マイベスト③ 熊公の「ジャージャー麺」

最後は「ジャージャー麺」を紹介して本稿を締め括りたいと思います。
下町情緒残る東京・浅草橋に佇む、創業50年以上の老舗、「熊公」。JR浅草橋駅西口から徒歩3分ほどの場所にあります。
昭和43年(1968年)、札幌ラーメンの店として産声を上げた同店ですが、今やその看板を背負うのは、ほかではお目にかかれない唯一無二のジャージャー麺です。
ジャージャー麺の起源は、中国北部の「炸醤麺(ジャージァンミェン)」であり、戦後、満州から引き揚げてきた人々によって日本に伝えられ、日本人の好みに合わせて独自に進化・定着していった歴史を持ちます。甜麺醤や豆板醤を効かせた濃厚な肉味噌を中華麺と絡めていただくーーその特有のコクと甘み、そしてピリッとした辛みのバランスは、一度ハマると抜け出せない魅力があります。

岩手県盛岡市の郷土料理「盛岡じゃじゃ麺」も、元を辿れば炸醤麺から派生したものです。百聞は一見に如かず。ご覧あれ、もやしと千切りのきゅうりがうずたかく盛られ、端にちょこんと申し訳程度の肉味噌が乗っているという、この斬新なビジュアルを!

底の浅い皿で提供されるため、かき混ぜるのもひと苦労なほどに麺量も抜群。明らかに全体のボリュームに対して肉味噌が少ない、と思われるかもしれませんが、その理由を理解するのに、さほど時間はかからないでしょう。
水で締められた太縮れ麺はプリとした弾力があり、麺の甘みを感じつつワシワシと食べ進めると爽快。自家製の肉味噌はじんわり辛く、徐々に蓄積されていくタイプの辛味です。

驚くべきは、食べ進めるほどに青天井で辛くなっていく点。むしろガツンと一撃でこないだけ厄介なのですが、これが猛烈にクセになります。ここで、もやしときゅうりが辛さを緩和するオアシスと化し、パラパラと散らされたコーンは甘みが引き立つことでその真価を発揮する。肉味噌の量が少なかったことも含め、すべてが計算し尽くされたバランスです。
咀嚼し、辛味を感じ、たまらず野菜を頬張り、また咀嚼する。口内は大忙し、気付けばうれしい悲鳴を上げています。

ちなみに、このジャージャー麺、単品価格が800円なのに対し、半カレーセット(コーヒーゼリー付)が900円。追加的な100円でとてつもなくお得です。故に、半カレーセットでの注文をオススメします。

ただし、この半カレー、社会通念上「半」を冠することが許されないレベルのボリュームなので、胃袋的に相応の覚悟が必要です。
気になる味の方は、薬膳系のスパイスが絶妙に香る素晴らしい仕上がり。ですが、例によってやはり辛い。
さらに、デザートのコーヒーゼリーは全く甘みのないビターテイスト。甘さへの逃げ道は完全に塞がれますが、コーヒーに含まれるポリフェノールは辛さを緩和するといいます。なるほど理に適っており、最後まで隙のない名店です。
熊公
住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-11
営業:11:00~14:30
定休:土・日曜・祝日