
インバウンド需要の拡大と旅行スタイルの多様化を背景に、ホテル業界はいま大きな転換期を迎えている。かつて、いわゆるビジネスホテルと称される宿泊特化型ホテルは、「安全・清潔・機能的」であること、そして価格競争力が重要な価値とされた。しかし、いまはこうした機能的価値だけでは差別化が難しい時代だ。その先にある新たな価値の創出が、これからのホテルには問われている。
全国63カ所で「KOKO HOTELS」を運営するポラリス・ホールディングスも、その変化を見据え、「Here Discovery Begins. ここから見つける旅を」というタグラインのもと、ホテルを“旅の起点”へと進化させてきた。
「『KOKO』というブランド名には、3つの意味を込めています」と語るのは、ポラリス・ホールディングスの取締役兼COOとしてホテル運営事業を統括する下嶋一義(以下、下嶋)だ。
「まずは、“ここ”という場所。いま自分が滞在している場所、この街、このホテル。旅の出発点となる現在地を意味します。つぎに“いま、ここ”という時間。過去でも未来でもなく、その土地でしか味わえない瞬間を楽しんでいただきたいという思いです。そして最後が、“心地よさ”。旅の目的も、過ごし方も、人それぞれではありますが、その根底には常に快適性への追求があります」(下嶋=以下同)
下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼COO。
基本コンセプトとなるのは「FEEL THE LOCAL」
「Here Discovery Begins. ここから見つける旅を」というタグラインには、“ここ”を起点に、街へ踏み出してほしいという思いが込められている。「ホテルは単に眠るだけの場所ではなく、その土地と出会う入口でありたい」と考える下嶋が重視するのが、「FEEL THE LOCAL」、地域ならではの魅力を宿泊体験へと取り込み、その土地との出会いを生み出していくというコンセプトだ。
「『KOKO HOTELS』のようなリミテッドサービスホテルは、施設の中だけで体験価値を完結させることは難しい。ホテルの外にある地域の魅力を、お客様へ届けることが私たちの役割だと考えています」
この「FEEL THE LOCAL」を実現するため、各ホテルでは地域とのコミュニケーションに力を入れてきた。地元の祭りへの参加や地域コミュニティと積極的に交流し、下嶋自身も札幌、福岡で開催されるリレーマラソンに社員とともに参加するなど、ホテルの外へ出て地域との接点をつくることを大切にしている。
また各ホテルで提供するご当地食材を生かした朝食も、「FEEL THE LOCAL」を体現する取り組みのひとつだ。札幌のスープカレーや旭川の海鮮丼、東京は築地名物の玉子焼き、沼津の鯵の干物、大阪の串カツ、高松のうどんや下関のふぐ雑炊などなど……スタッフが自ら街を歩き、飲食店を訪ね、地域の文化や暮らしに触れることで発見した魅力をサービスへ結実させてきた。
「朝食は、お客様がその地域性を強く感じていただける機会ですから、力を入れています。ホテルの競争力は建物や設備だけで決まるものではありません。地域とのつながりや、そこで働くスタッフの想い、その土地で積み重ねてきた時間――そうした目に見えない価値こそが、我々のブランドを育てるのだと思います」
KOKO HOTEL 旭川駅前では“イクラかけ放題”の海鮮ビュッフェを提供。
KOKO HOTEL 大阪新世界では、下町グルメ「粉もん」「串カツ」「ホルモン」「肉すい」などを取り入れた和洋ビュッフェを提供。
KOKO STAY 下関の一番人気は、とらふぐのあらで出汁をとった「ふく雑炊定食」。
この考え方は、「KOKO HOTELS」だけにとどまらない。同社は現在、より上質な滞在を提案する「KOKO HOTEL Premier」、長期滞在を見据えた「KOKO HOTEL Residence」に加え、アップスケールブランド、さらにはライフスタイルホテルや旅館など、新たなカテゴリーの開発も進めている。しかし、ブランドや価格帯が変わっても、目指すものは共通しているそうだ。
「温泉でも、長期滞在でも、アップスケールでも、その土地の文化や人との接点をどう生み出すか。そして、ホテルを旅の起点にするという考え方は変わりません。『FEEL THE LOCAL』は、すべてのブランドに共通する我々の軸となるコンセプトです」
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