OCEANS

SHARE

advertisement
  1. トップ
  2. 時計
  3. Gショックやオシアナスも製造。時計作りの“心臓部”を担う工場「山形カシオ」の精密なる手仕事

2026.10.13

時計

Gショックやオシアナスも製造。時計作りの“心臓部”を担う工場「山形カシオ」の精密なる手仕事

山形カシオの時計製造専用棟、G棟。工場というより、研究施設を思わせる空間で、カシオのアナログ時計のムーブメントが生産され、世界各地へと供給されている。2018年に完成したこの棟は、東日本大震災の経験をもとに免震構造を採用。守るべき技術を受け継ぎながら、それを取り巻く環境も進化させている。

山形カシオの時計製造専用棟、G棟。工場というより、研究施設を思わせる空間で、カシオのアナログ時計のムーブメントが生産され、世界各地へと供給されている。2018年に完成したこの棟は、東日本大震災の経験をもとに免震構造を採用。守るべき技術を受け継ぎながら、それを取り巻く環境も進化させている。


「NIPPON CRAFT QUEST」とは……
▶︎すべての写真を見る
advertisement

果樹王国として知られる山形県東根市。市内の工業団地の一角に、カシオ計算機の国内唯一のマザー工場「山形カシオ」がある。ここで作られるのは、Gショックの最高峰である「MR-G」から4400円の「A159」まで、実に幅広い。

製品を組み立てるだけでなく、金型の設計から部品の加工、検査まで。時計作りを支える多くの工程を担う「カシオの心臓部」に伺った。

世界のカシオを支える、山形のマザー工場

山形カシオの工場が立つのは、澄んだ空気と水に恵まれた東根市。塵を嫌い、高い精度が求められる時計の加工や組み立てに適した環境だという。

山形カシオの工場が立つのは、澄んだ空気と水に恵まれた東根市。塵を嫌い、高い精度が求められる時計の加工や組み立てに適した環境だという。


アナログ時計の基幹部品であるムーブメントは、そのほぼ全量を山形で生産し、世界各地の組み立て拠点へ送り出す。ここは、カシオの時計生産の心臓部だ。

1979年の設立後、時計や電卓の生産を開始し、83年には精密金型事業へ進出。以来、その精度を磨き続け、現在のマザー工場へと歩みを進めてきた。
advertisement

入社以来、40年近くカシオの時計作りに携わってきた木村社長。初代Gショックの量産体制の立ち上げにも関わった、時計事業の歩みを知る人物だ。

入社以来、40年近くカシオの時計作りに携わってきた木村社長。初代Gショックの量産体制の立ち上げにも関わった、時計事業の歩みを知る人物だ。


この工場を特徴づけるのが、そこで働く人たちだ。現在、約600人が在籍し、その9割以上が地元出身者。代表取締役社長の木村真一氏は、「山形の人は、まじめで責任感が強く、粘り強い。そうした気質が精緻なものづくりに合っている」と語る。

もちろん、資質だけで精度は生まれない。社内には技能を5段階で認定するメダリスト制度があり、腕を磨いた技術者を評価する。「MR-G」などのハイエンドモデルに携わるのは、ゴールドメダリスト以上の技術者のみ。人を育てる仕組みもまた、品質の土台になっている。

袖に輝くメダルは、技能認定の証し。メダリストが腕を振るうPPL(プレミアムプロダクションライン)は、若手社員にとって「いつかは自分も」と憧れる場所でもある。

袖に輝くメダルは、技能認定の証し。メダリストが腕を振るうPPL(プレミアムプロダクションライン)は、若手社員にとって「いつかは自分も」と憧れる場所でもある。


そして面白いのが、ここが「作る」だけの工場ではないことだ。自ら企画、設計、開発まで手掛ける独自事業にも取り組んでいる。その代表が、水中トランシーバー「Logosease」だ。

始まりは「一緒に潜っている人と会話できたら楽しいはず」という素朴なアイデアだった。社員自らダイビングのライセンスを取得し、日本海や伊豆へ潜り、試行錯誤を重ねた。そうして、骨伝導と超音波を使い、レギュレーターをくわえたまま会話できる製品を完成させた。

時計作りで培った防水や精密加工の技術も、ここで力を発揮した。得意とする技術を、思いもよらない製品へ応用する。電卓にゲームを、時計にカメラを載せて、世界を驚かせてきたカシオのDNAは、ここ山形でも健在だ。



「“これは無理だろう”と思うことがあっても、カシオでは“じゃあ、やってみよう”となる。その姿勢がカシオらしさ」と木村社長は語る。

ムーブメントを作り、最高峰のモデルを熟練の技で仕上げる。求められるのは、わずかな誤差も見逃さない仕事だ。けれど、その技術の行き先は、時計のなかだけとは限らない。「水中で会話できたら」という発想を、本当に製品にしてしまう。その振れ幅もまた、この工場の面白さなのだろう。「じゃあ、やってみよう」。そのひと言から、「山形カシオ」では次のものづくりが始まる。
2/3

次の記事を読み込んでいます。