「The BLUEKEEPERS project」とは……▶︎
すべての写真を見る海に棄てられる運命だった漁網に次の役割を。そんな発想から生まれたリサイクルナイロン素材「ネットプラス」を開発したのは、アメリカのスタートアップ企業「ブレオ」だ。
パタゴニアはその取り組みに早くから着目し、製品への採用を通じて海洋保護はもちろん、漁業コミュニティや被災地支援にもつながる実践を重ねてきた。
廃漁網リサイクルが生む新しい循環
パタゴニアを代表する「バギーズ・ショーツ」。水陸両用で使える軽快なナイロンショーツは、世界中で愛され続ける紛れもない名品だ。
だが、このアイテムの価値は機能性や快適さだけではない。その背景には、世界の海洋プラスチックごみの総体積のうち約10%を占めるとされる廃漁網問題に対する、具体的かつ実践的なアプローチが落とし込まれている。日常的に身に着ける一着のなかに、地球規模の課題への応答が織り込まれている点こそ、この製品の本質的な価値だ。

現行のバギーズ・ショーツは、アメリカのスタートアップ企業・ブレオが開発した「ネットプラス(NetPlus)」が主な素材だ。南米チリやアルゼンチンなどの漁村から役目を終えた漁網を買い取り、手作業で洗浄と裁断を行ったあと溶解。それを再生成した原料でできたナイロンである。
廃漁網のアップサイクルにとどまらず、どこの廃漁網が使われているかを追跡できるトレーサビリティも確立されている点も特徴的だ。廃漁網が海に投棄されるのを未然に防ぐ構造を持つことも、パタゴニアが高く評価している理由のひとつである。そして、原料調達から製品化に至るまでの過程を可視化できることは、消費者にとっても「何を選んでいるのか」を理解する手がかりとなる。
パタゴニアの製品でネットプラスが最初に導入されたのはキャップ。適度な厚みと硬さを持つ素材であるため、キャップの芯として内側に使うのに適していたためだ。
近年、紡績技術がアップデートされ、薄地のナイロンも製造可能に。現在ではレインウェアやダウンジャケットにも採用され、展開アイテムは100点を超える。
そもそも廃漁網は、海洋プラスチックごみのなかでも特に深刻な問題のひとつとされている。海に放置された漁網は「ゴーストネット」と呼ばれ、長期間にわたり海中に残り続けることで、魚や海鳥、海洋哺乳類を絡め取り、生態系に深刻な影響を及ぼす。さらに、時間の経過とともに細かく分解され、マイクロプラスチックとして海中に拡散していくリスクも指摘されているのだ。
こうした状況に対し、単に回収して処理するのではなく「廃棄される前の段階」から介入し、循環のなかに組み込むという発想がネットプラスの出発点にある。この事前回収というアプローチこそが、環境負荷の根本的な低減につながっている。
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