マイベスト① とものもとの「冷やしつけめん」

それでは、私がお勧めする冷やしラーメンを紹介しよう。最初にご紹介するのは、「とものもと」。
同店は、2015年3月1日、船橋市東中山の地で産声を上げ、その5年後となる2020年3月1日に、東海神駅(東葉高速鉄道)の目の前へと移転。
店主・市原氏は、繰り出す1杯のブラッシュアップに日々余念がない努力の人。ラーメンの味わいは、年を追うごとに磨きがかかり、2020年における移転後は、満を持して麺を自家製麺へと切り替えた。
今では、押しも押されもしない千葉県内屈指の「淡麗ラーメン」の実力店として君臨。営業時間中は常に店の前に長蛇の列が連なる人気ぶりを誇り、東海神駅前のランドマークと化している。

そんな同店が、夏季の定番メニューとして提供するのが「冷やしつけめん」。
同店のレギュラーメニューである「つけめん」は、完成度の高さに定評があり、私が審査員を務める「TRYラーメン大賞」の常連掲載商品。「冷やしつけめん」は、そのバリエーションのひとつでもある。提供は9月中旬頃までを予定している。

販売中は来訪客の過半が注文する人気商品であり、私も、ここ数年は夏の訪れとともに欠かさず戴いている。この1杯を食べずして私の夏は始まらないという感覚だ。
そんな同品であるが、今バージョンの完成度は、昨年以上の高みへと到達していた。節系素材の芳しい香りが凛と背を伸ばし、甘辛いカエシに趣と華を添える。思わず水筒に入れて持ち歩きたくなるほど甘美なスープの味わいに、箸を持つ手が際限なく加速する。

キンキンに冷やされた昆布水から放たれる涼やかなうま味が、存在感豊かな自家製麺を介してスープと邂逅するサマは、まるで伏線が回収される瞬間を見るかのよう。複数の小麦を使い艶やかな食感を持たせた自家製麺も、スープに浸さず小鉢の塩だけで戴いても完食できてしまえるほどハイレベル。
キレのある醤油感と素材のうま味が重層的に響く同店の「つけめん」の持ち味と、「冷やし」ならではの清涼感を巧みに両立させた1杯。「冷やし」という文化の到達点を味わいたいのであれば、真っ先に箸を向けるべき名品だ。
3/4