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2018.09.19

角が取れて丸くなったヤツには魅力を感じないからね

ひと目で惚れる世界の旧車 Vol.2
ここ数年、メーカーが続々と取り入れ始めている中古車の認定制度に、レストア部門の新設。それによって安心して古いクルマを楽しめるようになるのは、我々の大きなメリットだ。
そこで、往年の名車が集まるイベント「AUTOMOBILE COUNCIL2018(オートモビル カウンシル2018)」に行って気分がアガる中古車たちを探してきた。アナタのハートを撃ち抜くクルマはどれだ!?
Vol.1 「’60年代生まれのイタリア車が持つ愛嬌にひと目惚れ」はコチラ
燃費を考えれば、流線的なボディラインになるのは必然だ。だから今の世の中、流れるようなボディラインの見た目が優しいクルマで溢れている。それもひとつの確かな正義。
しかし、それだけでいいのか! とつい思ってしまう……
もっと武骨で、古臭くても渋みをたたえた男として年を重ねたい。そう、パキッと角張って堂々としたフォルムに昭和の名優のような渋みを感じる、かつてのボルボやレンジのように。
 
カメラマンから広まったボルボの名作ワゴン
「ボルボ240ワゴン クラシック」

1974年に登場し、その後約20年も生産が続けられた240シリーズ。一時はワゴンのほかセダンとクーペもあったが、特にこのワゴンが名作として今でも人気を博している。
1992年式「ボルボ240ワゴン クラシック」 328万円/ボルボ・クラシック・ガレージ
日本で広まったきっかけは、バブル時代にカメラマンがこぞって乗ったこと。そこからクリエイティブな職種の人を中心に広まっていったと言われている。
選ばれた理由は使いやすいラゲージ、頑丈で故障が少ないこと、意外と小回りが効くこと、競合より比較的安価だったことなど。さまざまな面でバランスの良い優秀なワゴンであったことがわかる。
しかし今も世界的に人気な最大の理由は、やはり直線基調のシンプルで武骨なデザインだろう。我々世代の脳裏に焼きついた渋いボルボのイメージをそのまま体現したような角張った見た目は、今でも見た瞬間にやられてしまう。
 
240のボクシーなスタイルを引き継いだセダン
「ボルボ740セダン」

真冬のスウェーデンでの雪上テストや、ロッキー山岳地帯での酸欠テストなど厳しいテストを世界各地で行われたのちに開発されたのが760シリーズ。240と同じボクシーなスタイルはそのままに、走行性能や安全性は大幅に改善されている。
1990年式「ボルボ740セダン」 218万円/ボルボ・クラシック・ガレージ
上の写真の「740」シリーズは760のベーシック版として1984年に登場した。
740はセダンとワゴンの2タイプが作られ、当時のボルボを象徴する角張った武骨なスタイルは人気の240よりもさらに強調された。サイズは240シリーズとほぼ同じだが、より角張ったことでワゴンのラゲージはさらに広大になり使いやすくなったと言われる。
 
クルマとして初めてルーブル美術館に展示された初代レンジ
「レンジローバー4.0 ファイナルエディション」

軍用車くらいしか荒れた路面を走破できる4WD車が無かった1970年に、誰もが荒れ地を走破できるようにと登場した無骨な一台が、初代レンジローバーだ。
1995年式「レンジローバー4.0 ファイナルエディション」 628万円/レンジャース
まだ階級社会が色濃く残っていた当時のイギリスでは、スマートで性能も良いレンジローバーは貴族に大人気となり、彼らの要求によって次第に高級車志向を高めていき、いつしか「砂漠のロールスロイス」と呼ばれるようになったのだ。
ちなみにこの初代レンジローバー、「工業デザインの模範的作品」としてルーブル美術館に展示されている唯一の自動車。なるほど、目を奪われるわけだ。
2代目が登場した1994年以降も人気が続き、2年後の1996年まで生産が続けられたという逸話も持つ。
 
“荒れ地を走る高級サルーン”をさらに進化させた2代目
「レンジローバー(ディーゼルエンジンモデル)」

初代レンジローバーの高級路線をさらに推し進めたのが2代目だ。初代のシルエットやルーフ、ボンネット形状、上下分割式のテールゲートを引き継ぎ、ボディも角張ってはいるものの、やや優しさのあるデザインとなった。
2002年式「レンジローバー(ディーゼルエンジンモデル)」 220万円/ブリティッシュレーベル
初代の後期型で採用されたエアサスペンションを全車に標準装備し、路面状況に合わせて車高を調整できるようにするなど、オンロード/オフロードともに快適な乗り心地を提供した。
インテリアは上質な本革や本木目パネル(ウォールナット)などが使われるなど、角張った渋い見ための中にイギリス王室御用達のレンジローバーらしい気品の高さを備えた名車だ。
 
ボルボもレンジも、往時を表すような武骨なスタイルが今でも魅力。時代に逆行するようなより角張った武骨な旧車を選ぶことは、年を重ねてどんどん丸くなって行く自分に、“渋い”一面を加える最高のアイテムになってくれるのではないか。
 
萩原文博=撮影 ぴえいる=取材・文


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