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すべての写真を見る うちでは保護犬を2匹飼っています。OCEANS6月号の特集のテーマは、関係性だとお聞きしましたが、犬はまさに社会的な動物であり、一期一会の関係性を生み出す存在ですね。
「私たちで犬を家族に迎え入れた」と考える方が多いですが、それは実は真逆なんじゃないかと僕は思っています。犬たちが、その場を、家族に変えるんです。僕ら家族もどこか、はぐれ犬的な気質でしたが、犬たちはそんな僕らを、ひとつに結わえてくれる。
また犬たちは、人間社会と自然の間に立ち、調停してくれる存在でもあります。彼らと散歩していると、子供よりもさらに低い地べたの目線で世界を見ることができ、日頃つい忘れがちなことを思い出せて、特別な時間が増えていきます。

この子(妹犬)はもうすぐ15歳になる老犬で、すっかり穏やかになり、失明してあまり走れなくなってからも子犬の良い先生になってくれていますが、元々は保護された野犬で、保健所で殺処分寸前になっていましたので人間への警戒心が強く、手を噛まれて何針か縫ったこともありました。出会って3年目で初めてお手をしてくれた日は、涙が止まらなかったですね。
海に飛び込んで生きた魚を捕まえて来るような俊敏な子で、先代犬の兄犬が亡くなってしまった時は、竹やぶから側溝まで、朝から晩までの捜索を始めて、それが何カ月も続き、僕らもボロボロになりましたが、犬たちの愛情の深さに学ばされ、家族の絆が強まったように思います。
考えてみれば、都内を出て、海や山が近く自然の多い環境に引っ越したり、40過ぎて運転免許を取った理由も半分以上は犬たちのためですし、先代犬のガン闘病を乗り越えるためにパートナーと籍を入れたりもしました。犬にずいぶん人生を変えられていますね。
最近、保護犬の預かりボランティアを始めました。ひどく虐待された子もいますが、とても可愛いです。犬たちとの関係性から学びながら、いろいろな音楽に挑戦していけたらと思っています。
七尾旅人●1979年、高知県生まれ。98年のデビュー以来、唯一無二の音楽性によって多くのファンを魅了し、独自性の高いライブパフォーマンスや即興演奏など自身にしかできない音楽表現を追求し続ける。近年では犬をテーマにした作品やライブなどの活動に精力的な一方で、現実社会を真摯な眼差しで描写するなど、表現者としてさまざまな分野から高い評価を得る。
OCEANS6月「What’s Luxury?」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!