
自分達の日常とは、一見縁遠く感じる“海洋保全”に、日常の行為や持続可能な経済活動を結びつけながら取り組む企業・人物をOCEANSが表彰する「THE BLUEKEEPERS AWARD」。
今年も開催された「
THE BLUEKEEPERS AWARD 2026」では5名の受賞者が決定し、去る8月には授賞式も開催された。
OCEANS編集部では各受賞者にインタビュー取材を実施。初回は「LOCAL ENGAGEMENT賞」を受賞した株式会社AlgaleX(アルガレックス)の高田大地さんだ。
▶︎すべての写真を見る
たかだ・だいち●早稲田大学法学部卒業後、カナダ遊学を経て大手総合商社に入社。飼料部門や新規事業などに従事後退職し、2021年、水産養殖の課題解決をスローガンに株式会社AlgaleXを立ち上げる。世界に類を見ない微細藻類の培養技術を確立し、2024年、パウダー状のスーパーフード“うま藻”の小売りをスタート。茅ヶ崎生まれで、海を愛するサーファーでもある。
海を元気にする“育て屋”として、世界No.1を目指す。
株式会社AlgaleXをわかりやすく紹介すると、廃棄されていた沖縄の泡盛粕をアップサイクルして、旨味とDHAが詰まった新食材「うま藻」を開発している会社だ。

しかしAlgaleXの事業の本質は、その技術で海の資源を減らさない「サステナブルな養殖魚の飼料」の確立に挑んでいることにある。
実は、地球上のすべての生物の根源ともいえるという“藻”。その存在は、急激な漁獲高の減少や採れる魚種が変化している世界中の海の生態系を、正常化するための処方箋となり得る。
そんなヴィジョンを描くAlgaleXは、沖縄に新たな産業を生み出しただけでなく、藻の“育て屋”として唯一無二の技術を確立してきた。
その功績から、「BLUE KEEPERSAWARD 2026」では、LOCAL ENGAGEMENT賞を受賞。興味深い事業内容と今後の野望について、代表取締役社長の高田大地氏に話を伺った。
――まず、微細藻類の培養をビジネス化していくきっかけを教えてください。高田さん 元々は大手商社で、家畜などの飼料原料を輸入する部署におりまして、海から魚が急激に減っている現状を知りました。その対応策である養殖も、餌は天然の魚が必要であることから、魚が減ることへの大きな解決策にはならない。
そのソリューションとなるのが、微細藻類だったんです。まだ世界で誰も答えを出せていない課題に対して、解決の方法も研究者も知っている以上、自分がやらなければ。そんな思いもあり、独立に至りました。
――藻が魚の減少を食い止める。そのメカニズムを簡単に教えてください。高田さん 海にももちろん、ピラミッド型の生態系が存在しています。大きい魚がいて、小さい魚がいて、その下にさらに小さなオキアミなどがいます。その彼らが食べているのが、海藻や藻です。
藻は出発点、いわば海の生態系の原点ですから、確かな技術で藻を育てることができれば、生態系はあるべき姿へ回り始めるんです。
――藻は海の生命の根源なのですね。高田さん そうです。では、藻は何を食べているのかというと、山から川を伝って流れてくるアミノ酸です。川に溶け込んだ栄養素を食べて、成長して初めてタンパク質と油を作り出す。
その中に有名なDHAという油も入っているのですが、藻がいなければ、魚にもDHAはなく、当然人間も魚からDHAを摂ることはできないんです。
これまでも“うま藻”は、海洋保全だけでなくビジネスモデルやエンジニアリングなどさまざまな視点で注目されてきた。
――なるほど。誰もが知っている「魚のDHA」は、藻から作られているのですね。高田さん はい。その根源的な存在である藻を、今まで未活用だった泡盛の粕を使って育てるという画期的な技術を確立しました。
なので、自分たちは藻屋ではなく“育て屋”だと思っています。未活用資源から、価値ある栄養源を生み出す育て屋として世界No.1の企業を目指しています。我々の技術が普及すれば、魚の養殖に適した栄養源を、海外の天然資源に依存せず安定して作り出せます。
藻を成長させる発酵タンク。藻にとってパーフェクトな環境を、AIを活用して徹底管理している。
――人間の力で育てた藻で養殖が可能になれば、魚が減っている現状でも餌がしっかり供給できて、魚の数が増やせるということですね。高田さん そうですね。しかも、餌のクオリティは味わいに直結します。
エビや貝が美味しいのは、うま味のある藻を食べているからです。それと同様に、フレッシュな餌を食べた魚は、当然美味しくなります。だからこそ、地域の未活用資源で藻を育て、地域に還元する事を突き詰めたいと思っています。
――それを我々も実感できるのが、すでに生産、販売をされている“うま藻”ですね。高田さん はい。藻から食品を作っている会社は他にもありますが、藻が“美味い”と言い切って販売しているのは、世界で我々だけだと思います。
藻から、人間が食べて美味しいと感じるフードプロダクトを作り出すのは、圧倒的な精度で藻や微生物を育てる技術が要求されるので。
完成した“うま藻”は、美味しいだけでなく、DHAがサバの約13倍、GABAやグルタミン酸なども豊富に含むスーパーフードでもある。
――具体的には、どういった技術なのでしょうか?高田さん CTO(最高技術責任者)である多田清志は、30年以上藻類研究を積み上げてきたスペシャリストであり、同時にA Iの高度なプログラミング技術も持ち合わせています。
多田の熟練培養士としての知見と経験をAIに反映し、培養士のAI化を我々は実現しました。その結果、24時間365日、藻にストレスのない完璧な生育環境を提供できています。これができるのは、おそらく世界でも今は我々だけです。
――しかも、会社のある沖縄の泡盛粕を使って作られているのが素晴らしいですね。高田さん 今でも会社の道を挟んで向かいにある新里酒造さんから、月に5〜10トンほど泡盛の製造工程で出る残渣を有価で引き取って、うま藻の生産、開発を進めています。
ただ、これが肝なのですが、我々の技術はもう確立できているので、泡盛粕に限らず、他のお酒や食物残渣も活用出来るだけでなく、酵母など藻以外の培養にも応用可能なのです。
うま藻開発のキーマンのひとり、多田清志CTO。
――それはすごい! 今後のビジョンを教えてください。高田さん 我々のゴールは、海を元気にすることです。確立した技術で、魚を減らさず、持続的に養殖魚が育てられる未来というのが到達点ですが、そこに行き着くまでに、現在の食用事業のみならず、AI技術の提供であったりと、あと4つぐらいのステップを踏んで、成長していければと考えています。
――消費者としても、海の恵みである“うま藻”を美味しく食べることで、海洋環境の改善に貢献できるのは嬉しいことですね。高田さん うま藻は、シーフードの美味しさの原点ですし栄養も豊富です。料理に旨みを加えたいときに使ってみようかなぐらいのテンションで、まずは使っていただけたら嬉しいです。
そういったことの蓄積が、海を元気にし、日本だけでなく世界の海で漁獲高の回復に繋がっていくと思っています。
ーー今日はありがとうございました! 今後も高田さんとうま藻の、世界の海での活躍に注目しています![問い合わせ]株式会社AlgaleXhttps://umamo.jp/pages/about-algalex