かつて文人たちが静養に訪れた湯河原の温泉街を、レンジローバー ヴェラールがゆっくりと走り抜ける。引き算の美学を極めた造形は、歴史ある町並みにすっと馴染む。その静かな空気の中、アクセルを踏むと車内はさらに静まり返る。外の気配を程良く遠ざけてくれるこの感じが心地いい。「レンジローバー ヴェラール」全長4820×全幅1930×全高1685㎜、乗車定員5名。899万円〜/レンジローバー(ランドローバーコール 0120-18-5568)
「NIPPON CRAFT QUEST」とは……▶︎
すべての写真を見る小田原、湯河原、真鶴。名だたる作家たちが愛し、独自の審美眼が積み重なってきた場所だ。
霧に包まれた美のディテールに目を凝らし、日常の食に宿る、作り手の意思に触れる。あるいは本を片手に、町の記憶を読み解く。
そこにあるのは、単なる観光ではない。地域に根ざした誠実な営みと、現在進行形の感性が交差する現場。
旅の相棒は、レンジローバー ヴェラール。静かな車内で景色を眺めながら、まずは小田原へ向かう。
雨の日だから見える景色がある

雨に濡れた西湘バイパスを小田原へ向かう。相模湾の輪郭をなぞるように進むレンジローバー ヴェラール。その無駄のない佇まいは、これから向かう場所の空気とどこか重なるものがある。

訪れたのは、現代美術作家・杉本博司氏が手掛けた「江之浦測候所」。あいにくの雨で、海を望むはずの視界は霧に閉ざされていた。水平線も見えない。最初は戸惑ったものの、しばらくすると、遠くが見えないぶん、意識がおのずと手前へと向かうことに気づく。
濡れた石の鈍い光や足裏に伝わるわずかな起伏、葉先から垂れる水の粒。要素が絞られることで、ディテールが鮮明に浮かび上がる。

施設を案内してくれたディレクターの稲益智恵子さんは「霧があることで、近代的な建物が視界から消え、杉本(博司氏)が望む、太古の人が見ていた景色に近づく」と話す。なるほど、遠くを見る指標を失うと、時間の捉え方も変わってくる。情報に追われる日常から離れ、外側にあった意識が、自分の中に戻ってきた感じだ。
海抜100mの地点に立つ「夏至光遥拝100メートルギャラリー」。その回廊には、水平線をセンターに捉えた「海景」シリーズの作品が並ぶ。なお6月16日(火)から東京国立近代美術館で開催される『杉本博司 絶滅写真』では、2025年に江之浦で撮影された作品が初公開予定。
その感覚は「夏至光遥拝100メートルギャラリー」で色濃くなる。本来なら先に海が開ける設計だが、この日は途中から白に溶けていく。行き先がぼやけ、距離の目安を失うと、歩いた長ささえわからなくなる。耳に残るのは雨音だけ。その単調なリズムが、かえって心地良い。
春分・秋分の軸線に合わせて設計された茶室「雨聴天」。にじり口(入り口)を開けると、差し込んだ光が壁面を照らす。その日は掛け物を外し、光そのものを愛でる。
千利休の「待庵(たいあん)」を写した茶室も、この日の天気とよく馴染んでいた。屋根には、かつてこの土地のみかん小屋で使われていたトタンがそのまま活かされている。そこに落ちる雨音から、杉本氏によって「雨聴天(うちょうてん)」の名が与えられた。その由来を知ると、雨の受け取り方もまた、変わってくる。
冬至の朝、相模湾から昇る太陽の光が一直線に差し込み、対面の巨石を照らすように設計された「冬至光遥拝隧道」。雨の日は静寂に包まれたモノクロームの世界が味わえる。
鑑賞を終え、隣接するStone age Cafeへ。周辺の柑橘や植物を介して土地の風土を伝える農業法人「植物と人間」の活動に触れられる場だ。

農薬不使用の黄金柑で作ったシロップを炭酸で割った柑橘スカッシュ(500円)。形が不揃いな柑橘も無駄なく使われ、この土地の循環を感じさせる一杯だ。
ここで、柑橘スカッシュをひと口。弾けるような香りが、湿った空気の中で穏やかに広がる。景色が限られる日だからこそ、目の前のことを丁寧に感じ取れる。その感覚は、次の場所へも自然と引き継がれていく。
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