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2026.11.07

ファッション

300万人との共創。無印良品がReMUJIで目指す資源循環インフラ


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1980年に誕生した無印良品は国内700店舗を超える規模へと成長した。気兼ねなく使える素材、声高に主張しないデザイン、どんなスタイルにも馴染むオールラウンダーの佇まい。日々の生活に欠かせない存在となったブランドの原点は「大量消費社会へのアンチテーゼ」だ。その哲学をいまの時代にアップデートする象徴として、資源循環の取り組み「ReMUJI」が動き出している。

【写真12点】「時代を先取りした簡素の美。ReMUJIが目指す資源循環インフラ」の詳細写真をチェック

回収した衣類を再び服に。ReMUJIが生まれた背景


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無印良品の初代アートディレクター・田中一光氏が残した力強い言葉がある。

「簡素が豪華に引け目を感ずることなく、その簡素の中に秘めた知性なり感性なりがむしろ誇りに思える世界。そういった価値体系を拡めることができれば、少ない資源で生活をゆたかにすることができる」。母体である株式会社良品計画をいまも根底で支えるこの言葉は、ESG(Environment Social Governance)の取り組みを加速させる同社の柱となっている。

株式会社良品計画 循環推進部循環推進課 川上真由子さん●2002年に新卒で入社して以来、消費者が求める価値や企業活動の変遷をつぶさに見つめてきた。2024年に自ら手を挙げて循環推進部に異動。「回収から再製品化・再流通まで」を一体運用する中核を担う。

株式会社良品計画 循環推進部循環推進課 川上真由子さん●2002年に新卒で入社して以来、消費者が求める価値や企業活動の変遷をつぶさに見つめてきた。2024年に自ら手を挙げて循環推進部に異動。「回収から再製品化・再流通まで」を一体運用するチームの中核を担う。


その哲学を現代に落とし込んだ代表例が、資源循環の取り組み「ReMUJI」であり、役目を終えた製品を消費者から回収し、リユースやリメイクを施して再び店頭へと戻す試みだ。株式会社良品計画 循環推進部 循環推進課の川上真由子さんは、これまでの歩みをこう振り返る。

「ReMUJIの前身プロジェクトが立ち上がったのは2010年。当時は回収した衣服をバイオエタノール燃料へと変えていました。でも、無印良品のお客様はモノを丁寧に扱う方が多く、集まった衣服を見てみると、エネルギーにするにはもったいないくらいコンディションが良かったんです。これならもう一度、服として活かせるかもしれないという思いから、2015年に無印良品のリユースの取り組みとしてReMUJIが誕生しました。」。





持ち込まれる衣服は一つひとつ検品され、「染めなおした服」「洗いなおした服」「つながる服」の3つのゴールに仕分けられるが、回収される対象は2025年から大幅に拡大。現在は衣服のみならず、プラスチック収納、布団、タオルなど全6種類の持ち込みを受け付けている。回収参加件数も年々増加し、今年度はすでに50万件を突破した(2026年8月時点)。

もったいない精神でCO2を890トン削減



ReMUJIの原点は環境負荷の低減ではない。始まりにあったのは、極めて純粋な「もったいない」という生活者感覚だった。だが、手を加えてモノを循環させる試みは、資源の有効活用にとどまらず、気候変動問題への確かなアクションとしても機能している。新しい衣服を一から製造するプロセスと比較し、ReMUJIを通じた製品の再生によって890トン(*1)ものCO2削減を達成したと良品計画は公表している。

「着古した服を刺し子で補強したり、染め直してもう一度着物として蘇らせたりする文化が日本には昔からあります。その伝統と知恵を現代のライフスタイルに落とし込んだ結果として、大幅なCO2削減という成果がついてきたのだと思います」。

*1 2025年9月から2026年2月までのReMUJI「衣服リユース」(染めなおした服、洗いなおした服、つながる服)の製造実績に基づき算定


MUJI Cafeで出たコーヒーかすを染料にすることで優しいカフェオレ色に染まった衣服。

無印良品で販売するコーヒーを製造する際に出たコーヒーかすなどを、染料の一部に活用した「染めなおした服」



[上]MUJI Cafeで出たコーヒーかすを染料にすることで優しいカフェオレ色に染まった衣服。[中・下]同じ青、同じ黒を使ってもベースとなる衣類の素材や状態によって染め上がりが異なる。

同じネイビー、同じ黒で染めても、ベースとなる衣服の素材や状態によって染め上がりの表情が一つひとつ異なる。


気候の急激な変化が常態化する現代において、環境負荷や温暖化をめぐる課題から目を背けることはできない。社会的に知名度の高い企業がその責任を担う意義は間違いなく大きいが、無印良品はその大義名分を声高に押し出すことには慎重だ。

