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「勝負したい時に舞台に立てなかった」原体験が生んだ事業構想

中西はサッカー少年だった。地元の選抜チームには選ばれるものの、クラブユースからスカウトが掛かる神童ではない。それでも中学生からプロサッカー選手になる夢に本気で向き合い、強豪高校への進学を果たす。さらに努力を重ねる中で実力を伸ばし、「本当にプロになれるかも」というところまで手を伸ばしていた。 ところが正念場を迎えた高校3年の夏に心臓疾患が判明し、入院生活を余儀なくされる。それは競技人生の終わりを意味していた。 

「勝負すべきタイミングで、フィールドに立つことができなかった」。この痛烈な原体験が、のちにTENTIALを創業するモチベーションとなる。 

その後、ビジネスの世界へ飛び込んだ中西は、心身の酷使を省みずに働く人が多いことに違和感を覚えた。「スポーツをやってきた自分にとって、体を整えることは当たり前でした。しかし社会では違いました」 

 1994年生まれの中西は、根性論ではなく、エビデンスに基づく練習メニューを重視する環境で育った。競技力を高めるには、練習だけでなく、睡眠や食事、休養など、オフの時間を含めて心身を整えることが欠かせない。

TENTIALでは、コンディショニングを「ライフパフォーマンス向上のために、体調に関わるすべての要因を良い状態に整えること」と定義している。もともとは、本番で100%の力を発揮するために、24時間365日、体と心を整えるというスポーツの世界の考え方だ。中西は、この考え方はアスリートだけでなく、ビジネスパーソンをはじめとする一般生活者が本来のポテンシャルを発揮するためにも必要ではないかと考えた。この確信が、同社の原点となった。 

なかでも着目したのが睡眠だ。多くの人が悩みを抱える一方で、ソリューションが充分ではない。そこで毎日の睡眠時間をコンディショニングの時間へと変えるために生まれたのが、疲労回復パジャマ「BAKUNE」だった。 

「大切な1日」のために——「科学的根拠にこだわる」研究開発

「人類のポテンシャルを引き出すために、コンディショニングを実装する」という中西の経営哲学に共鳴し、研究開発を牽引しているのがChief R&D Officer(最高研究開発責任者)の舟山健太だ。東京大学大学院にて薬科学博士を取得し、大手製薬会社で研究に従事した経歴を持つ一方で、サバット(フランス式キックボクシング)の日本代表選手という現役プロアスリートの顔も併せ持つ。 

その哲学に共鳴したのは、舟山だけではない。TENTIALのR&Dチームには、大手企業で研究開発に携わってきた熱量の高いメンバーが集い、それぞれの専門知を掛け合わせながら、TENTIAL独自の研究知見を築いている。 

R&Dチームの特徴は、「コンディショニング科学に基づいた徹底した研究開発」と「高い水準の臨床試験を通じたエビデンスの蓄積」だ。

BAKUNEの核となる技術は、特殊機能繊維「SELFLAME®」。この繊維は身体から発せられる遠赤外線を吸収し、再び身体に輻射(熱エネルギーを放射)することで血行を促進する。血行促進により筋肉のコリ等の改善、疲労回復が促される仕組みだ。

科学的根拠に基づいて開発されたBAKUNEは、家庭用遠赤外線血行促進衣自主基準をクリアし、一般医療機器として届出を完了している。(※2) 

さらに、臨床試験ではさまざまなデータを収集し、商品に活かす。例えば体温に関しては、体表温度を測定するだけでは不十分とチームは考え、被験者にカプセル型の体温計を服用させ、腸内の深部体温をモニタリングして生理学的データを蓄積している。 

「臨床試験やデータ収集は、研究者の熱量次第でいくらでも深掘りできる」と舟山は語る。ここまで徹底する理由は、かつて製薬会社で社長の戦略サポートをした経験上、エグゼクティブたちの「休めない切実な想い」を知っているからだ。 

TENTIAL Chief R&D Officer(最高研究開発責任者)の舟山健太

TENTIAL Chief R&D Officer(最高研究開発責任者)の舟山健太


「次の日も、その次の日も重要なミーティングが詰まっていて、絶対に体調を崩せない。そんな状況下で、ある種『救いの手』を求めて私たちの製品を選んでくださる方々がいる。『明日が勝負の日という夜に、BAKUNEが選ばれて恥ずかしくないか?』と考えれば、一切の妥協は許されません」(舟山)

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