する。979万円〜。 BMW X7 Xシリーズのフラッグシップがついに登場。全長5151mmでシートは3列仕様。豪華さと居住性を極めたクルーザーである。日本には2019年夏に導入される予定だ。
最新X4でその実力を検証
BMWが発行している「BMW magazine」の受け売りなのだが、そこには新型X4の概要とともに、こんなふうなことが書いてあった。「スポーツ界において、俊敏性と正確さを伴わない強さは無用の長物になるという法則がある」。なるほど確かに、モハメド・アリがまさにそれに当てはまりそうだ、という冗談はさておき、話を進めよう。 今回乗ったのは、X4のラインナップのなかで最高出力360PS、最大トルク500Nmを記録する最もパワフルなエンジンを積んだM40i。ボディサイズは全長が約80mm、全幅が40mm拡張され、その一方で全高が5mm低くなり、大型化するのとともにクーペフォルムが際立ち、より大胆で豪勢になった印象だ。スペック、外見を一瞥して心配はやはり、先の“無用の長物”にならないか、という点である。 まず、しばらく街を走らせてみる。取り回しに違和感を覚えたりはしなかったものの、結構な重みのパワステがややネガティブか。細い道だと、慣れないうちは幅も気にしながら運転していたため、それらが多少のストレスを生んでしまうかもしれない。 BMW X4 アクティブ・クルーズ・コントロールや前方車両・歩行者に対して作動する自動ブレーキといった運転支援システムも充実。今回フィーチャーしたM40iは977万円〜。しかし、ハイウェイに入れば、その味つけ、設計がこの場所のためだったのだと納得いくはずだ。500Nmの最大トルクはなんと1520回転から出る。高速のゲートをくぐり、アクセルを少し強めに踏み込むと同時に激しくタイヤが地面を蹴り上げ、間髪入れずターボがエンジンに力を加えるアクションがダイレクトに伝わってくる。重めのパワステも緩いカーブをトレースするのにちょうどいい。 高すぎず低すぎない視点の位置は、視界の広さも相まって爽快である。やはり、BMWの主な舞台はリング、否、エンジンのポテンシャルを体感できる場所なのだ。