「『環境問題に一緒に取り組みましょう』だけだと、息苦しさを感じてしまう人もいると思います。手にとる服が新品であれリユース品であれ、着る人にとって直感的にいいと思えるかどうか。私たちは、あくまでもプロダクト本来の魅力が入り口であってほしいと考えています」。


「強度のあるポリエステルの糸は染まらないので、こうして白いステッチがこのまま残るんです。使われている素材によって染め上がりの表情が変わるのも、ReMUJI製品の面白さです」と川上さん。

「化学繊維は染まらない染色方法を採用しているため、強度のあるポリエステルの縫製糸はこうして元の色が残ります。それも衣服リユースの面白さですね」と川上さん。白いステッチが品よく際立つ「染めなおした服」。 


川上さんが語る同社のスタンスは、無印良品の原点とも自然に重なる。プロダクトが簡素なのは、大量消費社会へのアンチテーゼが起源ゆえだが、そのメッセージを意識して買う人は多くはないし、無印良品の人気は、あくまでも製品本来の機能やデザイン性にある。



それは、衣服リユースにおいても同様だ。環境配慮という文脈よりも一着の製品として魅力的かどうか。川上さんは手応えをこう語る。「ReMUJIで一番人気があるのはリメイク品で、2枚の回収衣服からなる『つながる服 シャツ』です汚れや擦れを避け、使えるパーツなどを組み合わせて再構築すると思わぬパターンや独自のシルエットが生まれるんです。『リメイクだと気づかなかった』『服としてかわいいから選んだ』と言っていただけるのが何より嬉しいですね」。

2枚のシャツを縫い合わせて生まれた新しい1枚。単なる古着とは違う配色豊かなアイテムが並ぶ。

2枚のシャツをつなぎ合わせて生まれた新しい1枚。単なる古着とは違う配色豊かなアイテムに生まれ変わる。


目指すは参加者300万人。インフラを共創する挑戦

ReMUJIによる2025年度の衣料品回収量は140トンを超え、プラスチックの収納アイテムは160トンを突破。スキンケアなどのプラスチックボトルも10トン以上を回収している。リユース、リサイクル、アップサイクル率も増加の一途で、こうした取り組みが900トン近いCO2削減につながった。

 

気になるのはReMUJIの売上だが、取り組みの広がりとともにその規模も順調に拡大。目指すのは、2030年に売上30億円、現在の約6倍にあたる回収参加者「300万人」という高いハードルだ。次なるステップは何か、川上さんに聞いた。 

「ReMUJIは、お客様との共創がなければ成り立ちません。回収するモノが集まらなければ製品として届けることも、資源循環という根幹にあるメッセージを伝えることもできません。今後、接点をどう増やしていくかが私たちの課題です」。



衣服やプラスチックなどの回収は全店舗で受け付けているが、その認知度はまだ低く、ReMUJIの存在自体も広く知られてはいない。今後、求められるのは企業側の意識改革だという。「これまでは一部の部署が回収に力を入れてきましたが、今後は社員や店舗スタッフ全員が『回収チーム』だという意識を共有していく必要があります」。

国内700店舗を超える無印良品が回収拠点として機能すれば、日本特有の“もったいない”精神から派生する巨大な循環インフラになり得るし、自ずと環境負荷の低減にも大きく貢献するはずだ。最後に川上さんは読者に向けてこう言葉を添える。「紳士ウェアが持ち込まれるケースはまだまだ少ないのが実情です。役目を終えた無印良品の服があれば、ぜひ気軽に店頭へお持ちいただきたい。私たちが責任を持って、次の資源へと活かしていきます」。



視点を良品計画全体へと広げれば、ReMUJI以外の取り組みも目を見張るものがある。再生可能エネルギー発電事業「MUJI ENERGY」の立ち上げ、ボタンまで単一素材で統一しリサイクルを容易にした「素材に還るフリース」の開発、2030年8月期までに主要繊維素材の100パーセント環境配慮化を目指した原材料調達など、サプライチェーン全域で改革が進む。そのアプローチは食や一次産業の現場へも及んでいる。伝統的な栽培技術を守り、生産者の安定収益につなげる「ほめられかぼちゃ」の展開もその好例だ。生活のあらゆる場面に浸透する企業だからこそ、その挑戦から消費者が受け取る豊かさは決して小さくないはずだ。

NACHOS、良品生活=写真 ぎぎまき=取材・文

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