[1940’s]不幸な歴史に磨かれ、道具としての完成度を極めた
「IWC/パイロット・ウォッチ・マーク XX」軍用時計のデザインコードは受け継ぎつつ、従来内蔵していた軟鉄ケースは省かれ、薄くなったケースは装着感に優れる。高耐磁性はムーブメントに採用したシリコン製パーツで実現。SSケース、40㎜径、自動巻き。113万6300円/IWC 0120-05-1868
残念なことではあるが、道具の進化には戦争という不幸な出来事が大きく寄与していることは否めない。日常からかけ離れた過酷な使用環境においても確実に機能することは必須であり、あらゆる道具はここで鍛えられ、磨き上げられた。
高性能もさることながら、耐久性や堅牢性、メンテナンス性も重視されたのは言うまでもない。それはまさに最高の開発実験室といえるだろう。
腕時計発祥のひとつがボーア戦争と書いた。戦地では、ポケットから時計を取り出す行為は機敏性に欠けるとともに、光を反射した風防が相手に感づかれ、生死にも関わったのだ。やがて作戦遂行に不可欠な全員の時刻の統一のために秒針を止めるハック機能をはじめ、精度や品質、信頼性を担保する厳しい軍規格が設けられた。
航空の時代になると時計の役割はさらに増す。航行時間と燃料の残量を常に計り、激しい振動や計器の発する高磁気にも堪えなくてはならない。まぶしい太陽光や星明かりの下でも確実に時間を読み取れる視認性も欠かせない。
IWCは1936年に初めてパイロットウォッチを手掛け、今年90年の歴史を誇る。代表作の「マーク 11」は1948年に英国空軍の航海士やパイロットのために開発され、そのデザインコードは現在の「マークXX」にも受け継がれている。12時位置に記された両脇にドットを付けた三角形もそのひとつで、激しいGや反転した機体でも上方向を確実に識別できる。
黒いダイヤルに白い数字インデックス。飾り気はなくともその研ぎ澄まされた機能美は、普遍的な価値を宿している。
9月号別冊「OCEANS WATCH」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!