鵜原の固有な土地柄による、啓示的な恵み 「勝浦塩製作研究所」

三島由紀夫初期の名短編「岬にての物語」(小説の中では“鷺浦(さぎうら)”という地名で描かれている)で舞台となった勝浦随一の景勝、鵜原理想郷。その西側出入口のトンネルを抜けた先、かつて鮑や雲丹の養殖業が行われたのち、約20年放置されていた跡地にて「勝浦塩製作研究所」を営んでいるのが田井智之さんだ。

東京出身で10代からサーファーとして海に親しみ、サーフトリップの度に“利き海水”していたのが嵩じて、製塩業に就いた異色のキャリア。

「全国津々浦々の海の水を飲んできたんですけど、勝浦が一番美味しい」と、田井さんは笑って話す。物は試しに一口含んでみると、確かに塩分濃度がマイルドで、飲める海水は初体験。

塩作りは究極に肉体労働だ。海水を月2回、独学でたどり着いた塩産法に則って、新月(まろやかな塩になる)と満月(塩によりコクが出る)の満潮時にだけ汲み上げ、昔ながらの平釜2台で700ℓを炊き、塩炊き中は1日約250kgの薪をくべ、室内温度が60℃にも及ぶ中で、丸々5日間続く。

それから天日に干し、しっかりと乾燥したら、ふるいに掛けて、やっと製品に。
「サーフィンで部原海岸に通っていたよしみがあって、勝浦市商工会が主催する“かつうら創業塾”で経営を学べたり、到底借りられない勝浦漁業協同組合管轄の元養殖場を使わせてもらえていたり、薪は地元の工務店さんが廃材をもってきてくれたり、勝浦の絆にはすごく感謝しているんです」。

まさに、勝浦塩(えん)は土地の縁が育んでいる。ちなみに、あの前澤友作さんも製塩体験に訪れたとか!
「スパイス・コーヒー・ハウス」など勝浦市内の勝浦塩販売店や、勝浦市一般社団法人勝浦市観光協会が運営するかつうら商店オンラインショップ(katsuura-kankou.stores.jp)で購入可能。「新月の煌(45g 1188円、100g 1944円)」は新鮮な素材を生かした魚や野菜料理に、「満月の刻(45g 1188円、100g 1944円)」は天ぷらやグリルした肉におすすめ。
「勝浦塩製作研究所」
住所:千葉県勝浦市鵜原1016-4
電話番号:090-2216-9251
神出鬼没の青空薪火料理キッチンカー 「HiPPiE」

目下、世界のフーディーたちが心酔しているガストロノミー。それが、何よりもピュアな調理の原点ともいうべき薪火料理(薪料理とも)だ。

そんなプリミティブな料理法にこだわったキッチンカー「HiPPiE(ヒッピー)」が今年4月頃から勝浦に出没し始めた。オーナー兼シェフは千葉県松戸市出身の若干28歳ながら、世界三大と評価されるスウェーデン、オーストラリア、アルゼンチンの薪料理店で経験を積んだ酒井芳葵さん。
「過去には東京やパリでミシュランの星を追うようなレストランにもいたんですけど、そういうお店は高価すぎるし、フードロスも多いし……少し後ろめたさを感じたこともあって、作ることにも、もてなすことにも純粋な薪火料理に食らったんです」。

酒井さんのトングさばきは薪の炎を思うままに手懐け、勝浦や千葉県産の地産地消にこだわった食材を屈託なく焼き上げていく。食レポをするならば、滋味豊かとはこういうことだと答えたい。
ただ、オウンドサイトもSNSもない。出店がいつなのか、絶対に出会えるかどうかもわからない。信憑性の高い口コミでは部原海岸がメインのようだ。
朝採りの“勝浦朝市”で買い付けた野菜のグリル(600円)と白身魚のロースト(600円)。
勝浦塩製作研究所の勝浦塩を使ったキャラメルパンナコッタ(400円)も人気の一品。
「HiPPiE」
住所:千葉県勝浦市部原1928-1付近
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