オフホワイトのシャツとベージュのパンツは、ともにリネン素材。端正ななかに肩の力が抜けた佇まいから、静かにラグジュアリーが滲み出ている。長年愛用している私物のロエベのサングラスとスウォッチの腕時計も上品に馴染んでいる。シャツ12万9800円、パンツ10万6700円、靴参考商品/すべてラルフ ローレン パープル レーベル(ラルフ ローレン 0120-3274-20)
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すべての写真を見る 「アメリカの映画祭にも着て行きましたし、普段も着てますよ。スーツだと大人な感じがしちゃうから、気持ち的にちょっと違うんですよね」。
あの力強い骨太な声で語るのは、テーマである「愛着」について。浅野さんが挙げたのは学生時代の制服。予想のはるか上をいくセレクトだが、社会的価値にとらわれない、愛着のかたまりのような浅野さんならではの理由がある。
「昔の思い出を振り返ったときに、どうしても中学時代の制服が着たくなったんです。それで特別に入手しました。学生服ほど、自由で着る人のセンスが滲み出るものはないですし、タフでシワになりにくいので重宝しています。そうそう、ブレザーの内側にはちゃんと“◯年◯組”というパッチが付いているんですよ」。
この日の私服は、小学生のときに母親が着ていたというビバユーのスエードジャケットに、中学時代に買った古着のチェック柄シャツ、中に着たポケTはユニクロで、およそ15年前に購入したという。学生服の話も然り、服やそこに宿る思い出に対する熱量は自然すぎて異常。愛着が溢れ出て、行き場を失っているとでも言おうか。
「これまでいろんな服を着ましたが、あるとき一周回って昔と好みが変わっていないことに気付いたんです。最近は、昔から大好きなジム・モリソン(ドアーズ)とかミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)みたいな格好をしたい気分なので、今頑張って髪を伸ばしています」。
ブラウンスエードのジップジャケットは、武骨さと上品さが同居する一着。スエードと表革を組み合わせたレイヤード風のデザインが奥行きを生む。オン&オフで愛用しているメガネは、白山眼鏡のもの。レザージャケット41万9100円、Tシャツ2万7500円/ともにアワー レガシー(エドストローム オフィス 03-6427-5901)
親の衣類を受け継ぎ、中学時代の服を着続ける。字面だけを見るとエコな文脈だが、浅野さんのそれはロックだ。理屈ではなく、身体に染みついた感覚的な話。艶気と粗さが混在するあのハスキーな声で、どこか達観的なトーンで続ける。
「自分のなかで本当にドンピシャなものしか着たくないし、欲しくないんですよ。あと年齢を重ねて自意識が薄れたことで、自分の外見とかどうでもよくなったことも大きい。どうせみんな俺のことなんか見てないし。それこそジム・モリソンのファッションなんて誰も気にも留めないと思いますが、俺はめっちゃしたい。
先日も妻にジム・モリソンの写真を見せて『格好良くない?』って訊いても『どこが?』って理解されませんでしたけど。でもそれでいいんです。だって俺のなかでは格好いいから、ジム・モリソン」。
最近は趣味でベースを始めたという。新たに購入したものよりも、中学時代に買った愛器がいいと語る。浅野さんらしい、社会的価値とは無縁。個人的な価値観に基づく天衣無縫なラグジュアリー。
「40年近く前に買ったヴィンテージですが、今売っても3万円くらい。安物には変わりませんが、自分のなかではめちゃくちゃ大切なもの。もちろん高価なものはいい音がしますが、俺は安いベースの音が圧倒的に好きなんです」。
愛着という意味では、芝居こそ浅野さんの深愛が滲み出る表現手段。「毎回、役に対しては僕なりのやり方で誰よりも(愛を)込めていると思います」と、力強く語る。
「これは役者にしかわかんないですけど、役との対話があるんです。キャラクターがひとり歩きしだすというか。それはものすごく面白いですし、やらないと役が本当に生きてこない。これまで演じたどのキャラも自分の血肉になっています」。
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