貫禄と色気が宿るダブルブレストだが、リネン素材ゆえ軽やかなムードに。ドレープの効いたパンツが動きに余白を生み、全体をエフォートレスにまとめている。私物で合わせたユニクロのポケTも違和感なく馴染んでいる。ジャケット53万9000円、パンツ26万4000円、ベルト7万1500円/すべてジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070)
2001年に公開された映画『殺し屋1』が、このたび4Kリマスターにより復活上映される。同作で演じた垣原もそんな大事な役柄のひとりだ。
「当時は暴力映画が流行っていて、現場ではいつも誰かを傷つけたり自分が傷ついたり。心身ともに疲れていたこともあって断ろうと思ったのですが、三池(三池崇史監督)さんが『殺し屋1』の前年に手掛けた映画『漂流街 THE HAZARD CITY』を観たら、原作ベースではない、コメディみたいな内容がめちゃくちゃ面白くて。そのときに『殺し屋1』も、コメディだと思えばいいんだって」。
自身は第82回ゴールデングローブ賞にて、ドラマ『SHOGUN 将軍』で日本人初となるテレビドラマ部門 助演男優賞を受賞した。俳優のキャリアとしては超一流だが、映画への思いは少年のようにまっすぐ。大事なのは面白いかどうか。自分の“好き”を更新せずに、ただただ深め続ける浅野さんらしいピュアな愛着。
「映画の根本にあるアイデアは、愛情や情熱の表れだと思うんです。例えば『映画撮りに行かない?』って、軽い感じで朝から晩までその辺をほっつき歩いたとします。
それがめちゃくちゃ楽しかったけど、結果的に10秒くらいしか(カメラを)回していなかったとしても、それでいいと思うんですよ。この10秒には、撮影者にとって面白いものだけが詰まっているわけだから。極端ですが今後はそういう純粋な映画作りがあってもいいと思っています」。
インタビュー終了後、雑談をしていると浅野さんが着用していた赤のチェック柄シャツに、小さな黄色の缶バッチが付いていることに気付いた。それについて触れると、浅野さんはガハハと豪快に破顔しながら、「中学生の頃『オクトパスアーミー』で買って以来、お気に入りでずっと付けているんです。あれ、知ってます?『オクトパスアーミー』」。
何十年も大事にしていたひとつの缶バッチから、たちどころに当時の思い出話に花が咲く。もしかしたら深い愛着には、個人の温かな記憶にとどまらず、人と人をつなぐ静かな力を持っているのかもしれない。
少なくとも浅野さんの愛着には、それを特別なものにせず、当たり前のように持ち続ける自然さがあった。
浅野忠信●1973年生まれ、神奈川県出身。88年に俳優デビューし、映画『幻の光』『座頭市』などで国内外の評価を得る。その後、映画やドラマ、舞台などで活躍するほか、音楽やアートでも才能を発揮。唯一無二の存在感で世界的に支持を集める。
OCEANS6月「What’s Luxury?」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!