名店① 一般的な坦々麺とは違う、名店中の名店 「中華 四川」

まず、初めにご紹介するのは「中華 四川」。創業は1979年。半世紀近くの長きにわたり、独創的な1杯を着実に紡ぎ続ける、異論を差し挟む余地なき名店中の名店だ。
同店の場所は、上大井駅(JR御殿場線)から約1.1km。神奈川県道72号線沿いの、足柄上郡大井町との境界から小田原市側に少し入ったところに位置する。
こちら、「中華 四川」が提供する「特製タンタン麺」は、「担々麺」と銘打ってはいるものの、いわゆる一般的な担々麺とはまるで別物。最大の特徴は、強烈なトロミが独特の食感を醸し出す餡状のスープと、スープが優しく包み込む豚挽肉・ザーサイ・にんにく・ねぎ等の具だ。

その味わいは、素朴でありながらもオリジナリティに満ち溢れ、ひとたび口にすると記憶に焼き付いて離れない強烈な惹きがある。同店の1杯は、地元から長年にわたって愛され続ける「ソウルフード」としての地位を確立しているが、それも宜なるかなといったところだ。
この「特製タンタン麺」。辛さを「A甘口」「B一般向き」「C辛口」「スペシャルC特別辛口」など、複数のグレードから指定することが可能であり、久々の訪問だった私は、基本中の基本である「B」を選択。

すすり上げれば、豚挽肉が醸す深いコクが、味蕾を通じて全身へと浸透。その後、間髪を入れずに、ザーサイの硬質な歯触り、豆板醤の小気味良い辛みが餡のうま味に奥行きと深みを与え、レンゲを持つ手に自ずと力がこもる。
このスープに合わせるのは、しっかりと縮れが入った自家製麺。この縮れが餡状のスープを着実に拾い上げ、麺とスープの一体感の醸成にひと役買っている。麺に餡状のスープが隙間なく絡み付き、麺をすすれば大量のスープが引っ張り上げられ、あたかも、麺とスープを同時にすすっているかの如き感覚が味わえる。
同店が歩んできた創業から約半世紀の歴史は、この1杯が地域に根差した独自の食文化として確かな存在感を放ち続けた生き証人。ぜひ足を運び、唯一無二の味わいに舌鼓を打ってもらいたい。
5/7